第38話『選択の重さ』
【プロローグ】『選ばせる世界』
――世界が、問いを突きつけてきた。
空の裂け目が、静かに、だが確実に広がる。
そこから降り注ぐ影は、もはや“攻撃”ではない。
選択だった。
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【◆世界の再構成】
大地が、ゆっくりと形を変える。
街が、分岐する道のように、二つに割れていく。
一方は、人々が感情を失い、争いも、悲しみもない世界。
もう一方は、痛みも、恐怖も、全てを抱えた、今までの世界。
人々
「……どっちが……正しい……?」
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**◆影王の宣言】
影王
『選べ』
影王
『感情なき、安定した世界か』
影王
『不完全で、滅びへ向かう世界か』
影王
『どちらも、否定ではない』
影王
『これは――“進化”だ』
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**◆個別の選択】
人々の前に、それぞれの“分岐”が現れる。
家族を失った者。
争いに疲れた者。
守りたいものがある者。
誰もが、足を止める。
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**◆ユウトの葛藤】
ユウトは、自分の透けた手を見る。
ユウト
「……感情がなけりゃ……痛くも、苦しくも……」
ユウト
「俺は……消えずに済むのか……?」
影王
『そうだ』
影王
『蒼紅の負荷も、消える』
影王
『お前は、“安定”できる』
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**◆アリアの想い】
アリアは、ユウトを見る。
アリア
「……でも」
アリア
「感情がなければ……“一緒”って……何?」
影王
『不要だ』
影王
『個は、群に溶ける』
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**◆リオの怒り】
リオ
「……選ばせる、だと?」
リオ
「逃げ道を用意して……それを“正解”にする気かよ」
影王
『逃げではない』
影王
『合理だ』
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**◆残酷な条件】
影王
『さらに、一つ、条件を出そう』
影王
『選択は――全会一致』
影王
『一人でも違えば、世界は、崩壊する』
沈黙。
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**◆迫る刻限】
空が、軋みを上げる。
世界崩壊まで、残り2時間。
影王
『選べ』
影王
『この世界の、未来を』
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三人は、互いを見る。
選択は、
もう、避けられなかった。
――沈黙が、世界を押し潰した。
分岐した二つの世界が、ゆっくりと脈動する。
一方は、色の薄い、静かな世界。
涙も、怒りも、愛もない。
もう一方は、歪で、不安定で、それでも“生きている”世界。
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**◆人々の迷い】
母
「……苦しまない世界……それも、幸せなの……?」
老人
「……争いのない世界は……夢だった……」
若者
「……でも……何も感じないなら……生きてる意味は……?」
足が、揺れる。
心が、揺れる。
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**◆影王の圧】
影王
『迷う必要はない』
影王
『感情は、誤りの源』
影王
『排除すれば、世界は、永続する』
影王の影が、二つの世界を包み込む。
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**◆ユウトの恐怖】
ユウトは、自分の胸を押さえた。
蒼紅の紋様が、かすかに軋む。
ユウト
「……正直……」
ユウト
「……怖い」
ユウト
「感情がなくなれば……俺は……消えなくて済む」
ユウト
「アリアも……苦しまない」
影王
『それが、最適解だ』
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**◆アリアの答え】
アリアは、一歩、前に出た。
アリア
「……私は」
アリア
「怖くても……苦しくても……」
アリア
「誰かを想って、胸が痛むこの感じを……」
アリア
「失いたくない」
影王
『それは、非合理だ』
アリア
「……そう」
アリア
「でも……それが、“私”」
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**◆リオの決断】
リオは、剣を地面に突き立てる。
リオ
「……俺は」
リオ
「感情に振り回されて……間違えて……」
リオ
「それでも……選んできた」
リオ
「選ばされる世界なんて……ごめんだ」
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**◆世界の声】
人々の間に、ざわめきが広がる。
「……忘れたくない……」
「……泣いたことも……笑ったことも……」
「……苦しいけど……それが……」
一人、また一人と、
“不完全な世界”へ歩き出す。
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**◆全会一致】
影王
『……愚かな……』
影王
『だが――条件は、条件』
影王
『全会一致……』
影王の影が、世界全体を見渡す。
影王
『……成立した』
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**◆拒絶】
影王
『ならば』
影王
『世界は――滅びを、選んだ』
空が、大きく歪む。
裂け目が、今までになく広がった。
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**◆ユウトの宣言】
ユウトは、アリアの手を取る。
ユウト
「……滅びじゃない」
ユウト
「“選んだ”んだ」
蒼紅の紋様が、力強く輝く。
ユウト
「俺たちは……間違える自由を、選んだ」
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**◆影王の変化】
影王の姿が、大きく歪む。
影王
『……理解不能』
影王
『それでも、抗うというなら……』
影王
『私が、終わらせる』
影が、王の形を捨て始める。
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世界崩壊まで、残り1時間。
選択は、終わった。
次は――決着だった。
【エピローグ】『選んだ未来』
――世界は、答えを受け取った。
分岐していた二つの世界は、
ゆっくりと重なり合い、
一つの“不完全な現実”へ戻っていく。
色が、戻る。
音が、戻る。
痛みも、温度も――戻る。
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**◆人々の再生】
人々は、自分の胸に手を当てる。
女性
「……苦しい……」
男性
「……でも……生きてる……」
涙を流す者。
笑い出す者。
誰かを抱きしめる者。
世界は、
確かに“生きて”いた。
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**◆影王の終焉準備】
影王の身体が、ゆっくりと崩れ始める。
影王
『選択は、尊重される』
影王
『だが、代償は、避けられない』
影王
『蒼紅の核は……世界と、直結した』
影王
『終われば――器は、残らぬ』
アリア
「……ユウト……?」
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**◆ユウトの覚悟】
ユウトは、静かに笑った。
ユウト
「……分かってる」
ユウト
「俺は……世界を支えるための“仮の形”」
ユウト
「……役目が終われば……消える」
アリア
「……そんな……」
ユウト
「……大丈夫」
ユウトは、アリアの額に触れる。
ユウト
「選んだ未来は……ちゃんと……ここに残る」
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**◆リオの言葉】
リオ
「……ふざけんな」
リオ
「消えるって……勝手に決めるな」
ユウト
「……リオ」
リオ
「……まだ……終わってねぇだろ」
リオ
「影王を……完全に倒してねぇ」
影王
『……その通りだ』
影王の影が、最後に、膨れ上がる。
影王
『私は――世界そのもの』
影王
『否定されるなら……最後まで、抗おう』
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**◆最後の時】
空の裂け目が、一点へ収束する。
蒼紅の光が、そこへ吸い込まれていく。
ユウト
「……行ってくる」
アリア
「……一緒」
ユウト
「……危険だ」
アリア
「……離れない」
リオ
「……俺もだ」
三人は、並んで、前を向く。
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世界崩壊まで、残り30分。
終焉は、避けられない。
だが――未来は、選んだ。




