第36話『蒼紅安定化作戦』
【プロローグ】『第二形態へのカウントダウン』
――世界が、息を止めた。
空の裂け目はさらに広がり、夜でもない闇が、空を覆い尽くしていく。
時間そのものが、軋んでいた。
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◆全域・同時刻
魔力の流れが、不規則に逆転する。
大地のあちこちで、“現実の欠落”が発生していた。
道が途中で消え、家が半分だけ存在し、人の影が、地面に映らない。
人々
「……何かが……ズレてる……」
「……世界が、壊れて……」
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【◆蒼紅の共鳴不安定】
ユウトの胸の紋様が、不規則に明滅する。
ユウト
「……くっ……」
膝をつくユウトを、アリアが支える。
アリア
「ユウト……!」
ユウト
「……大丈夫……でも……」
ユウト
「蒼と紅の位相が……ズレ始めてる……」
リオ
「ズレたら……どうなる?」
ユウト
「……融合が、崩壊する」
アリア
「……!」
⸻
【◆影王の予告】
裂け目の奥から、影王の声が響く。
影王
『時は、十分』
影王
『第二形態への移行を、開始する』
影王
『蒼紅が、最も不安定な瞬間に』
影王
『私は、完成する』
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【◆残された手段】
アリアは、唇を噛みしめる。
アリア
「……安定化する方法は?」
ユウト
「……一つだけ」
リオ
「言え」
ユウト
「……蒼紅の“核”を、完全に同期させる」
アリア
「……どうやって?」
ユウトは、アリアを見つめる。
ユウト
「……常時リンク」
リオ
「……つまり?」
ユウト
「……離れない」
沈黙。
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【◆決断の予兆】
遠くで、闇が脈打つ。
影王
『残り時間――』
影王
『9時間』
アリアは、静かに頷いた。
アリア
「……分かった」
アリア
「離れない」
ユウト
「……ありがとう」
リオ
「……なら」
リオは、剣を肩に担ぐ。
リオ
「俺が、
二人を守る」
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闇が、確実に、濃くなる。
第二形態は、すぐそこまで来ていた。
――刻限が、迫っていた。
空の裂け目は鼓動のように脈打ち、闇が、ゆっくりと世界へ染み出していく。
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◆作戦開始
ユウト
「……時間がない」
ユウトは、
アリアの前に立つ。
ユウト
「これから蒼紅を“常時リンク”させる」
アリア
「……うん」
リオ
「俺は周囲を警戒する。来たら、全部斬る」
ユウト
「頼む」
二人は、向かい合い、手を重ねた。
蒼紅の紋様が、同時に淡く光る。
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【◆位相同期】
ユウト
「……呼吸を合わせて」
アリア
「……吸って……吐いて……」
魔力の波長が、少しずつ重なっていく。
だが――
ズン……
空間が歪む。
影の裂け目から、異形が這い出してきた。
リオ
「チッ……来やがった!」
リオは、影の獣を斬り伏せる。
リオ
「集中しろ!!俺が何とかする!!」
⸻
【◆暴走寸前】
ユウト
「……っ……!」
蒼紅の光が、急激に不安定になる。
ユウト
「……感情が……混線する……」
アリア
「……私の……怖さが……?」
ユウト
「……違う……俺の……恐怖だ……」
ユウトの脳裏に、影王に否定される世界が過る。
ユウト
「……全部、消える……」
アリア
「……大丈夫」
アリアは、強く手を握った。
アリア
「……消えない」
アリア
「私が、ここにいる」
ユウト
「……アリア……」
⸻
【◆同調】
蒼と紅が、ゆっくりと溶け合う。
蒼紅の光が、安定した輝きへ変わる。
ユウト
「……同期率……80%……!」
アリア
「……いける……!」
⸻
【◆影の猛攻】
だが、裂け目から、さらに多くの影が溢れ出す。
リオ
「くっ……数が……!」
影の刃が、リオの肩を掠める。
リオ
「……っ!」
アリア
「リオ!!」
リオ
「見るな!!集中しろ!!」
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【◆100%目前】
ユウト
「……90……95……!」
蒼紅の紋様が、眩い光を放つ。
ユウト
「……あと、少し……!」
その瞬間。
――ズキン。
アリアの胸に、激痛が走る。
アリア
「……っ……!」
ユウト
「アリア!?」
アリア
「……平気……」
だが、紅核が、一瞬、暗くなる。
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【◆影王の介入】
裂け目から、影王の声が直接響く。
影王
『……不完全』
影王
『感情がある限り、融合は、歪む』
影王
『恐怖も、愛も――ノイズだ』
ユウト
「……黙れ……!」
ユウト
「それがあるから……俺たちは……!」
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【◆選択】
影王
『切り離せ』
影王
『片方を、捨てれば――』
影王
『安定する』
沈黙。
蒼紅の光が、揺れる。
ユウト
「……ふざけるな」
ユウト
「……捨てるくらいなら……」
ユウト
「全部、壊す」
アリア
「……ユウト」
アリアは、微笑んだ。
アリア
「……一緒に」
二人の魔力が、完全に重なる。
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【◆蒼紅・完全同期】
――カァァン……
澄んだ音。
蒼紅の紋様が、完全に安定する。
ユウト
「……同期率……100%……!」
空間の歪みが、一気に収束する。
影の獣たちは、光に焼かれ、消滅した。
リオ
「……やった……?」
⸻
【◆代償】
ユウトは、大きく息を吐く。
ユウト
「……成功……」
だが、その身体が、わずかに透ける。
アリア
「……ユウト……?」
ユウト
「……代償だ……」
ユウト
「……存在が……少しずつ……」
言葉が、途切れる。
⸻
世界崩壊まで、残り7時間。
安定は、得た。
だが――
新たな“代償”が、静かに始まっていた。
【エピローグ】『存在の薄れ』
――静かな夜。
空の裂け目は、完全には閉じていないが、その鼓動は弱まっていた。
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【◆変化】
ユウトは、瓦礫の上に腰を下ろしていた。
ユウト
「……はは……」
自分の手を見る。
指先が、わずかに透けている。
ユウト
「……やっぱり、な」
アリア
「……ユウト……」
アリアは、彼の手を握ろうとする。
――触れられる。
だが、温度が、薄い。
アリア
「……冷たい……」
ユウト
「……存在を燃料にしてる」
ユウト
「蒼紅を維持するには……俺自身が……」
リオ
「……ふざけんな……」
リオは、歯を食いしばる。
リオ
「そんな代償……聞いてねぇ……」
⸻
【◆アリアの決意】
アリアは、ユウトの前に立つ。
アリア
「……なら」
アリア
「私も、支払う」
ユウト
「……ダメだ」
アリア
「……一人で消える方が……残酷」
ユウト
「……それでも……」
アリア
「……蒼紅は、二人の核」
アリア
「片方だけで……保てると思う?」
ユウト
「……っ」
言葉が、詰まる。
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【◆共有】
アリアは、そっと額をユウトに触れさせた。
アリア
「……半分」
ユウト
「……え?」
アリア
「代償を……半分こ」
蒼紅の紋様が、二人の胸で同時に輝く。
ユウト
「……無茶だ……」
アリア
「……平等」
微笑み。
⸻
【◆変質】
蒼紅の光が、穏やかに再編成される。
ユウトの身体の透過が、少しだけ、戻った。
完全ではない。
だが――
消えゆく速度は、止まった。
リオ
「……安定……した……?」
ユウト
「……ああ……“二人で存在する”形に……」
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【◆影王の気配】
空の裂け目が、再び、わずかに脈打つ。
影王
『……理解した』
影王
『存在そのものを、支え合うか』
影王
『ならば――』
影王
『次は、その“絆”を否定しよう』
闇が、再び濃くなる。
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【◆静かな約束】
アリアは、ユウトの手を強く握る。
アリア
「……消えない」
ユウト
「……ああ」
リオ
「……二人とも、死ぬなよ」
ユウト
「……死なねぇ」
ユウト
「まだ……終わってない」
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世界崩壊まで、残り6時間。
存在は、二人で支えるものになった。
だが、
影王は“絆”そのものを、狙い始めている。




