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告ってフラれたあの子が「主さま」 ~TS女軍師になったオレは可愛がられてこき使われながら、彼に天下を取らせます~  作者: 香坂くら
サニー行政官

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014話 硝子


◇ヒューゴ・ラウレル ――兵藤剛(ひょうどう・ごう)の独白

 ※後に親友の礎冴(いしずえ・さえ)(=サニー)に語った内容も含む。


 ――僕はいつでも死ぬつもりだったんだ。


 あの日、僕が投げた枕のせいで冴と野畔希を死なせてしまった。

 罪悪感を抱いて異世界に跳んだ僕は、いっそ派手に散りたいと半ばヤケクソで国王軍の要塞を襲った。

 なのにさ、皮肉だよね。

 死に場所を求めて戦えば戦うほど、なけなしのゲーム知識が的中してまんまと生き延びちゃうんだから。

 いつしか僕は『ブーケの賢者』とか『不世出の隠者』とか呼ばれて、諸々コンサル業で生計を立てられるようになっちゃった。


 それと、この世界に来てから『内視鏡(ディヴゲ)』なんていう、気味の悪いスキルに目覚めてしまったのも運の尽きだった。これってさ、ターゲットが有する潜在魔力の程度から健康状態、果ては魂の形なんかを「透視」できてしまう特殊能力でさ。これのせいで、勝てる相手を判別できるから、ますます負け知らずの評判がついてしまった。


 毎日思ってたよ。異世界で成功した僕。もし二人に会えたら、どんな顔をしたらいい? どう謝ったらいい? ……いや、そもそも謝って許されるものじゃないか。それに……この力で、もし二人の「死」や「不幸」を透視してしまったら……そんなの考えたくもないっ!


◇◇


「おいっ、ヒューゴだかヒョーゴだか神戸だか知らねぇが! 隠れてねーで出てこいってんだよ!」


 ブーケの塔の入口で、オレ――サニーことシルヴィア・フォレストは、都合三度目の怒声を張り上げていた。隣ではシックスが大きな欠伸をしながら、ナイフで爪を整えている。器用だよなぁ。


「ねーサニィ、もう強行突破しちゃいなよ。それともあーしが裏から忍び込んで、その隠者さんのヒゲでも毟ってきてやろうか?」

「シックス姉さん。一応、姉さんは『三顧の礼』のつもりで訪問してますから、出来たらもう少し穏便に……あ、あなたさまには無理でしたね。失礼しました」


 シリルが冷淡にノリツッコミする。


「サンコのレイ? オンビン? そんな名前の魚はいねーわ。もっとベンキョーしろ! この貧乳」

「ひ、ひ、ひんにゅー!! 言ってはいけない事をぉぉぉぉ」

「おいおい、ケンカすんなって! おいこら、ヒョーゴ! ――じゃなかったヒューゴ! お前のせいで大事な仲間がモメ始めたぞ、責任取れ責任!」


 そうなんだ。オレたちは都合3回、この塔を訪ねている。

 正直、確信はあった。2回目の時、塔の奥から不気味な視線――()()兵藤剛(ひょうどう・ごう)特有のネットリとした視線を感じたんだよな。もしかしたらだがあいつ、オレの正体に気づいたのに、何故かビビって引きこもりやがったか?


「サイラス殿。門をぶっ壊せますか?」

「三顧の礼はもう止めですか? 私はあなたの騎士になった故、命には従いますが……ちょうど、この門の建つけが悪いのが気になっていたところですし」


 サイラス殿、法衣を翻し無表情で門に剣を叩きつけた。

 ドーン! と、書き文字に起こしたいくらいの気持ちのいい音を立てて、王家の紋章入り鉄門がブチ開く。


「よし、カチコミだ!  行くぞみんな!」

「――まったくの無警戒、無警固だな。マジここ、賢者の塔なん?」

「何かの作戦……ですかね?」


◆◆


 それぞれの気掛かりをよそに、塔の最上階まで到達すると、そこには異様な光景があった。足の踏み場もないほどの古文書や魔導書の山。それらの中心で一人の男が――。


「…………は?」


 ――と、ヘンな声を漏らした。

 その男は本の山に囲まれ、なぜかパンツ一枚だけで、お腹の上に『大陸魔力詳説』という分厚い本を載せたまま、豪快に日光浴をしていたのだ。


「……あ、暑いー。誰……? 母さん? 今日は勉強で忙しいから仕事手伝わないって父さんに言っといてー? 宅配ピザなら僕が頼んだやつだからそこに置いといて……。フワッ?!」


 ボケボケの寝言を発して、跳び起きたその顔。ひょろりとした体躯に、理屈っぽそうな眉間の皺。インテリ丸出しのメガネ。


「……やっぱり剛、お前じゃねーか……お前こんなところで何してんだよ」

「えっ、剛ってその呼び名……さ、冴!? い、いや待て、キミ、女の子じゃないか、ビビった……ちょっと話しかけないでくれるか? 今の僕は日光のビタミンDを生成中で――って、うわあああああ! そーいやお前ら、誰なんだ、ドロボーかッ!」

「やったら騒がしー。もー死んでもらお? ね、サニイ?」

「……だ、ダメだ、殺すな」


 剛と思われる人物(=ヒューゴ)は、自分がほぼ全裸であることを思い出したのか、慌てて本の山にダイブして身を隠した。


「見るなっ! 僕は伝説の隠者、ブーケの塔の主、ヒューゴ・ラウレルだ。いま僕はセルフブランディング中なんだ! 威厳が死ぬ! 物理的に死ぬ! 社会的に死ぬっ」


 確信した。コイツ、兵藤剛(ひょうどう・ごう)だ。

 オレは嬉しさと呆気を半分ずつ抱えて、本の山から剛を引きずり出した。パンツが引っ掛かってついにパーフェクト全裸になったがお構いなしだ。


 剛はそんな事には一切気にする様子もなく(逆に気にしてくれ!) 真面目な顔で、その場に両膝をついて額を擦りつけた。


「……ごめん。ごめんよ冴。僕のせいで、お前までそんな……女の子の体に……」

「……お前こそ……生きてたんだな、剛」


 オレは鼻の奥がツンとするのを感じながら、ヤツの男っぽい肩を抱き寄せた。

 剛は「ひぎゃっ」と変な声を漏らして硬直したが、すぐに子供のように号泣し始めた。


「……ううう……ごめんよぉ、冴……。あ、ふぁぁ……女の子の身体、温かくって、フワフワでやわらか~い……冴そっくりのメイド・アンドロイドつくりた~い」

「うわキモッ」


 オレは怖気が走って剛の頭を突きとばしてしまった。感動が帳消しだ、この理系オタク!


◆◆


 ここは王都にある、ノヴァン・ド・オルドーの館。謁見の間にノヴァンさまにつき従う重臣たちが居並んでいた。

 知略で台頭したオレを煙たがる保守派の伯爵。「主の寵愛を奪う小娘め」とライバル視するヴォルカンの部下たち。一方で、オレのビール事業で私腹を肥やし、好意的な視線を送る文官たち。


 そんな魑魅魍魎の中を、オレは剛を引き連れて歩いた。玉座に座るノヴァンの前に出ると、剛は作法に倣って礼をこなし……すぐさま、土下座を決めた。って土下座?!


「……野畔希(のあぜ・のぞみ)さん。……いや、ノヴァン・ド・オルドー辺境伯。兵藤剛、推参しました。どうか僕を処刑してください」


 周囲がざわつく。「誰だこの男は」「頭がおかしいのか」と遠慮の無いヤジが飛ぶ。

 だが、ノヴァンさまは椅子から飛び跳ねるなり、剛へ歩み寄り、その肩を掴んで引き起こした。


「……兵藤君。……よく、無事で生きていてくれた」


 そして、並み居る重臣たちが目を見開く中、剛を強く、熱く抱きしめた。


「閣下が男を抱いているぞ!?」

「あっちもイケる口なのか!?」


 などと、背後で重臣たちが小声で騒ぎ出すが、今のオレらの耳には入らなかった。ひたすらオレは涙した。


◆◆


 その夜。館のバルコニーで、オレと剛は二人きりで夜風に当たっていた。

 剛は、じっとオレの胸あたりを観察している。


「見んなよ。ヘンタイだな、相変わらず。友だちやめよーかな」

「……なぁ冴。お前、その能力、これまで何回使った?」

「んー? 能力って?」

「時戻りだよ、何回使ったんだ?」


 魔法少女マクラの能力、時戻りか!


「え? まー数回? くらいかな。いちいち憶えてねーよ。使わなきゃどーしようもない時もあったしなぁ」


 適当に答えると、剛が今まで聞いたこともないような鋭い声を出した。


「いや……、もっと使ったろ! 君の魂――シルヴィア・フォレストという少女の心身がバキバキと音を立てて、悲鳴を上げてるんだよ!」

「バキバキと……って?」

「魂は言わばガラス細工なんだ。無理に時間を巻き戻せば圧力がかかって、ひび割れする。冴、よく聞け」


 剛がオレの肩を掴む。その手は、小刻みに震えていた。


「次に時戻りすれば、もしかしたら粉々に砕けるかもしれない。……そうなれば、お前の身体もしくは魂は修復不能になって、この世界から跡形もなく『消える』ぞ。野畔のためにもムチャな真似はするな!」

「………………消える、オレが?」


 急に言われても「そうか分かった」なんてならない。だって、まったく現実味がない。「ガンです、余命3ヶ月です」と、風邪薬をもらったついでに告知されたようなもんだ。


 だけどオレの指。ブルブル震えてる。剛の恐ろしい言葉に恐怖を覚えてる。


「頼む、剛。野畔には……ノヴァンさまには言わないでくれ。あいつ案外心配性なんだよな」


 オレは「ははは」と笑ってポンと親友の肩を叩いた。

 剛は空気を読まず、つくり笑いに付き合ってくれなかった。


次回予告

ナレーション:サニー&ヒューゴ&シックス


サニー:

「みんな、サニーだよっ! ついに親友の剛が仲間に加わって、三人の絆はバッチリ! ……のはずが、こいつ、オレが使ったマクラの匂いを嗅いで昇天してやがる!?  変態度神域にアップしてるだろ!」


ヒューゴ(兵藤剛):

「これは魂のアンカーを確認する、極めて科学的で神聖な行為、いわば神事とも言える清らかで厳かな儀式だよ。それよりサニー、君の身体……やっぱり限界が近いな。頼むからもう無理はしないでくれ。これからは僕が君の盾に――」


シックス:

「おうおうカチ割りメガネ! サニィちゅわんの盾になるのは、このあーしの役目だかんな! 変態メガネの出番なんて無いってーの、バカ!」


ヒューゴ(剛):

「変態メガネだと、このメスゴリラ! 君は黙々と、まだ青いバナナでも鼻鳴らしながら食べていたまえ!」


サニー:

「あーもう、お前ら仲良くしろよ! 北の賊軍を叩くために、主さまの親征軍が出立するんだ。ヴォルカンの狙いも気になるし、オレの身体もなんだか変だけど……負けてられない!

次回、アオハル転生! 第15話――」


三人同時:

『変態メガネの自称賢者と健康メスゴリラ!? 渦巻く陰謀、北の空に燃える戦火!』


サニー:

「主さまへの愛、フルスロットルだよっ!★」


ヒューゴ:

「意味不明をたくさん詰め込んだねぇ……」

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