第4話「初めての共闘、なのに敵がガチすぎる」
森に響き渡る狂った羽音。
樹々の向こうから、巨大な蜂の群れが迫ってくる。
ジャイアントホーネット。
一匹でもE〜Dランク討伐対象。
しかし、今日のは数が多い。
どう見てもBランク級の群れだ。
アリアは青ざめ、リリアは短剣を構え、
俺はぷるぷる震えながら前に出た。
「うわ、デカ……刺されたら一瞬で死ぬサイズだなこれ」
リリア「覚悟しなさい! 私たちが食い止める!」
アリア「む、無理だよぉぉ! 私、魔力ほとんど残ってないし!!」
俺「俺は……勝てちゃうかもしれないのが逆に怖いんだけど」
リリア「贅沢な悩み言うな!!」
蜂たちが一気に突進してくる。
「リリア! 何か作戦は!?」
リリア「あるわ! アリア、援護魔法できる!?」
アリア「ちょっと待って、詠唱するから……!」
アリアが呪文を唱えようとした瞬間――
ぶんっ!!
ホーネット一匹が、一直線にアリア目掛けて急降下。
リリア「危ないアリア!!」
俺「おい、アリア死ぬぞ!!」
アリア「ひええええええ!!」
俺は反射的に飛び込んだ。
ジャンプ――じゃなくて“跳ね飛び”。
ホーネットの針をギリギリで避け、アリアの前に着地する。
どんッ!!
俺「ふぅ……ギリギリ」
アリア「た、助かった……ありがと……」
しかし次の瞬間、蜂の群れが一斉にこちらへ。
リリア「スライム! 避けてばっかりじゃ埒があかないわ!」
俺「いやでも勝つと強くならな――」
リリア「贅沢やめなさい!!」
アリア「い、今度こそ……魔法成功させる!!」
アリアは震える手で杖を構えた。
「フ……ファイアボ――」
ぼふっ。
煙が出た。
リリア「また煙ぇぇ!!?」
アリア「もうやだぁぁぁっ!!!」
蜂の一匹がアリアに突っ込む。
俺(しょうがねぇな……!)
ぷるんッ!!
俺はその蜂に体当たりした。
バチィッ!!
蜂は衝撃で弾かれ、木に激突して気絶。
リリアが目を丸くする。
リリア「ス、スライムの体当たりでジャイアントホーネットが……!?」
俺「俺の体、わりと硬いからな!」
アリア「すごいよスライム!!」
リリアはすぐに戦闘態勢へ戻った。
「二人とも、私が前で受ける!
スライムは機動力で回り込み!
アリアは……なんとか魔法を成功させて!!」
アリア「が、がんばる!!」
蜂たちがさらに密集して襲ってくる。
リリアが短剣で針を弾く。
キィン、キィン!
「くっ……速すぎる……!」
俺は後方から横っ飛びで一匹ずつ弾き飛ばす。
「こっち来い蜂野郎!!」
「ピギィィ!!?」
アリアは必死に唱え続ける。
「ファイアボール! ファイアボール!! 成功してお願い!!」
そのとき――
ぽんッ!
小さく火花が生まれた。
アリア「あ……出た……? ちょっとだけ……?」
リリア「その“ちょっと”でもいい!!」
俺「撃てアリア!!」
アリアは震える手で火花を放つ。
ぽふっ。
蜂が燃えた。
しかも――
“少しだけ燃えて、怒って倍速で突っ込んできた”。
「ぎゃあああああ!!? 火力弱いのに怒らせただけ!!?」
アリア「なんでこうなるのぉ!?!?」
リリア「アリア伏せて!!」
俺「くるぞ……!!」
全蜂の怒りがアリアに集中する。
このままじゃ本当に危ない。
俺はぷるん、と身体に力を込めた。
(勝っちゃうかもだけど……今はそれどころじゃねぇ!)
全力で跳び上がる。
「うおりゃああああ!!!」
体当たりが蜂の群れ全体をまとめて叩き落とす。
地面にバラバラと落ちていくホーネットたち。
羽音が止まる。
三人はしばらく呼吸を忘れていた。
リリア「……スライム。
あなた本当に……スライムなの……?」
俺「たぶん……スライム……」
アリア「す、すごい……スライム一人で……群れ……倒した……!」
リリアは短く息を吐いて武器を降ろした。
「……わかったわ。
あなたはただのモンスターじゃない。
危険でもあるけど……助けてくれたのも事実」
そしてリリアは、俺へ手を差し出す。
「私、あなたを討つのをやめる。
――代わりに“監視”させてもらうわ。
力の使い方を間違えないようにね」
俺「……監視って……お前、結構ツンデレだな?」
リリア「はぁ!? 誰がツンデレよ!!」
アリア「リリア、顔赤いよ?」
リリア「赤くない!!」
俺とアリアは思わず笑った。
こうして、
スライム・魔法使い見習い・戦士見習いの三人は、
奇妙な共闘の絆を結び始めていた。
しかし――
その様子を、森の影でひとり見つめる者がいた。
「特異個体スライム……予想以上か」
黒いフードの男は、静かに呟いた。
「……やはり、排除対象だな」
(第4話・終)




