第28話『開戦 ― 蒼 vs 影 ―』
【プロローグ】『影王の玉座へ』
──空気が震える。
影王領域・最終区画。
黒い大聖堂のような巨大空間が、三人の前に広がる。
壁一面には無数の“影の手”が張り付き、
天井には逆さの黒い塔が突き刺さっている。
その中央――玉座のような巨大な黒石が鎮座していた。
アリア
「……ここが、影王のいる場所……?」
リオ
「ああ。
この領域の中心、影王の心臓部だ。
この先で、すべてが決まる」
ユウトは胸にそっと手を当てた。
蒼核は静かに脈打ち、温かく光っている。
ユウト
「行くぞ。
ここで全部終わらせる。
アリアを取り戻して、みんなを救って、影王を倒す」
ソウ(蒼核人格)
『うん、ユウト。
僕も一緒に戦うよ。
怖くても、立ち止まらない。
だって“僕ら”は一つだから』
アリア
「ユウト……ソウくん……ありがとう。
私も、絶対に負けない。
もう……誰にも奪わせない」
リオ
「感傷はここまでだ。
影王はまだ本気を出していない。
奴の力は、次元そのものを侵すレベルにある」
黒い大聖堂の奥――
“玉座の影”がわずかに動いた。
影王
『よく来たな、蒼核の持ち主よ……
そして、黄金の器……
反逆者リオよ』
怨嗟と威圧が混じる声。
呼吸しただけで、肺が凍るような圧。
ユウト
「影王……覚悟しろよ。
俺たちがここで終わらせる」
影王
『終わりなど来ぬ。
闇は永劫、光は瞬き。
貴様らはただの“道具”にすぎぬ』
アリア
「道具なんかじゃない!!
私は……私自身が選ぶ!」
影王
『ならば証明してみせよ……
その身の価値を』
ズズズズズ……!!
巨大な黒塔が鳴り、空間が歪む。
影王の気配が、完全に覚醒する。
リオ
「来るぞ!! 構えろ、ユウト、アリア!!」
ユウト
「上等だ――!」
ソウ
『ユウト、気を抜かないで!
奴は次元ごと“消す”力を持ってる!』
蒼核が強く輝き、蒼い光輪がユウトの背後に広がる。
影王
『さあ、英雄を気取る者たちよ……絶望を抱いて死ね』
巨大な戦いの幕が、いま開かれる。
黒い大聖堂に轟音が響き渡る。
影王がその巨躯を玉座からゆっくりと立ち上がると――
世界そのものが震えた。
影王
『小さき者らよ……この地に踏み入れた愚かさを悔いるがよい』
巨大な黒い波動が押し寄せ、床が砕け散る。
アリア
「くっ……すごい圧……!」
リオ
「気を抜くな!
影王は“存在そのものが攻撃”だ!」
ユウト
「だったら――殴ればいいだけだろ!」
ユウトの体から蒼光が立ち上がり、
蒼い魔力の風が回廊を切り裂く。
◇
◆蒼核第二段階、発動
ソウ
『ユウト、行くよ!
“蒼天位”――無詠唱領域展開ッ!』
ユウト
「ああ! まとめて吹き飛ばす!!」
──バシュゥッ!!
ユウトの背後に蒼い魔法陣が無数に浮かび、
詠唱なしで一斉に魔法が解き放たれる。
ユウト
「蒼雷衝撃 (ブレイク・ブルー)!!」
蒼雷が奔り、影王へと襲いかかる。
大聖堂全体が青白い爆光に包まれ――
ドガアアアアアアアアッ!!
アリア
「すごい……こんな威力……!」
リオ
「無詠唱でここまでとは……!
第二段階は伊達じゃないな!」
煙が晴れ――影王が姿を表す。
しかしその体には傷一つない。
影王
『愚か。
力を誇る者ほど、最も弱い』
指をひとつ鳴らす。
パキィィィン!
世界が砕け、
ユウトたちの足元に巨大な空間の裂け目が広がる。
アリア
「空間が……消えていく……!?」
リオ
「奴の能力は“次元消滅”。
触れたものは存在ごと消されるぞ!!」
影王は腕を振り下ろす。
影王
『消えろ』
黒い刃が大地を切り裂き、三人をまとめて飲み込もうと迫る。
ユウト
「させるかよォ!!」
ユウトが飛び込み、蒼盾を展開。
ユウト
「蒼障壁 (ブルーウォール)!!」
ガギャァァァン!!!
黒刃と蒼盾が激突し、空間が歪んで音が消える。
アリア
「ユウト!!」
ユウト
「っ……ぐ、あああああッ!!」
蒼盾は真っ二つに割れる。
リオ
「防御不能……!?」
ソウ
『ユウト、今のままじゃ勝てない!!
“力を重ねる”んだ! アリアと!』
ユウト
「アリア……!」
アリア
「わかってる!!
ユウト、両手を出して!!」
ふたりは手を繋ぎ合わせる。
蒼と金の光が一瞬で混ざり合い――
アリア
「光槍・天穿!!」
ユウト
「蒼雷衝撃・二重奏!!」
二つの魔法が融合し、
巨大な蒼金の槍となって影王へ突き刺さる!!
ズガアアアアアアアアアアアアッ!!!
影王の胸部が吹き飛び、黒い霧が散った。
リオ
「……やったか!!?」
黒霧の中から、低い声が響く。
影王
『良い……実に良い。
その光……その蒼……
この私を“本気にさせた”』
アリア
「まだ……倒れてない……!」
影王の体が再生し、
その背後に“羽”のような巨大な影の刃が広がる。
影王
『礼を言おう。
ここからは余興ではない』
空気が瞬間で凍りつき、
影王の片目が赤く光る。
影王
『封印解除 ― 第三形態』
ユウト
「マジかよ……!!」
ソウ
『ユウト――来るッ!!』
影王が一歩踏み込むと、
世界そのものが黒に飲まれる。
影王
『――死ね』
三人の視界が闇に沈んだ。
【エピローグ】『闇の中で聞こえた声』
――視界が真っ暗だった。
音も、光も、風さえも無い。
ただ果てしない黒に沈む感覚だけが続く。
ユウト
「……どこだ、ここ……?」
声を出したつもりなのに、音が空気に触れない。
自分の声が自分にしか届かない。
ユウト
「アリア! リオ! どこだ!!」
返事は、無い。
世界にただ、ユウトの心臓の鼓動だけが響き続ける。
ドクン――
ドクン――
すると、闇の奥から
別の“鼓動”が重なるように聞こえた。
???
『……泣くなよ、ユウト』
ユウト
「――え?」
闇が揺れ、光がひとすじ落ちてくる。
光の中に、人影が浮かび上がる。
ユウトと同じ顔、同じ声――
だがその瞳は、深い闇色に沈んでいた。
影ユウト
『お前さ……簡単に折れるなよ。
そんな弱さじゃ、誰も救えねぇ』
ユウト
「お前……誰だよ」
影ユウトは笑う。
影ユウト
『俺は“お前が捨てた力”だよ』
ユウト
「捨てた……?」
影ユウト
『あの日――“全部守れなかった日”。
お前は泣いて、怒って、諦めた。
俺はその時に生まれた』
ユウトの背筋が凍る。
影ユウト
『求めろよ。
本気で、すべてを守りたいって思うなら。
俺を受け入れろ』
ユウト
「……受け入れたら、どうなる」
影ユウト
『簡単だ。
お前はもう二度と負けない。
その代わり――』
影ユウトの瞳が赤く染まる。
影ユウト
『“優しさ”は全部捨てろ』
ユウト
「…………ッ」
拳を握りしめる音だけが響く。
ユウト
「俺は……優しさを捨てたら……アリアも、みんなも守れない」
影ユウト
『甘ぇんだよ。
強さは、優しさの上には成り立たねぇ』
ユウト
「違う。
優しいから強くなれるんだ。
力のために優しさを捨てる奴より――
優しさのために力を求める奴の方が……絶対強い!」
影ユウト
『……ほぉ?』
ユウト
「だから俺は、お前を飲み込む!
逃げねぇ。
俺は、俺のままで――最強になる!!」
闇が揺れ、ユウトの体に蒼い光が舞う。
影ユウト
『なら来いよ。
――覚悟を見せろ』
二人のユウトが向き合い、拳を構える。
ユウト
「全部取り戻す。
みんなを助けて、影王も倒す。
そのために――」
ユウト & 影ユウト
『ここで決着だ!!』
世界が激しく砕け、
眩い蒼い光が闇を切り裂いた。




