4. 風の妖精 ― 小黎(シォーリー)
小黎との出会いは、最も劇的で、危険なものだった。
一年前、義成は、茶葉の買い付けのため、雲南省の奥地を訪れていた。その帰り道、国境近くの寂れた町で、彼は、人身売買の現場に、偶然、居合わせてしまった。
数人の男たちが、トラックの荷台に、何人かの若い女の子を、家畜のように詰め込んでいる。彼女たちは、皆、少数民族である苗族(ミャオ族)の、美しい民族衣装を着ていた。その中の一人、ひときわ小柄で、大きな黒い瞳を不安げに揺らしている少女と、義成は、目が合ってしまった。
彼女が、小黎だった。
義成の心の中の、何かが、弾けた。彼は、その少女の瞳の中に、かつて愛した李殷の、無垢で、しかし芯の強い光を見た。
彼は、その場で動いた。
彼は、深圳の闇社会に持つ、あらゆるコネクションに電話をかけた。金の力と、脅し。彼は、持てるカードのすべてを切って、わずか数時間で、その人身売買組織の情報を掴み、地元の公安(警察)を動かして、組織を壊滅に追い込んだ。
救出された少女たちの中で、小黎だけが、行く当てがなかった。彼女は、村の貧しさから、口減らしのために、親によって売られたのだ。
義成は、彼女を深圳に連れて帰ることにした。
「君は、どうしたい?村に帰りたいか?」
「…帰りたくない。帰っても、また売られるだけだから」
小黎は、まだ十代半ばだったが、その瞳は、自分の運命を冷静に見つめていた。
「私、義成様のそばにいたい。何でもするから。お掃除でも、洗濯でも」
義成は、彼女を、無宣と同じアパートの、隣の部屋に住まわせ、楊楊が働くクラブで、ウェイトレスとして働けるように手配した。彼は、彼女に、決して手を出そうとはしなかった。彼女は、あまりにも若く、そして純粋すぎた。彼女は、彼にとって、守るべき妹のような存在だった。
だが、彼女の想いは、違った。
彼女にとって、義成は、自分を地獄から救い出してくれた、神様そのものだった。彼女の、未熟で、しかし一途な心は、すべて義成に捧げられていた。
彼女が、彼の寝室に忍び込んできたのは、それから半年後の夜だった。
「義成様…私、もう子供じゃないよ」
彼女は、彼のベッドに潜り込むと、その小さな体で、彼にすり寄ってきた。そして、彼が止める間もなく、布団をめくり、彼の硬く昂った分身を、その小さな唇で、包み込んだ。
それは、驚くほど、巧みだった。
小黎との行為は、常に遊戯のようだった。
彼女には、性に対する罪悪感というものが、希薄だった。それは、彼女が育った苗族の、大らかな文化のせいかもしれない。彼女にとって、セックスは、大好きな人を、喜ばせるための、最高に楽しい遊びだった。
彼女の口技は、まさに神業だった。舌を巧みに使い、時には歯を立て、緩急をつけたその愛撫は、義成を、いとも簡単に、理性の彼方へと導いた。
「義成様、気持ちいい?もっと、してあげる」
彼女は、彼の顔を覗き込み、子犬のように無邪気に笑う。その愛嬌のある笑顔と、その口で行われている背徳的な行為のギャップが、義成の背徳感を煽り、快感を増幅させた。
彼女は、義成を天国へと導く、小さな妖精だった。彼女の奉仕には、楊楊のような支配欲への渇望も、無宣のような感謝の念もない。ただ、純粋な「好き」という気持ちだけがあった。
義成は、彼女の無邪気な奉仕の中で、忘れていたはずの、甘酸っぱい感情を思い出すことがあった。それは、彼がかつて、李殷に対して抱いていた、純粋な愛情の、微かな残滓だったのかもしれない。




