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"red"

掲載日:2026/08/31

窓の外で叫び声

慣れてしまったからか、もうカーテンを開ける事はしなかった


布団に籠もって十数える

一向に、眠れそうに無かった




此の悲鳴は、僕の幻聴なので在るらしい

精神病と云うものになった事が無いまま此の歳になったので、不思議な感覚だ


確実に僕の脳髄は、音を認識して居る

耳が其れを知覚して居るのか迄は、理屈としては解らない

しかし声は、時計の針の様な正確さで数時間置きに、僕の頭蓋の内側で確固として反響するのだった


近頃は其れを利用して、時間を測る事さえ出来る様になった

例えば、今は夜中の2:30だ


悲鳴は30分程、継続する

声には性別、年齢的な規則性は無い

必ず生命の危機が迫った様な、腹の底から絞り出すような声だ


其の際、瞼を降ろすと、瞼の内側は赤黒く染まって居る

少しだけ眼を閉じ───直ぐに嫌になり、瞳を凝らす

悪霊が現れるでも無く、変化が起こるでも無い


アパートメントの外

乗用車が、静かに夜を滑って行く音がする

虫の音はまだしない

そうした静寂を、悲鳴は塗り潰し続ける


狂いそうだ

きっと穏やかな夜なのだろうが、僕だけがそうでは無かった



寝る事を諦め、テーブルの上の煙草とライターを持ってベランダに出る

聞こえてくる声の位置を特定しようと耳を澄ますが、場所は解らない


当然だ

声は、僕の心の内から響くのだろうから



結局

不安に駆られて、煙草は吸え無かった


声の主が、何処からか襲い来るのではないかと考えると、何もする事が出来ない 

部屋にも戻れず、ベランダで震えて居ると朝になった


誰も居ないベッドで、目覚まし時計が鳴っている

顔を洗う必要が有った


正気が混濁し、『しなければいけない事』が頭の中で飛び散って乱反射する



立とうとしてよろめき、床に両手を突く

フローリングに涙がはたはたと落下し、木材を湿らせる


顔を上げようとすると、また、死に際の様な絶叫が耳をつんざいた

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