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第5話「"監視付きクエスト"、開始したけどまともに進まない」

ギルド前。

朝の光が差し込む中、俺たち三人は並んで立っていた。


リリア「今日から正式に“スライム監視任務兼クエスト同行”よ」


アリア「な、なんか名前が物騒だよ……」


俺「俺そんな危険物扱いなん?」


リリア「実際、危険でしょ。昨日の蜂の群れ、一人で全部倒したし」


俺「いや、あれは状況が……」


リリア「言い訳禁止!」


アリア「り、リリア落ち着いて……!」


そんな感じで、いつもどおり(?)の空気。


ギルド内に入ると、周りの冒険者たちが俺を見てざわついた。


「……あのスライムが噂の……」

「討伐報告のあった蜂の数、全部あれ一匹で……?」

「逆に怖ぇ……」


俺「なんか見られてるんだけど」


リリア「当然よ。あんた、討伐対象にも登録されかけたんだから」


アリア「スライムにしては……つよ……すぎ……」


そこへ受付のお姉さんが笑顔で近づいてきた。


受付嬢「本日のクエストはこちら。

 初心者向け『森の薬草採取』です♪」


リリア「……地味ね」


アリア「でも、平和でいいよね!」


俺「まあ、昨日の蜂よりはマシか」


受付嬢が紙を渡す。


受付嬢「ただし最近、その森で“謎の大型魔物の足跡”が見つかってまして……

 あ、危険を感じたらすぐ戻ってきてくださいね!」


三人「……大型魔物……?」


俺「え、なんか不穏なんだけど」


リリア「まさか……あなた関連?」


俺「俺に聞くな!」


アリア「わ、私たちがなんとかする……!」


リリア「不安しかないわ」



◆森の中


アリア「あっ、薬草あったよ! これで三束目!」


リリア「いいペースね。スライム、そっちどう?」


俺「ぷるぷるしてただけで四束見つかった」


リリア「なんであんたのほうが効率いいのよ!!」


アリア「スライム、森のアイテム感知できるのでは……?」


俺「いや、なんか色で見えるんだよな。レアアイテム光って見える的な」


リリア「チートじゃない!!?」


アリアは目を輝かせていた。


アリア「すごいよスライム! 冒険向いてるよ!!」


俺「だろ?」


リリア「調子に乗らない!!」


そんなやり取りをしていると――


ドスン。ドスン。


地面が揺れた。


アリア「ひっ……な、なに……?」


リリア「来たわね……噂の大型魔物」


茂みを押し分けて現れたのは――


巨大イノシシ《オークボア》。

体長3メートル。

角が凶悪すぎる。


リリア「やば……これ、Dランクじゃ倒せないレベル……!」


アリア「ど、どうしよう!?」


俺「全力で逃げ――」


オークボア「ブモオオオオオ!!」


突進開始。


リリア「きたああああ!!」


俺「アリア! あっちへ!!」


アリア「うわあああ!!」


俺とリリアでアリアを抱えて横へ飛ぶ。

突進が地面を抉り、砂煙が上がる。


俺「リリア! 作戦を!!」


リリア「そんな余裕ないってば!!」


アリア「え、ええと……じゃあ私が魔法で足止め……」


アリア、詠唱失敗。


ぽふっ。


リリア「毎回煙出すのやめてぇぇぇ!!?」


オークボアが再び突っ込む。

速度がさっきより速い。


リリア「まずい……避けきれない……!」


アリア「スライム、ダメ! 死んじゃう!!」


俺「……まあ、死ぬけどさ。死んだら強くなるし」


リリア「さらっと怖いこと言うな!!」


俺「でもアリア守れないほうが嫌だし。

 リリアも……仲間だしな」


リリア「――!」


アリア「スライム……!」


オークボアの角が迫る。


俺は勇気を振り絞り、真正面から跳び込んだ。


「うおおおおおお!!」


衝突。


空気が爆ぜる。


ドガァアア!!


オークボアは弾き飛ばされ、木をなぎ倒して気絶した。


森に静寂が戻る。


アリア「た……倒した……?」


リリア「嘘……スライム、Dランク魔物を正面から……?」


俺「いってぇ……けど、なんとか」


アリアは涙目で抱きついてきた。


アリア「もう無茶しないでよぉ!!」


俺「いや、まあ死ななかったからセーフだろ?」


リリア「セーフじゃないわよバカ!!

 ……でも、助かった」


リリアは小さく微笑んだ。


俺(あ、この子……笑うとかわいいじゃん)


リリア「な、なに見てんの!!?」


俺「いや、別に?」


リリア「見てたでしょ!? 絶対見てたでしょ!!?」


アリア「リリア、顔赤くなってる……」


リリア「赤くない!!」


今日も平和(?)でにぎやかな旅が始まる。


だが――


森の奥。

倒れたオークボアの体から、黒い霧が立ち昇っていた。


その霧の中から声が聞こえる。


「……特異個体スライム……

 やはり脅威になり得るな」


「……次は、こちらから行こう」


黒い霧は森の中へ静かに消えた。


(第5話・終)


【エピローグ③】


夜。

森の奥深く、闇が静かにうねっていた。


そこに、黒ローブの男が片膝をついていた。

彼の前には、人の形とも獣の形ともつかない“影の塊”が揺れている。


影の声「……報告を」


男「はい。

 特異個体スライム、推定ランク……現時点で“C相当”。

 成長速度は常識を超えています。

 このまま放置すれば、間違いなく――」


影「――“災厄級”へ到達する」


男は沈黙するしかない。


影の声が続く。


「ならば、計画を一つ繰り上げる。

 “覚醒前に排除”――最優先だ」


男「……承知しました」


影はゆらりと形を変え、人の笑顔を模した。

だがその笑顔は、表情だけの空洞。


「次に動くのは……“あの少女”。」


男の目が驚愕に揺れる。


「しょ……少女、ですか?」


影「そう。

 特異個体スライムと行動を共にする“魔法使い見習い”……

 彼女を“誘導”しなさい。

 もっと力を求めるように。

 もっと魔力を乱すように。

 そして――

 彼女自身が特異点になるように」


男「……血も涙もない手ですね」


影「最短で世界が壊れる方法を、私はよく知っているだけだ」


ゆらりと影が揺れる。


「さあ――この世界を“調整”しよう」


黒い霧が森のすべてを飲み込み、夜に溶けて消えた。


静寂。

ただひとつだけ、冷たい予感が残った。


(第5話エピローグ・終)


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