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龍の傳人―光と闇の羅針盤(青木家サーガ第3作)  作者: 光闇居士


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第二部:李霃帘の苦悩 ― 共産党の暗黒より 3. 女帝の、誤算

3. 女帝の、誤算


同時刻。河北省、石家荘市。

経済開発区管理委員会の、広大な、書記室。

李霃帘は、一人、執務机の上にある、一枚の、極秘資料を、睨みつけていた。その、完璧に化粧が施された、美しい顔は、苦悩と、屈辱に、歪んでいた。

資料は、中央規律検査委員会から、彼女の、直属の上司である、王書記を通じて、非公式に、もたらされたものだった。

そこには、信じられない、事実が、記されていた。

『対象:青木義成(日本国籍)

容疑:海外勢力との結託、及び、国家機密漏洩幇助の疑い。並びに、上海市公安局の、党内規律問題への、不当介入。

現在、当委員会の、非公式な、管理下で、事情聴取中』

青木義成が、捕まっている。

しかも、あの、監察チームを、一度は、完璧に、出し抜いたはずの、中央規律検査委員会に。

「…あり得ない…」

彼女は、呟いた。

何かの、間違いだ。あの、狡猾で、大胆不敵な、龍のような男が、これほど、あっさりと、捕まるはずがない。

だが、資料は、冷徹な、事実を、突きつけてくる。

きっかけは、馬東の、失脚だった。

馬東の、あまりにも、派手な、金の動きと、女性関係は、もともと、規律委員会に、マークされていた。そして、彼の失脚を、決定的にしたのが、彼の部下であった、墨鳴風からの、内部告発だった。

告発の、証拠として、提出されたのは、馬東の、海外の、隠し口座の記録と、乱行パーティの、映像。

そして、その、すべての情報を、墨鳴風に、提供したのが、青木義成、その人だったのだ。

規律委員会は、色めき立った。

なぜ、一介の、日本人ビジネスマンが、これほど、詳細な、内部情報を、持っていたのか。

彼の、背後には、何があるのか。

彼らは、当初、これは、上海の、権力闘争の、一環だと、見ていた。

だが、調査を、進めるうちに、彼らは、青木義成という男の、異常なまでの、資金力と、その、金の、不透明な、流れに、気づいた。

そして、その、金の、一部が、自分たちが、追い続けていた、ある、巨大な、汚職事件に、繋がっていることを、突き止めたのだ。

それは、李霃帘と、その上司・王書記が、主導する、レアアースの、密輸事件だった。

すべては、繋がっていたのだ。

李霃帘は、愕然とした。

彼女は、青木義成という男を、自分の、掌の上で、転がしている、つもりだった。彼の、その、類稀なる、才能を、利用して、自らの、野望を、達成するための、最高の「駒」だと、思っていた。

だが、違った。

本当は、自分の方が、彼の、巨大な、チェス盤の上の、一つの「駒」に、すぎなかったのかもしれない。

そして、彼女を、さらに、苦悩させたのは、彼女が、義成の、その、危険な、魅力に、本気で、惹かれ始めていた、という、事実だった。

彼の、知性。彼の、胆力。そして、ベッドの中で見せた、あの、孤独な、少年のような、素顔。

彼女は、彼との関係を、単なる、ビジネス上の、利害関係として、割り切ることが、できなくなっていた。

彼が、捕まった。

それは、彼女の、ビジネス上の、計画が、頓挫した、というだけではない。

彼女の、心に、ぽっかりと、大きな穴が、空いてしまったことを、意味していた。

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