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第33話『北の氷塔/西の紅祭』

【プロローグ】『二つの支点、二つの絶望』


――世界が、二つに引き裂かれようとしていた。


空に浮かぶ巨大魔法陣は、左右に分かれるように二重構造へと変質していく。


ユウト

「……やっぱりか」


蒼核が、はっきりと二つの反応を示す。


アリア

「支点が……二方向に」


リオ

「距離は?」


ユウト

「最短でも、同時攻略は不可能だ」


重い沈黙。


赤黒い雲の下、二つの“柱”が遠方に立ち上っている。


一つは――

北方、氷原を覆う蒼白の塔。


もう一つは――

西方、沈みゆく王都にそびえる紅黒の祭壇。


アリア

「……王都」


アリアの声が、かすかに震えた。


リオ

「知ってる場所か?」


アリア

「……私の故郷。家族も、まだ……」


ユウト

「……」


蒼白の塔からは、冷たい魔力が吹き荒れ、触れれば命を凍てつかせるほどの圧を放っている。


ユウト

「北の支点は、純粋な術式制御。放置すれば、世界そのものが凍結する」


リオ

「西は?」


ユウト

「生贄式。人が、使われてる」


アリア

「……っ」


アリアは唇を噛みしめる。


アリア

「……ユウト。私、西に行きたい」


リオ

「アリア……」


アリア

「お願い。見捨てられない」


ユウトは、空を仰いだ。


ユウト

「……分かった」


リオ

「おい!?」


ユウト

「分かれよう」


蒼核が、静かに光る。


ユウト

「俺が北へ行く。アリアは西へ。リオ――」


リオ

「俺が、アリアについてく」


アリア

「リオ……」


リオ

「誰か一人で行かせるほど、俺は冷酷じゃねぇ」


ユウト

「……ありがとう」


三人は、短く拳を合わせる。


ユウト

「必ず、戻れ」


アリア

「ユウトも……死なないで」


リオ

「全員、生きて再集合だ」


風が吹く。


二つの支点へ向けて、それぞれが背を向ける。


世界崩壊まで、残り28時間。


別離の時が、来た。

――世界は、二つの戦場に分かれた。



◆北方・蒼白の塔


吹雪が、視界を奪う。


ユウト

「……寒っ。魔力で防いでるのに、骨まで凍る」


蒼核が淡く光り、身体を包む膜が冷気を弾く。


ユウト

「ここが、術式制御の中枢……」


蒼白の塔は、空を突き刺すように聳えていた。


???

『よく来たな、転生者』


塔の影から、青い仮面の男が現れる。


青仮面

『私は**《氷律官ひょうりつかん》セルシウス**。影王様の理を、ここで執行する』


ユウト

「理?世界を凍らせるのがか?」


セルシウス

『無駄な熱を奪うだけだ。感情も、命も――等しくな』


ユウト

「……話にならねぇ」


蒼光剣が、形成される。


ユウト

「止める」


セルシウス

『止められるなら、な』


氷の魔法陣が展開され、塔全体が唸りを上げる。



◆西方・紅黒の祭壇


血の匂いと、祈りの声。


アリア

「……間に合って……」


祭壇の周囲には、捕らえられた人々が縛られていた。


リオ

「数が多すぎる……」


???

『ようこそ、炎姫』


祭壇の中央から、紅黒の衣を纏った女が現れる。


紅祭司

『私は**《紅祀官こうしかん》ヴェスパ》**。あなたの故郷を、完成に導く者』


アリア

「……やめて」


ヴェスパ

『あなたの炎で、この街は“救済”されるのよ』


アリア

「救済なんかじゃない……!」


紅炎が、アリアの周囲に立ち昇る。


リオ

「アリア、俺が人質を守る!」


アリア

「お願い!」



◆北――開戦


セルシウス

『《絶対零域》』


一瞬で、世界が凍結した。


ユウト

「っ……!」


空気が止まり、思考すら鈍る。


ユウト

「……凍らせるだけか……!」


蒼核が強く脈打つ。


ユウト

「俺は……止まらない!!」


無詠唱で、蒼光が爆ぜる。


《ブルーコア・オーバードライブ》


氷を砕き、ユウトは塔へ突進する。


セルシウス

『……その熱、興味深い』



◆西――惨劇の兆し


ヴェスパ

『《紅黒儀式・開幕》』


祭壇が光り、人々の悲鳴が上がる。


アリア

「やめてぇええ!!」


紅炎が爆発し、鎖を焼き切る。


リオ

「逃げろ!!今だ!!」


民衆が散り散りに走る。


ヴェスパ

『あら……素敵。なら、あなた自身を捧げなさい』


アリア

「……私が、止める」


紅炎が、より深い紅へと変わる。



◆同時刻


北の空で、氷と蒼光が激突し――


西の空で、紅炎と黒祀が衝突する。


二つの戦場で、運命が大きく揺れ動く。


世界崩壊まで、残り24時間。

【エピローグ】『凍結と献祭』


――二つの戦場で、同時に異変が起きた。



◆北方・蒼白の塔


氷と蒼光が激しく衝突し、塔の周囲は白い嵐に包まれていた。


セルシウス

『無駄だ。熱は、いずれ必ず冷える』


ユウト

「……じゃあ証明してやる」


蒼核が、限界まで輝く。


ユウト

「俺の熱は――誰かを守るためのものだ!!」


ユウトは氷壁を蹴り、セルシウスへ肉薄する。


セルシウス

『……愚か』


セルシウスの足元で、巨大な氷柱が突き上がる。


――その瞬間。


ピシッ……


蒼核に、細い亀裂が走った。


ユウト

「……!?」


一瞬、力が乱れる。


セルシウス

『……来たか。“限界”だ』


セルシウスの冷気が、ユウトの左腕を凍らせる。


ユウト

「く……ッ!」


蒼核の光が、わずかに弱まる。


セルシウス

『これ以上動けば、核は砕ける』


ユウト

「……それでも」


ユウトは、剣を握り直す。


ユウト

「止まらねぇ……!」


氷の嵐が、二人を包み込んだ。



◆西方・紅黒の祭壇


祭壇は赤黒く脈動し、空が歪む。


ヴェスパ

『献祭は、完成目前……』


アリア

「……間に合う……!」


紅炎が、アリアの背後で翼のように広がる。


リオ

「アリア、無茶するな!!」


アリア

「大丈夫……私、決めたの」


ヴェスパ

『覚悟があるなら――“代償”を払いなさい』


アリア

「……分かってる」


アリアは、一歩、祭壇へ近づく。


リオ

「待て!!」


ヴェスパ

『あなたの炎で、街も、世界も、救われる』


アリア

「……違う」


アリアの声は、静かだった。


アリア

「誰かを犠牲にする救いなんて、私は……いらない」


紅炎が、白く変わり始める。


ヴェスパ

「……!?

 その炎……!」


アリア

「私が燃える。それで全部、終わらせる」


アリアの足元で、儀式陣が眩く輝いた。


リオ

「アリアァァ!!」



◆同時刻


北では――ユウトの蒼核に、確かな“ひび”が広がり。


西では――アリアが、自らを“供物”にしようとしていた。


空の魔法陣が、二人の決断に呼応するように震える。


世界崩壊まで、残り20時間。

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