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第三部:龍、怪物を誘う 5. ターゲットの絞り込み
数ヶ月にわたる「仕込み」の末、義成の目の前には、何人かの、有望なターゲットがリストアップされていた。その中で、彼と祖苑が、最終的な標的として絞り込んだのが、あの男だった。
上海市公安局の副局長、馬東。
「この男が、ビンゴよ」
香港のオフィスで、祖苑は、馬東の、極秘の調査ファイルを、義成の前に置いた。「彼は、周永康率いる、政法委員会(治安・司法部門)の派閥に連なる、直系の部下。そして、何より、上海における『610弁公室』――法輪功弾圧のためだけに作られた、ゲシュタポも真っ青の超法規的組織――の、現場責任者の一人。彼を落とせば、あなたの母親の友人を救う道も、そして、国家が求める、党の暗部へのパイプも、両方、手に入る可能性があるわ」
「弱みは?」
「全てよ。金、女、賭博、そして、息子。一人息子を、溺愛しているの。その息子がまた、父親の権力を笠に着て、やりたい放題の、手の付けられないクズ。これ以上、御しやすいターゲットはいないわ」




