第3話「新人戦士リリア、スライムを絶対に討つと宣言する」
朝。
初心者の森の入り口は、いつもよりざわついていた。
「聞いた? スライムが上級ラビを一撃で倒したって噂……」
「ありえねぇよ。スライムだぞ?」
「でも監視塔が警戒してるって……」
そんな噂話をよそに、アリアはスライムの俺を連れて森へ歩いていた。
「今日こそは絶対に……魔法成功させる!」
「いやアリア、昨日も言ってたぞそれ」
「今日は成功するの!!」
いつものドタバタ会話。
そこへ――
カツン、と金属の音が響いた。
アリアも俺も振り返る。
そこには、
銀の短剣を腰に下げた少女が立っていた。
栗色の髪をツインテでまとめ、
瞳は強気でキリッとしていて、
鎧は軽装の冒険者仕様。
年齢はアリアと同じくらい。
ただし雰囲気は真逆。
「……あんたたち。そこで何してるの?」
少女は俺を指差す。
「それ。うわさの“強すぎるスライム”?」
アリアが身構えた。
「あなたは……誰?」
少女は胸を張る。
「私は リリア・バーンライト。
冒険者ギルドの新人戦士よ。
そして――」
スッと俺に短剣を向けた。
「今日、このスライムを倒しに来た」
「ちょ、倒しに!? なんで!!?」
アリアが慌てて前に出る。
リリアは眉をひそめた。
「ギルドが警戒してるの。
“スライムのくせに異常成長している個体がいる”って」
「異常って……」
アリアが口ごもる。
俺はぷるぷると前に出た。
「いや、確かに強くなってるけど……倒されに来たわけじゃ――」
「黙りなさい!」
リリアの声が森に響く。
「あなたがどれだけ強くなるかなんて関係ない。
脅威になる可能性があるなら――
冒険者として放置できないの」
アリアが必死で手を広げる。
「ちょっと待って! このスライムは、悪いスライムじゃ――」
「悪いかどうかじゃない!
“未知の成長をするモンスター”は、危険なの!!」
リリアは地を蹴って一気に距離を詰めた。
速い。
昨日の俺では絶対反応できなかっただろう。
短剣が光を弾く。
「覚悟しなさい、スライム!!」
俺も跳ね上がる。
どんっ!!
リリアの短剣と、俺の体当たりがぶつかった。
リリアは数歩後ろへ跳ねた。
「……!! スライムの衝撃じゃない……っ!」
俺も痺れた体を震わせる。
(やっべ……リリア強い……!
これ、逆に負けれるかも……?)
アリアが叫ぶ。
「待ってリリア! 本当にその子は悪くないの!!」
リリアは短剣を構え直す。
「アリア、退いて。
これは冒険者としての任務よ」
「嫌よ! スライムは私の……今日初めての友達なんだから!」
「友達扱いされたの初めてだわ俺……」
リリアは小さく目を見開いた。
「……友達?」
アリアは大きくうなずく。
「そう! このスライムは、私を助けてくれたの!
強いけど、優しいんだから!」
リリアは迷う表情を浮かべたが、すぐに首を振った。
「……なら、なおさら危険だわ。
“強くて優しいモンスター”なんて、物語の悪役にされる典型じゃない」
「うわ、メタいこと言ってる!?」
リリアは決意した顔で短剣を構え直す。
「戦うわ。
ただし……本気で殺すつもりはない。
実力を測るだけ」
アリア「り、リリア……!」
俺「手加減されて負けるって逆に難しいんだよな……!」
三人の緊張が森に満ちる。
だが――
その空気を、森奥からの叫び声が破った。
「だ、誰かぁぁああああ!! た、助けてくれぇぇ!!」
ドサドサッ!!
冒険者らしき若者が飛び出してきた。
その背後から――
巨大な蜂モンスター《ジャイアントホーネット》 が数匹、追ってきた。
リリアが目を見開く。
「まずい、Bランク魔獣……!!」
アリア「む、無理だよあれ! 私の魔法じゃ……!」
俺「……うん。負けれる気もしないわあれは」
リリアは決断した。
「スライム、アリア。
一時休戦よ。協力してあいつら倒すわ!」
俺・アリア「了解!!」
こうして、スライム・アリア・リリア――
奇妙な三人の初共闘が始まるのだった。
(第3話・終)




