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8. 新たな龍の誕生
翌朝。
スイートルームのバルコニーで、義成は、一人、朝日を浴びていた。上海の街が、ゆっくりと、眠りから覚めていく。
昨夜の、退廃の残り香が、まだ、部屋の中に、満ちている。
彼は、怪物になることを、選んだ。そして、怪物を、手に入れた。
だが、彼の心は、不思議なほど、静かだった。
彼は、憐憫という名の、冷たい怒りの刃を、その魂に、宿したのだ。
それは、決して折れることのない、彼の、これからの戦いを支える、鋼の背骨となるだろう。
国家の任務。母の願い。そして、声なき人々の、慟哭。
そのすべてを、彼は、背負う覚悟を決めた。
龍は、深淵の底で、一度死んだ。
そして、今、新たな、そして、より恐ろしい龍として、生まれ変わった。
その瞳は、もはや、光も、闇も、映してはいない。ただ、その先にある、倒すべき、巨大な敵だけを、静かに、見据えていた。




