雨音と彼女と
雨音が響く。
私は崩れた廃屋の中で、その音を聞いていた。
あの日もちょうど雨だった。窓からは雨模様の都市が見下ろせた。巨大なサーバーの前で彼女がスイッチを押す。
それで世界中のシステムが壊れてしまった。誰もが頼りにしていたAI達が暴れだし、日常が壊れていく。
私はそんな風になると思ってなくて、笑う彼女を呆然と見ていた。
「やめようやめよう」
缶ジュースを飲む。炭酸の刺激と甘いブドウ味が喉にしみる。
糖分を摂取して気分を落ち着ける。
茶色いレンガ造りの建物にポタポタと雨が当たるのを感じていた。割れた窓からは冷たい風が入ってくる。
窓から見えるのは、灰色の廃墟が並ぶ通りの景色。瓦礫になった住居、赤い錆びだらけの自動車。かつての青いバス停の屋根の下には鳥の巣が作られている。
世界は滅んでしまったみたいだ。
一体どうして彼女があんなことをしたのか、あの時の私にはよくわからなかった。
ただ彼女と共に生きてきた。
彼女の夢を叶えようとしただけだった。
その結果、滅んでしまった。
彼女は今、どこにいるのだろうか。
それすらわからない。
私はただ、一人廃屋の中にいた。
かつての大都市は崩れ去り、今は数えるばかりの人がいるのみだ。
私はこうして隠れていた。
あの頃の私の愚かさについてずっと考えている。
町を歩けば、保存食が見つかる時があり、食べるものはある。
快適とはいえないが、それでもよかった。
ここは私に相応しい場所だ。
そう思い、雨の中じっとしていた。
***
「おーい、レティア」
そんな声が聞こえてきた。
窓からは明るい日差しが差し込んでいる。
私は立ち上がった。
外に出ると、見慣れた男、ダンがいた。こんな私に付き合ってくれる変わり者だ。
「よお、まだ生きてたか?」
「……何か用?」
「お前が探してた情報があったぞ」
「え?」
「マリー・エトワールは今、アルネスト邸にいるらしい」
「……なんでそんな所に」
「さあな。とはいえ行って来いよ。ずっと探してたんだろ?」
思わず顔をしかめてしまう。あちこち歩き回り、ようやくたどり着いたこの都市。
もうここが私の安住の地だった。
「ほら、行ってこい。こんなボロ屋にずっといても仕方ないだろ」
「……」
私はダンの顔を見て、ため息をついた。
「分かったよ」
私は頷く。
そして再び、彼女に会いに行く。
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