表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の傳人―光と闇の羅針盤(青木家サーガ第3作)  作者: 光闇居士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/92

4. 過去からの系譜

挿絵(By みてみん)

「…この傷、どうしたのですか?」

彼女は、その傷跡を、慈しむように、指で、そっと、なぞった。


【しおの】

由紀との、関係が、深まるにつれて、義成は、彼女の中に、ますます、強く、李殷の、面影を、見るようになっていた。

もちろん、由紀は、殷ではない。

殷が、太陽のような、華やかさと、カリスマ性を持っていたとすれば、由紀は、月のように、静かで、穏やかな、光を放つ、女性だった。

だが、二人の、魂の、根底に流れるものは、驚くほど、似ていた。

その、曇りのない、誠実さ。

相手の、痛みを、自分の痛みとして、感じることのできる、共感能力。

そして、何よりも、相手を、無条件に、信じ、受け入れる、深い、愛情。

義成は、時々、恐ろしくなることがあった。

これは、神が、自分に、与えてくれた、二度目の、チャンスなのだろうか、と。

殷を、守れなかった、自分への、償いの、機会を、与えてくれたのだろうか、と。

ある夜。ベッドの中で、由紀は、ふと、義成の、背中にある、いくつかの、古い傷跡に、気づいた。

「…この傷、どうしたのですか?」

彼女は、その傷跡を、慈しむように、指で、そっと、なぞった。

それは、義成が、高校生の時、挫折と、絶望の中で、自らを、傷つけた、若き日の、痛みの、痕跡だった。

「…若い頃の、馬鹿げた、過ちだよ」

義成は、そう言って、誤魔化そうとした。

だが、由紀は、何も言わずに、その、一つ一つの、傷跡に、まるで、その痛みを、吸い取るかのように、優しく、口づけを、落としていった。

その、温かい、感触に、義成の、心の奥底の、固く、閉ざされていた扉が、軋みを立てて、開いていくのが、わかった。

彼は、この女性になら、話せるかもしれない。

自分の、本当の、過去を。

自分が、何者で、どこから、来たのかを。

中国人・張義成として、そして青木義成となって、生きた、光と、闇の日々を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ