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龍の傳人―光と闇の羅針盤(青木家サーガ第3作)  作者: 光闇居士


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2. 共犯者の祝杯

挿絵(By みてみん)

「…礼を、言わせてほしい、祖苑」

義成は、静かに、切り出した。


【しおの】

祖苑は、夜のフェリーで、静かに上海の土を踏んだ。彼女は、いつものように、クールな、黒いシルクのブラウスに、タイトなパンツという、無駄のない装いをしていた。

スイートルームのリビングで、義成は、彼女のために、最高級の、アイラ・シングルモルト「ラガヴーリン」を用意して待っていた。

「…来たか」

「ええ。最後の、作戦会議のためにね」

二人の間には、もはや、余計な挨拶は必要なかった。彼らは、言葉以上に、多くのものを共有する、完璧な共犯者となっていた。

「顔つきが、変わったわね、義成」

祖苑は、グラスを受け取りながら、彼の顔を、じっと見つめた。「以前の、危うい少年のような光が消えて、本物の、怪物の瞳になった」

「あなたに、そう言われるのは、最高の褒め言葉だ」

義成は、皮肉っぽく、笑った。

二人は、窓の外に広がる、宝石のような夜景を見ながら、静かに、グラスを傾けた。

作戦の、最終確認は、すでに、暗号化された通信で、何度も行われている。今夜は、そのための会合ではない。

「…礼を、言わせてほしい、祖苑」

義成は、静かに、切り出した。「あなたがいなければ、僕は、ここまで来れなかった。僕の、無謀な賭けに、付き合ってくれたことに、心から、感謝している」

それは、義成が、初めて彼女に見せた、素直な、心からの感謝の言葉だった。

祖苑は、少し驚いたように、目を見開いた。そして、やがて、その唇に、柔らかく、そして、どこか寂しげな笑みを、浮かべた。

「…馬鹿ね。礼を言うのは、私のほうよ。あなたと出会って、私は、初めて、この、退屈な世界に、スリルを覚えることができた。忘れていたわ。私にも、まだ、こんな、熱い血が流れていたなんて」

彼女の瞳が、潤んでいた。

「もし、この作戦が、失敗すれば…」

「失敗はしない」

義成は、彼女の言葉を、力強く、遮った。「僕が、させない」

その、絶対的な自信に満ちた言葉に、祖苑は、吸い込まれるように、彼を見つめた。

「…今夜は、難しい話は、やめにしましょう」

義成は、そう言うと、彼女のグラスに、再び、琥珀色の液体を注いだ。「今夜は、ただ、戦士の、束の間の休息だ。そして、僕から、あなたへの、感謝の、証を、受け取ってほしい」

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