第39話『世界を肯定する力』
【プロローグ】『最後の否定』
――終わりは、静かに近づいていた。
空の裂け目は、
もはや“空”ではない。
世界の上に開いた、終焉そのものだった。
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**◆世界の静止】
風が止まり、
波が凪ぎ、
人々の動きが、ゆっくりになる。
時間が、引き伸ばされている。
世界は、最後の瞬間を拒むように、足踏みしていた。
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**◆影王・最終形態】
裂け目の中心で、影王が完全に姿を変える。
人でも、影でもない。
無数の“否定”が絡み合った、
巨大な概念体。
影王
『私は――世界の“不要”を集めたもの』
影王
『悲しみ、後悔、恐怖……』
影王
『全てを否定し、均した結果だ』
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**◆蒼紅の反応】
ユウトとアリアの胸の紋様が、今までにないほど強く光る。
ユウト
「……来たな……」
アリア
「……これが……本当の……」
リオ
「……終わりか」
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**◆残酷な真実】
影王
『蒼紅の核が、私を否定すれば』
影王
『この世界は、次の瞬間を得る』
影王
『だが――』
影王
『核は、器と、共に消える』
沈黙。
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**◆選択の最終形】
影王
『最後に、もう一度、選べ』
影王
『核を使い、世界を存続させるか』
影王
『使わず、世界と共に終わるか』
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**◆覚悟】
ユウトは、アリアを見る。
ユウト
「……答えは……最初から……」
アリア
「……うん」
リオ
「……俺は……止めねぇ」
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**◆刻限】
空が、
ゆっくりと崩れ落ちる。
世界崩壊まで、残り10分。
影王
『否定を、否定せよ』
終わりの扉が、開かれた。
――最後の戦いは、剣でも、魔法でもなかった。
それは、存在そのものの衝突だった。
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**◆終焉の中心】
空が、砕け落ちる。
裂け目の奥で、影王――否定の集合体が、脈動している。
影王
『否定こそが、世界を保つ』
影王
『不要を切り捨てねば、秩序は生まれぬ』
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**◆ユウトの一歩】
ユウトは、一歩、前へ出る。
蒼紅の核が、身体の輪郭を溶かし始める。
ユウト
「……確かに」
ユウト
「間違いも、後悔も……いらないって思ったことはある」
ユウト
「でも……」
ユウト
「それを全部、“なかったこと”にしたら……」
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**◆アリアの肯定】
アリア
「……泣いた夜も」
アリア
「……怒った日も」
アリア
「……あなたと、出会った意味も……」
アリア
「全部……消えちゃう」
紅い光が、蒼と絡み合う。
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**◆リオの本心】
リオ
「……俺は」
リオ
「間違え続けてきた」
リオ
「影法師にいた頃も……守れなかったことも……」
リオ
「でも……」
リオ
「その“後悔”がなきゃ……今、ここに立ってねぇ」
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**◆肯定という刃】
ユウト
「……否定じゃない」
ユウト
「俺たちは……“肯定”する」
蒼紅の核が、完全に露わになる。
それは、破壊の力ではなかった。
受け入れる力だった。
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**◆影王の揺らぎ】
影王
『……受け入れる……?』
影王
『不要を……抱え込む……?』
影王の形が、大きく歪む。
影王
『それでは……崩れる……』
ユウト
「……崩れてもいい」
ユウト
「立て直すから」
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**◆核の解放】
ユウトとアリアの胸から、蒼紅の核が、ゆっくりと浮かび上がる。
二つではない。
一つだった。
核が、裂け目の中心へ向かう。
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**◆リオの叫び】
リオ
「……行け!」
リオ
「……帰ってこいよ!」
ユウト
「……約束は……できない」
ユウト
「でも……信じてくれ」
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**◆衝突】
蒼紅の核が、影王へ触れる。
光が、闇を包む。
否定と、肯定が、ぶつかる。
影王
『……理解……不能……』
影王
『だが……』
影王
『否定……される……』
影王の声が、溶けていく。
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**◆世界の再生】
裂け目が、ゆっくりと閉じ始める。
空が、元の青を取り戻す。
時間が、流れ出す。
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**◆消失】
核は、光となって、空へ溶けた。
ユウトの身体が、透け始める。
アリア
「……ユウト……!」
ユウト
「……大丈夫」
ユウト
「世界は……ちゃんと……続く」
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世界崩壊まで、残り0分。
だが――
崩壊は、起きなかった。
残ったのは、静かな、肯定だけ。
【エピローグ】『その後に残るもの』
――世界は、朝を迎えた。
裂けていた空は、何事もなかったかのように青く、風が、静かに街を撫でていく。
終わりは、訪れなかった。
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**◆残された世界】
人々は、ゆっくりと日常へ戻っていく。
瓦礫を片付ける者。
家族を探す者。
空を見上げ、
涙を流す者。
誰もが、
“何か”を失い、
“何か”を得ていた。
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**◆消えた核】
蒼紅の光は、もう、どこにもない。
世界は、不安定だが、自分の力で立っている。
奇跡に頼らない、普通の世界。
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**◆アリア】
アリアは、丘の上に立つ。
胸に、淡く残る温度。
アリア
「……ちゃんと……残ってる」
涙は、こぼれなかった。
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**◆リオ】
リオは、剣を地面に突き立てる。
リオ
「……あいつ……やりきりやがった」
空を見上げ、小さく、笑う。
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**◆名もなき存在】
街の片隅。
小さな、水たまりが、きらりと揺れた。
誰も、気づかない。
だが――
その中心で、ほんの一瞬。
蒼と紅が、交わった。
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**◆未来】
世界は、完全じゃない。
間違いも、
後悔も、
また生まれる。
それでも――
“選んだ未来”は、確かに、ここにある。
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終章・了
だが、
物語は、
まだ、息をしている。
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『負ければ負けるほど最強スライム━━転生したら、負けイベントだけやたら多い世界でした━━』通称『負けスラ』を最後までお読みいただきありがとうございました。
次の作品も制作中ですのでお楽しみにしてください。作品の発表は2026年1月1日午後12:00に各SNSにて発表致します。もうしばらくお待ちくださいませ。
青威林檎-あおいりんご




