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龍の傳人―光と闇の羅針盤(青木家サーガ第3作)  作者: 光闇居士


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2. 痕跡を追って

祖苑は、まず、義成と関係のあった、全ての「駒」に、接触した。

彼女は、深圳に飛び、長安ホテルのスイートルームに、彼の三人の「紅顔知己」を、呼び出した。

炎の女神・楊楊は、祖苑の、険しい表情を見て、いつもの、不敵な笑みを、消した。

「林さん…あんたが、そんな顔をするなんて、珍しいわね。義成さんに、何かあったの?」

「彼と、最後に会ったのは、いつ?」

「一ヶ月以上、前よ。上海での、大きな仕事があるって言って、それっきり…」

水の精霊・無宣は、青ざめた顔で、ただ、俯いていた。彼女は、義成の、最も、心の深い部分での、孤独を、感じ取っていた。彼の不在が、彼女の、儚げな魂を、蝕んでいるようだった。

風の妖精・小黎は、目に涙を浮かべていた。

「義成様…どこに行っちゃったの…?私、何か、悪いことしちゃったのかな…?」

三者三様。だが、彼女たちもまた、義成の、突然の失踪に、心を痛め、途方に暮れていた。彼女たちから、得られる情報は、何もなかった。

次に、祖苑は、上海へ飛んだ。

彼女は、ウォルドーフ・アストリアの、専属マッサージ師、王麗紅に、客を装って、接触した。

麗紅は、祖苑の、鋭い質問に、プロフェッショナルな、穏やかな笑みを崩さなかった。

「青木様でございますか?ええ、いつも、大変お世話になっておりました。ですが、一ヶ月ほど前から、ぱったりと、お見えにならなくなって…。私共も、心配しておりましたのよ」

彼女の言葉に、嘘はなかった。だが、祖苑は、彼女の瞳の奥に、深い憂いと、そして、何かを、固く守ろうとする、意志の光を、見逃さなかった。この女は、義成にとって、ただのマッサージ師ではない。もっと、深い関係にある。だが、彼女もまた、何も知らないようだった。

祖苑は、サウナ「ゴールデン・ドラゴン・パレス」の、女王・華々にも、会った。

華々は、祖苑の姿を見るなり、警戒心を、剥き出しにした。

「あんた、何の用?義成なら、知らないわよ。あの男は、風みたいな男。来たと思ったら、いつの間にか、いなくなってる。そんなこと、いつものことでしょ?」

強がってはいるが、その声には、苛立ちが滲んでいる。彼女もまた、自分を、完全にねじ伏せた、唯一の男の、突然の不在に、プライドを傷つけられ、戸惑っているのだ。

手詰まりだった。

彼が、その、堕落の仮面の下で、巧みに築き上げた、女性たちのネットワーク。その、誰一人として、彼の、行方を知らない。

これは、彼自身の意志による、計画的な「失踪」なのか?

それとも、何らかの、不測の事態に、巻き込まれたのか?

祖苑の脳裏に、最悪のシナリオが、浮かび始めた。

あの、無謀な、救出作戦。どこかで、綻びがあったのではないか。国家という、巨大な、見えない敵に、彼の存在が、気づかれてしまったのではないか。

いや、違う。

祖苑は、自らの、情報網の、完璧さに、絶対の自信を持っていた。作戦は、完璧だったはずだ。

ならば、一体、何が?

彼女は、捜査の網を、さらに、広げた。

上海の、裏社会。彼女が、金と、情報で、長年かけて築き上げた、アンダーグラウンドの、ネットワーク。

彼女は、ゴロツキ、情報屋、ハッカー、あらゆる人間に、大金をばら撒き、青木義成という、日本人の、痕跡を、探させた。

そして、数日後。

一人の、情報屋から、一つの、断片的な情報が、もたらされた。

「…一ヶ月ほど前、上海市公安局の、馬東副局長が、突然、病気療養を理由に、雲隠れした。実質的な、失脚だ。そして、その後釜に、彼の部下だった、墨鳴風が、異例の、スピード出世で、就任した…」

馬東。墨鳴風。

義成が、手駒として、操っていた、二人の、腐敗官僚。

この、権力の、不自然な、移動。

その中心に、義成が、いたことは、間違いない。

彼は、この、権力闘争の、渦に、巻き込まれたのだ。

祖苑の背筋を、冷たいものが、走った。

民間の、裏社会の、トラブルならば、彼女の力で、どうとでも、解決できる。

だが、相手が、中国共産党の、内部抗争となれば、話は、まったく、別だ。

それは、彼女でさえ、決して、足を踏み入れてはならない、底なしの、沼だった。

「…馬鹿な、弟分…」

祖苑は、唇を、噛み締めた。

「あなたは、一体、どんな、危険な、火遊びを、していたのよ…」

彼女の心は、絶望と、そして、彼への、どうしようもない、怒りと、愛情で、張り裂けそうだった。

彼女は、もう、待ってはいられないと、悟った。

自らも、この、危険な沼に、足を踏み入れる覚悟を、決めたのだ。

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