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龍の傳人―光と闇の羅針盤(青木家サーガ第3作)  作者: 光闇居士


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第四部:深淵の底で 7. 憐憫の刃

その夜、義成は、馬東を、クラブの最上階にある、彼専用のスイートルームへと案内した。

部屋の中では、酒と、薬物と、そして、三人の「紅顔知己」が、彼を待っていた。

これから始まるのは、人間の、最後の理性を破壊するための、狂宴だった。

楊楊が、彼の体を、炎のように、貪る。

無宣が、彼の心を、水のように、癒す。

小黎が、彼の罪悪感を、風のように、吹き飛ばす。

馬東は、生まれて初めて体験する、神をも恐れぬ、倒錯的な快楽の渦に、完全に飲み込まれていった。

夜が、白み始める頃。

酒と、薬と、セックスで、廃人同様になった馬東の前で、義成は、静かに、一枚の書類を差し出した。それは、彼の会社の、顧問に就任するという、契約書だった。もちろん、その報酬は、法外な金額だ。

挿絵(By みてみん)

「局長、ここに、サインを」

「…う、うむ…」

もはや、思考能力のない馬東は、震える手で、その書類に、サインをした。

罠は、完成した。

この一枚の書類と、この夜の、すべてを記録した隠しカメラの映像。それらが、馬東の、そして、その背後にいる巨大な組織の、首輪となった。

だが、その時。

狂乱の果てに、朦朧としながら、馬東が、ぽつりと、呟いた。

「…息子に、会いたい…」

それは、この、腐りきった怪物の中に、唯一残っていた、人間らしい感情の発露だったのかもしれない。

その言葉を聞いた瞬間、義成の心に、激しい、そして冷たい感情が、込み上げてきた。

憐憫。

しかし、それは、同情ではない。

この、醜悪な男でさえ、息子への愛を持っている。ならば、なぜ、お前は、何千、何万という、何の罪もない人々の、家族を、愛を、命を、平然と奪うことができるのだ?

義成の瞳が、絶対零度の光を放った。

彼は、馬東の耳元に、悪魔のように、囁いた。

「ご安心ください、局長。あなたの、ご子息のことも、我々が、万全の体制で、『お守り』いたしますから」

その言葉の、本当の恐怖に、馬東は、まだ、気づいていなかった。

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