3. 感謝という名の、愛撫
その夜の、二人の交わりは、これまでとは、まったく違っていた。
そこには、師から弟子への、密教の伝授のような、緊張感はなかった。
あるのは、過酷な戦場を、共に駆け抜けてきた、二人の戦友が、互いの、健闘を称え、その傷を、舐め合うような、深く、そして、穏やかな、一体感だけだった。
義成は、彼女を、寝室へと導くと、まず、その前に、静かに、跪いた。
そして、彼女の、その、美しい足の甲に、まるで、聖遺物に触れるかのように、そっと、口づけを落とした。
「…!」
祖苑の体が、びくり、と震えた。
「義成…あなた、何を…」
「あなたは、僕の、軍師であり、恩人だ。そして、僕の、心の、羅針盤でもある。あなたへの、敬意と、感謝を、僕の、すべてで、表したい」
彼は、そう言うと、彼女の、その、完璧な脚を、ゆっくりと、愛撫し始めた。足の指の一本一本から、足首、ふくらはぎ、そして、膝の裏へ。彼の指は、まるで、祈りを捧げるかのように、丁寧で、優しかった。
祖苑は、生まれて初めて、男から、このような、深い敬意のこもった、愛撫を受けた。彼女の、心の奥底に、何十年も、固く閉ざされていた、女としての、柔らかな部分が、ゆっくりと、解きほぐされていくのを感じた。
彼は、彼女を、ベッドに、優しく横たえると、その、シルクのブラウスのボタンを、一つ、また一つと、丁寧に、外していった。
現れた、彼女の、引き締まった、しかし、柔らかな、胸の丘。
彼は、そこに、顔を埋めるのではなく、ただ、その頂に、そっと、唇を寄せ、感謝の言葉を、囁いた。
「…ありがとう、祖苑」
その、温かい吐息に、祖苑の体は、甘く、打ち震えた。彼女の目から、一筋の、熱い涙が、こぼれ落ちた。それは、悲しみの涙ではない。孤独だった魂が、ようやく、安らげる場所を見つけた、喜びの涙だった。
義成は、彼女を、焦らすように、そして、慈しむように、その全身を、唇と、指で、探っていった。
彼は、彼女の、体の、すべてを、知っていた。どこを、どうすれば、彼女が、最高の快感を得られるのか。
だが、その夜の彼は、それを、あえて、しなかった。
彼は、快感を与えることよりも、彼女の、心の、一番、深い場所にある、孤独と、悲しみを、癒すことに、全力を、注いだ。
やがて、祖苑のほうが、もう、我慢できなくなった。
「…お願い、義成…。もう、いいわ…。私を、あなたのものにして…」
彼女は、喘ぎながら、自ら、彼の、硬く、熱くなった分身を、求め、その手を、導いた。
義成は、静かに、彼女の中に、自分を、滑り込ませた。
それは、嵐のような、激しい結合ではなかった。
まるで、長い旅を終えた船が、母なる港に、静かに、帰港するかのような、深く、満ち足りた、一体感だった。
二人は、互いの、心臓の鼓動を、聞きながら、ゆっくりと、そして、どこまでも、深く、溶け合っていった。
その夜、二人は、言葉を、交わさなかった。
ただ、互いの、温もりと、魂の、響き合いだけが、そこには、あった。
それは、愛という、言葉では、あまりにも、陳腐にすぎる、戦友の、究極の、絆の形だった。




