第37話『断絶領域』
【プロローグ】『否定される絆』
――世界が、静かに“切り離され始めた”。
空の裂け目から、影が糸のように垂れ下がる。
それは攻撃でも、破壊でもない。
“接続”そのものを断つ力だった。
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**◆異変】
ユウトの胸の蒼紅紋様が、不規則に揺れる。
ユウト
「……くそ……」
アリア
「……繋がりが……薄く……」
手を握っていても、互いの魔力の鼓動が、遠く感じられる。
リオ
「おい……何だ、この違和感……」
リオの影が、足元から、わずかに離れた。
リオ
「……影が……遅れてる……?」
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**◆影王の宣告】
裂け目の奥から、低く、静かな声。
影王
『否定は、破壊ではない』
影王
『“関係”を消せば、全ては瓦解する』
影王
『家族、仲間、信頼……』
影王
『それらは、世界を不安定にする』
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**◆断絶の兆候】
アリア
「……いや……」
アリアは、ユウトの手を強く握る。
だが――指先の感触が、薄れていく。
アリア
「……触ってるのに……遠い……」
ユウト
「……切り離そうとしてる……俺たちを……」
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**◆選別】
影王
『試そう』
影王
『絆が本物なら、断てるはずがない』
影王
『偽物なら――最初から、存在しない』
空の裂け目が、大きく脈打つ。
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**◆予兆】
世界の各地で、人々が、立ち止まる。
母
「……この子……私の……?」
兵士
「……何で、守ってるんだ……?」
記憶と感情が、ゆっくりと、剥がれていく。
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**◆決意】
ユウトは、アリアを見つめる。
ユウト
「……離れるな」
アリア
「……離れない」
リオ
「……誰が、切らせるかよ」
三人の影が、わずかに、重なった。
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世界崩壊まで、残り5時間。
影王は、
“絆”そのものを、否定しに来た。
――空間が、裂けたのではない。
“繋がり”が、消えた。
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**◆断絶の発動】
影王が、静かに手を広げる。
影王
『――断絶領域』
その一言で、世界が“分断”された。
音が、消える。色が、薄れる。他者の存在感が、霧のように遠のく。
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**◆孤立】
ユウト
「……アリア?」
声は、届かない。
数歩先にいるはずのアリアが、遠くの景色の一部のように見える。
アリア
「……ユウト……?」
互いに見えているのに、触れられない。
魔力の共鳴も、完全に遮断されていた。
ユウト
「……くそ……!」
蒼紅の紋様が、反応しない。
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**◆リオの戦い】
リオは、完全に孤立していた。
リオ
「……一人かよ……」
影の兵が、無言で迫る。
リオ
「上等だ……!」
剣を振るう。
だが、斬った感触が、薄い。
影兵
『……』
影兵は、何度でも立ち上がる。
リオ
「……仲間がいねぇと……キツいな……!」
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**◆精神への侵食】
影王の声が、それぞれの心に、直接響く。
影王
『見えるか』
影王
『繋がりを失った時の、“本当の姿”が』
ユウトの前に、幻影が現れる。
――アリアが、ユウトを置いて、遠ざかっていく。
影王
『お前は、いずれ消える存在』
影王
『残る者を、縛るだけだ』
ユウト
「……黙れ……」
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アリアの前には、別の幻影。
――ユウトが、静かに消えていく。
影王
『彼は、救われない』
影王
『ならば、忘れた方がいい』
アリア
「……嫌……」
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**◆リオへの囁き】
影王
『一人で戦ってきたな』
影王
『裏切り、命令、利用……』
影王
『また、一人に戻るだけだ』
リオ
「……」
一瞬、剣が、揺れる。
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**◆抗い】
ユウトは、胸を押さえた。
ユウト
「……俺は……消えても……」
ユウト
「繋がりまで、否定させねぇ……!」
蒼紅の紋様が、微かに、再点灯する。
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**◆アリアの声】
アリアは、目を閉じる。
アリア
「……ユウト……」
アリア
「聞こえなくても……繋がってる」
アリア
「だって……私が、覚えてる」
紅い光が、彼女の胸で灯る。
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**◆リオの選択】
リオは、剣を、強く握り直す。
リオ
「……一人?」
リオ
「……ふざけんな」
リオ
「俺は……選んだ」
影兵を、一刀で斬り伏せる。
リオ
「もう、戻らねぇ」
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**◆領域の亀裂】
三人の“意思”が、同時に、影王の力に抗う。
断絶領域に、微かな亀裂が走る。
影王
『……ほう』
影王
『だが、まだ足りぬ』
闇が、さらに、濃くなる。
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世界崩壊まで、残り4時間。
絆は、まだ断たれていない。
だが、完全ではなかった。
【エピローグ】『それでも、繋がる』
――断絶領域の中で、小さな“灯り”が、生まれていた。
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**◆微かな接続】
音も、距離も、まだ、戻らない。
それでも――
ユウトの胸の蒼紅紋様が、一定のリズムで脈打ち始める。
ユウト
「……アリア……聞こえなくても……」
ユウト
「……分かる……そこにいる……」
彼の足元に、薄い影が、もう一つ重なる。
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**◆アリアの確信】
アリアは、目を開けた。
アリア
「……ユウト……大丈夫」
声は届かない。
だが、胸の奥に、確かな温もりがあった。
アリア
「……消えない」
アリア
「繋がりは……記憶だけじゃない」
紅い光が、静かに強まる。
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**◆リオの突破】
リオは、影兵の山を越える。
リオ
「……絆ってのはな」
リオ
「頼ることじゃねぇ」
リオ
「守るって……決めることだ」
影兵が、
一瞬、動きを止めた。
その隙を、リオは見逃さない。
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**◆影王の反応】
断絶領域の中央で、影王が、わずかに眉をひそめた。
影王
『……記憶でも、感情でもない』
影王
『意思……か』
影王
『面倒だ』
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**◆共鳴の再生】
蒼紅の光が、領域全体に、細い糸のように広がる。
それは、無理やり繋ぐ力ではない。
“繋がろうとする意志”だった。
ユウト
「……俺は、消えるかもしれない」
ユウト
「でも……忘れない」
アリア
「……私も……」
リオ
「……最後まで……」
三人の影が、完全に重なった。
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**◆小さな崩壊】
――パキ……
断絶領域に、確かな亀裂が入る。
音が、微かに、戻る。
風が、再び、流れ出す。
影王
『……完全な断絶は、
不可能……か』
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**◆静かな予告】
影王は、ゆっくりと後退する。
影王
『ならば、次は――』
影王
『“選択”を迫ろう』
闇が、再び、うねった。
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**◆約束】
断絶が薄れる中、三人の声が、重なる。
ユウト
「……離れない」
アリア
「……信じる」
リオ
「……背中、任せろ」
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世界崩壊まで、残り3時間。
絆は、完全ではない。
だが――
否定できなかった。




