第34話『共鳴暴走/命の選択』
【プロローグ】『砕ける核、燃える命』
――世界が、悲鳴を上げた。
空を覆う巨大魔法陣が、今までにないほど激しく明滅する。
赤と蒼、二つの光が軋み合い、まるで世界そのものが引き裂かれそうだった。
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◆北方・蒼白の塔
氷嵐の中心で、ユウトは膝をついていた。
ユウト
「……っ、はぁ……はぁ……」
左腕は氷に覆われ、蒼核には、はっきりとした亀裂が走っている。
セルシウス
『理解したか。核は万能ではない』
ユウト
「……分かってる」
セルシウス
『砕ければ、お前は“ただの存在しないもの”になる』
ユウト
「……それでも、だ」
ユウトは、ゆっくりと立ち上がる。
ユウト
「俺が止まったら……世界が終わる」
蒼核が、苦しそうに光った。
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◆西方・紅黒の祭壇
紅黒の光の中心で、アリアは静かに目を閉じていた。
アリア
「……ユウト……」
白く変わった炎が、彼女の身体を包み込む。
ヴェスパ
『ああ……美しい……これこそ、完成形……!』
リオ
「やめろォォ!!アリア、戻れ!!」
アリア
「……リオ。ありがとう」
リオ
「何、言って……」
アリア
「私、ずっと……守られてばかりだった」
白炎が、さらに強く燃え上がる。
アリア
「今度は……私が、守る番」
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◆共鳴
その瞬間。
――蒼核と紅核が、遠く離れていながら、同時に脈動した。
ユウト
「……アリア……?」
胸の奥に、焼けるような痛みが走る。
アリア
「……ユウト……聞こえる……」
二人の意識が、微かに重なり合う。
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◆影の王座
虚空の玉座で、影王が静かに立ち上がった。
影王
『――始まったか』
影王
『蒼と紅。どちらが先に砕けるか……』
影王
『それが、この世界の答えだ』
影王の背後で、終焉の歯車が、確実に回り始める。
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世界崩壊まで、残り18時間。
二つの命が、
同時に燃え尽きようとしていた。
――轟音。
北と西、二つの戦場で、同時に“異変”が起きた。
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◆北方・蒼白の塔
蒼核の亀裂から、制御不能な蒼光が噴き出す。
ユウト
「……っ、くそ……!」
身体が浮かび、周囲の氷が一瞬で蒸発する。
セルシウス
『……暴走か』
セルシウスは後退し、冷静に状況を見極めていた。
セルシウス
『共鳴している……紅核と、だな』
ユウト
「……アリア……!」
胸が、焼けるように痛む。
ユウト
「やめろ……無茶するな……!」
蒼核が悲鳴を上げるように、さらに輝きを増す。
ユウト
「このままじゃ……俺も……!」
セルシウス
『選べ。核を守るか、世界を守るか』
ユウト
「……っ」
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◆西方・紅黒の祭壇
白炎が、空へと伸びる。
アリア
「……っ……!」
炎が、彼女の生命力を削っているのが分かる。
リオ
「アリア!!目を開けろ!!」
ヴェスパ
『素晴らしい……だが、足りない』
ヴェスパが儀式陣を強化する。
ヴェスパ
『もっと燃えなさい。あなたの“命”を』
アリア
「……分かってる……」
アリアの唇から、かすかな血が零れる。
アリア
「でも……私だけじゃ……終わらせない……」
紅核が、異様な輝きを放つ。
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◆共鳴・暴走
蒼と紅、二つの核が、距離を超えて完全に共鳴した。
――世界が、白く染まる。
ユウト
「……!?」
アリア
「……!」
二人の意識が、一瞬、同じ空間に引き込まれる。
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◆精神共鳴空間
静かな、白い世界。
ユウト
「……アリア」
アリア
「ユウト……」
二人は、向かい合って立っていた。
ユウト
「……やめろ。自分を犠牲にするな」
アリア
「ユウトこそ……核、壊れかけてる……」
ユウト
「俺は……スライムだ。壊れても、また――」
アリア
「嘘」
アリアは、首を振る。
アリア
「あなたは……もう、ただのスライムじゃない」
アリア
「誰かにとって、“帰る場所”なんだから」
ユウト
「……!」
アリア
「だから……一緒に、生きよう」
ユウト
「……生きる、ために……?」
アリア
「うん」
アリアは、そっと手を伸ばす。
アリア
「どちらかが消えるんじゃない。――二人で、抗う」
ユウト
「……そんな方法……」
アリア
「ある」
アリア
「私の紅核と、あなたの蒼核……」
アリア
「**融合**させる」
ユウト
「……!」
ユウト
「そんなことしたら……どうなるか、分からない……!」
アリア
「分からないから……やるんだよ」
微笑み。
アリア
「一人で死ぬより、一緒に生きる方が、怖い?」
ユウト
「……怖いに、決まってるだろ」
ユウトは、アリアの手を取った。
ユウト
「……でも」
ユウト
「一人より、二人の方がいい」
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**◆現実世界・同時】
蒼白の塔と紅黒の祭壇、二つの場所で、同時に眩い光が爆発する。
セルシウス
『……何だ……これは……』
ヴェスパ
『儀式が……逆流して……!?』
蒼と紅が絡み合い、新たな光となる。
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◆融合開始
精神空間で、二つの核が、ゆっくりと重なり始める。
ユウト
「……戻ろう。一緒に」
アリア
「うん……」
世界が、再び動き出す。
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世界崩壊まで、残り14時間。
融合は、始まった。
【エピローグ】『蒼紅融合』
――静寂。
爆発的な光が収束し、北と西、二つの戦場に“新しい気配”が生まれていた。
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◆北方・蒼白の塔
吹雪が、止んだ。
氷に覆われていた大地は溶け、蒸気が静かに立ち上る。
セルシウス
「……世界の法則が……書き換わった……?」
彼の視線の先。
ユウトが、立っていた。
だが――その背には、蒼と紅が混ざり合った淡い光の翼が揺れている。
ユウト
「……はぁ……」
蒼核の亀裂は消え、代わりに蒼紅の紋様が胸に刻まれていた。
ユウト
「……生きてる……」
セルシウス
「その姿……“二核共鳴体”……だと……?」
ユウト
「名前なんてどうでもいい」
ユウトは、まっすぐ前を見る。
ユウト
「――止める」
セルシウスは、わずかに目を見開いた。
セルシウス
「……氷は、溶けるものか」
彼は、静かに構え直す。
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◆西方・紅黒の祭壇
白炎は、消えていた。
祭壇の魔法陣は崩れ、人々は無事に倒れ込んでいる。
リオ
「……アリア……?」
瓦礫の中から、アリアがゆっくりと起き上がった。
アリア
「……大丈夫」
彼女の瞳には、蒼と紅が混じった光が宿っている。
リオ
「……その目……」
アリア
「……ユウトと、繋がってる」
胸元に、蒼紅の紋様が淡く光る。
ヴェスパ
「……馬鹿な……
融合なんて……禁忌……」
アリア
「禁忌でも……守りたいものがある」
アリアは、リオの前に立つ。
アリア
「この街は、渡さない」
ヴェスパは、
一歩、後退した。
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◆共鳴の余波
空の魔法陣が、大きくひび割れた。
赤黒かった空に、わずかだが、青い光が差し込む。
リオ
「……空が……」
アリア
「まだ……終わってないけど」
アリア
「希望は……見えた」
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◆影の王座
影王は、初めて、わずかに笑った。
影王
『……面白い』
影王
『禁忌を越えるか。ならば――』
影王
『次は、私が“直々に”相手をしよう』
王座の背後で、巨大な影が立ち上がる。
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世界崩壊まで、残り12時間。
蒼と紅は、
新たな“可能性”へと進化した。




