第24話「蒼核暴走ー俺か"俺"じゃないか」
【プロローグ】「蒼核暴走序章 ― 深淵の囁き」
──暗闇。
俺(ユウト/スライム)は、底なしの海に沈むような感覚の中で目を覚ました。
???
『……ユウト……ユウト……』
どこからともなく、声がする。
俺自身の声に似ていて、だけど少し冷たく、乾いていた。
ユウト(心の声)
「誰だ……? ここは……どこなんだ……?」
???
『ここは“蒼核の深層”。
本来のキミの意識が触れてはいけない場所だよ』
足元はない。
天井もない。
ただ青と黒が混ざった霧が、ゆっくりと渦を巻いている。
???
『キミは強さを望んだ。
アリアを救いたいと思った。
その願いは確かに尊い……でもね──』
霧の中心から、もう一つの“俺”がゆっくりと姿を現した。
蒼ユウト
『力を得るには代償がいる。
“個”という形を捨てる覚悟が、ね』
ユウト
「……お前は……俺の、コピーか?」
蒼ユウト
『コピーじゃない。
可能性のひとつだよ。
怒りと焦りと願いが混ざり合って生まれた……“最短の力の形”』
霧が波打ち、蒼ユウトの身体にひびが入り始める。
蒼ユウト
『ボクを受け入れれば、すぐにでも影法師を滅ぼせる。
アリアを守れる。リオも、全部──守れる』
ユウト
「……その代わりに、“俺は俺じゃなくなる”?」
蒼ユウト
『そう。
でも大丈夫、痛くないよ』
にっこりと笑いながら、その顔はひどく空虚だった。
蒼ユウト
『──さあ選んで。
“英雄になるか”、
それとも“無力なまま”か』
青霧が一斉に揺れ、深層世界が沈み始める。
そして現実世界──
アリア
「ユウト……!!まだ反応がない……ッ!」
リオ
「プロローグは……始まったばかりだ。
ユウトが戻れるかどうかは、本人の意志次第だ」
蒼核の脈動が激しさを増し、空気まで震える。
──ユウト、選べ。
闇か、光か。
英雄か、ただのスライムか。
蒼霧の中心で向かい合う、“俺”と“蒼ユウト”。
蒼ユウト
『ねぇ、気づいてるでしょ?
キミがここに沈んでる間──アリアはずっと泣いてる』
ユウト
「…………!」
蒼ユウト
『守りたいよね?
だったらボクを受け入れればいい。
ボクはキミの怒り、焦り、願望……全部を形にした“最強の形”』
ユウト
「最強……ね。
確かに欲しいさ。
アリアを助ける力なら、何だって……!」
蒼ユウト
『なら──!』
ユウト
「……でも、“アリアに泣かせる俺”は絶対イヤだ」
蒼ユウト
『……ッ』
ユウト
「お前の言う“最強”ってさ……
俺じゃないだろ。
ただの感情の塊が暴れてるだけだ」
蒼ユウトの表情が歪む。
蒼ユウト
『キミは甘い。
甘すぎる!!
そんな生ぬるい決意じゃ、誰も守れないッ!!』
蒼霧が爆ぜ、深層世界が激しく揺れた。
蒼ユウト
『ボクが正しいんだよ!!
キミは弱い! 優しいだけの無力なスライムだ!
だから──ボクが代わりに全部やる!』
ユウト
「……いいや。
俺は弱いし、ビビりで、すぐ泣く。
でもな──
俺がアリアを守る理由は、力なんかじゃない。
“一緒に笑いたい”ただそれだけだッ!!」
その瞬間、蒼霧が切り裂かれ、光が差し込んだ。
蒼ユウト
『ッ……やめろ……!
その感情は……ボクを薄める……!!』
ユウト
「消えなくていい。
お前は俺の一部だ。
怒りも焦りも──全部抱えて、進む」
蒼ユウト
『……え……?』
ユウト
「来いよ。“最強”じゃなくていい。
俺の足りないとこ、少しだけ貸してくれ」
蒼ユウトの身体に走っていたひびが消えていく。
ゆっくりと、穏やかな笑みになる。
蒼ユウト
『……やっぱりさ。
キミが“本物”のユウトだよ』
そして──蒼核を包む光がひとつに溶け合った。
蒼ユウト
『行こっか。
アリアが待ってる』
ユウト
「ああ。帰るぞ、相棒」
光が弾け、深層世界が消滅した。
⸻
◆現実世界──
青い光が収まり、崩れた会場に静寂が戻る。
アリア
「……ユウト……?」
俺の身体はゆっくりと形を取り戻し、
最後に“いつものスライム姿”で跳ねた。
ユウト
「……ただいま」
アリア
「っ!! ユウトぉぉぉ!!」
アリアが抱きしめるように覆いかぶさる。
スライムなので埋もれた。
ユウト
「苦しい苦しい苦しいッ!!
溶ける溶ける溶け──あ、ちょっと気持ちいい……」
リオ
「……戻ったか。
蒼核深層リンクを耐え切るとは。
まったく、とんでもない奴だな」
ユウト
「ごめん……心配かけた」
アリア
「ほんとだよ……ほんとに……!!」
その肩が震えているのを見て、胸が痛くなる。
ユウト
「これからは──もう迷わない。
俺は俺のまま、強くなる」
リオ
「決意は本物らしいな。
なら……次だ」
ユウト
「次?」
リオ
「影法師本隊が、アリアの覚醒を狙って動いた。
ユウト、お前も聞こえただろ?
“影の王”が目覚めかけている」
アリア
「……っ!」
ユウト
「行くぞ。
アリア、リオ。
ここから反撃開始だ」
アリア
「……うん!」
リオ
「覚悟を見せろ。
次はもう、後ろに引けないぞ」
蒼核が、静かに青く脈打った。
暴走ではない。
“意志を持った光”として。




