第25話『影法師核心突入 ― 六つ目の影門』
【プロローグ】『影の王、胎動』
──黒い霧が揺れていた。
どこまでも深い闇の底。
光はなく、音もなく、ただ世界そのものが息を潜めている。
そこに“それ”はいた。
??(影の王)
『……目覚めの時が……近い……』
巨岩のような影がゆっくりと動き、世界が軋む。
その声は低く、重く、闇そのものが言葉を発しているかのようだった。
??
『蒼の光……また騒いでいるようだな……ユウト……』
闇が微かに笑う。
??
『いずれ来る。
この地へ……我が“欠片”を持つ者が』
黒い大地に、ひとつ、ひびが走る。
その裂け目から滲み出るのは、禍々しい黒煙。
影の王
『アリア……その少女の覚醒。
そして、ユウト……貴様の蒼核。
どちらも我が再臨の“鍵”となる』
黒煙が渦を巻き、形を変え、軍勢の影が浮き上がる。
その一体一体が、凶悪な視線を持っていた。
影の王
『さあ……踊れ。
抗え。
足掻け。
そして──絶望して、我に膝をつけ』
闇がすべてを飲み込み、世界が閉じる。
⸻
◆現実世界──
アリア
「……さっきの、揺れ……?」
ユウト
「ただの地震じゃない。
闇の波動だ」
リオ
「影の王が……動き始めたか」
アリア
「ユウト……怖い……?」
ユウト
「正直、めちゃくちゃ怖い。
でも、逃げる気はない。
アリアを守るって決めたし……」
アリア
「……うん」
リオ
「行くぞ。
影法師本隊の核心へ。
“王”はもう目覚めかけている」
青い蒼核と、アリアの黄金の瞳が、静かに光を帯びる。
──影の王 VS 蒼核スライム
◆影の渓谷・最深部
夜よりも黒い霧が渓谷を覆い、空気は冷たく、音すら凍り付く。
リオ
「ここが……影法師本隊の核心、“影門”だ」
アリア
「六つの目が光ってる……なにこれ……?」
巨大な石門の表面に、禍々しい“六つの眼孔”が並んでいる。
それぞれが脈動し、低く唸り声を上げていた。
ユウト(スライム)
「……なんで門に眼があるんだよ……怖すぎだろ……」
リオ
「影法師の最初の王が作り上げた、禁忌の結界だ。
六つの眼が『資格』を読み取り、敵と判断すれば──」
ゴゴゴゴ……ッ!
門の眼孔が一斉にこちらを見据えた。
リオ
「──消える」
ユウト
「えぐすぎる!!」
アリア
「だ、だいじょうぶ……ユウトがいるから……!」
リオ
「……頼むぞ、蒼核の保持者」
アリアの肩が少し震えたのを見て、俺は前へ出た。
⸻
◆六つの影門 vs ユウト(スライム)
六つの眼窟が開き、黒い光線が走る。
ユウト
「くっ! 無詠唱!」
青い蒼膜が展開し、黒光を受け止める。
ドガァァァッ!!
足元の岩が砕ける勢いの衝撃。
無詠唱のシールドでも押される。
ユウト
「やっぱ化け物かよ……!」
リオ
「ユウト、影門の弱点は中央じゃない!
左右の眼が“本体”だ!」
アリア
「じゃあ……私が行く!」
ユウト
「ダメだアリア! 影門の呪波は人間に強すぎる!」
アリア
「でも……ユウトが一人で抱え込むの、もっとイヤ!」
その瞳が揺れていた。
少しだけ切なくて、強い光。
ユウト
「……わかった。
一緒にやろう、アリア」
アリア
「うん!」
⸻
◆攻防
ユウト
「アリア、右の眼に魔法を叩き込め!
俺が道を作る!」
無詠唱!!
青い刃が霧を裂き、黒い光線の角度を逸らす。
アリア
「──光閃!!」
黄金の光線が右側の眼を撃ち抜く。
「ギィィィィッ!!」と石門が悲鳴を上げる。
リオ
「ナイスだ!
ユウト、残りの左眼はお前が!」
ユウト
「任せろ!」
無詠唱!!
蒼光の槍が一直線に射出され、左の眼を貫く。
ドッ……!!
影門の脈動が止まり、すべての眼が暗く沈む。
アリア
「……止まった……?」
リオ
「解除した……これで門を――」
ゴギ……ゴギゴギ……ッ!!
門がゆっくりと開き、奥から黒煙が溢れだした。
ユウト
「……嫌な感じしかしない……」
アリア
「ユウト……手、握っていい?」
ユウト
「もちろん」
アリアがぎゅっとスライムの体表を掴む。
リオ
「覚悟しろ。
影法師“最深域”は、ここからだ」
黒い門の向こうから、禍々しい声が響く。
???
『……ようこそ……蒼核の器よ……』
アリア
「な、なに今の声……?」
ユウト
「……俺たち、狙われてるな」
蒼核が強く脈動し、青光が周囲を照らした。
──そして、三人は影の裂け目へ踏み込んだ。
【エピローグ】『影の胎動、蒼核の共鳴』
◆影門・最深域入り口──
黒い霧が足元を這い、冷たい何かが肌を撫でるような感覚が走る。
アリア
「……ユウト、寒い……。空気が、息しづらい……」
ユウト(スライム)
「大丈夫。俺がそばにいるから」
アリアは不安を隠しきれず、スライムの身体に指をそっと触れた。
リオ
「気を抜くな。ここからは影法師が本気で“殺しに来る”領域だ」
その時だった。
ズ……ズズズ……
闇の奥から、低い振動が走ったかと思うと──
壁のように立ちはだかる闇がひび割れた。
アリア
「ひっ……!? な、なに……!」
ユウト
「来る……ッ!」
ひび割れの奥から、黒い腕のような煙が何十本も伸び、地面や壁に絡みついた。
???
『……蒼核……アリア……リオ……
“揃った”……』
声は、どこからでもない。
世界そのものが喋っているような重さ。
リオ
「……あの声……まさか……!」
ユウト
「影の王……!」
アリア
「っ!!」
黒い影が微かに形を取り始め、それは人型とも獣ともつかない“巨大な影の塊”へと変貌していく。
影の王(声)
『ようこそ……“蒼の器”よ。
そして我が欠片を宿す娘……アリア』
アリア
「私……の中に……?」
影の王(声)
『そう。
少女よ……キサマの覚醒が進めば進むほど……
我の“心臓”が完成する』
アリア
「や……嫌……!!」
ユウト
「ふざけんな……! アリアはお前なんかの道具じゃない!」
影の王(声)
『反逆……?
ならば見せてみよ。
“蒼核”の真価を……』
その一言と共に──
蒼核が、ドクンッ!と大きく脈動した。
ユウト
「ッ──!?」
青炎のような光が漏れ、視界が一瞬白く染まる。
リオ
「ユウト!? 落ち着け! 深層リンクの名残だ、飲まれるな!」
ユウト
「わ、わかってる……けど……蒼核が勝手に……!」
アリア
「ユウト……!!」
彼女が掴んだ瞬間、青光がアリアの腕にも伝わった。
アリア
「──あっ……!」
黄金と蒼の光が交差し、二人の間に不思議な紋様が浮かぶ。
リオ
「……まさか……
蒼核とアリアの“欠片”が共鳴してる……!?」
影の王(声)
『ふふ……よい……
いよいよ“扉”が開く……』
黒霧が渦を巻き、空間が歪む。
ユウト
「クソ……なんで今なんだよ!!」
アリア
「ユウト……手、離さないで……」
ユウト
「離すわけないだろ……!」
青と金の光が強まり、周囲の闇とぶつかって弾けた。
──その瞬間、空間に巨大な“影の渦”が出現した。
影の王(声)
『来るがいい……
真なる“影の座”へ……』
アリア
「嫌……でも、行くしかない……!」
ユウト
「行こう。アリア、リオ。
ここからが本当の戦いだ」
リオ
「ああ……覚悟を決めろ。
影の王との決戦が──始まる」
そして三人は、渦巻く闇の中へ歩みを進めた。




