第23話「蒼核の試練と影王 vs 俺スライム」
【プロローグ】「蒼核の呼び声と影王の降臨」
蒼い光が洞窟いっぱいに広がり、
アリアは思わず腕で目を覆った。
アリア「スライム!! 返事してッ!!」
俺
(だ、だめだ……意識が……引っ張られる……!)
蒼核が激しく脈動し、
俺の視界が白く染まっていく。
リオが叫ぶ。
リオ「アリア! 離れろ!
その光は……“呼び出し式”だ!!」
アリア
「嫌!! スライムを置いてなんて行けない!!」
「スライム!! 私の声、聞こえる!? ここにいるよ!!」
しかしアリアの手が届くより早く、
俺の体は“蒼い光の渦”へと吸い込まれた。
アリアの叫びが遠ざかる。
⸻
■蒼い虚空──“蒼核界”
気づくと俺は、
見たことのない空間に立っていた。
空も地面も存在せず、
ただ蒼い光がゆらめく虚無の世界。
そこに――影が立っていた。
巨大な人影。
まるで黒い王のような輪郭。
だが、その胸には俺と同じ“蒼核”が脈動している。
影王「ようやく……目覚めたな、蒼核の同胞よ。」
俺
(……誰だ……お前……!?)
影王は、完全な無表情で言う。
影王「名など不要。
だが……お前は覚えていないだろう。
“スライムである以前の姿”を。」
俺
(…………え?)
影王は手を伸ばすと、
蒼核が強く脈動した。
影王「来い。
お前が本来立つべき場所は……こちら側だ。」
俺
(“本来”……? 俺の……本当の姿……?)
影王の背後で、蒼い王座がゆっくり現れる。
⸻
■現実世界では…
アリアが光の残滓の中で泣き叫んでいた。
アリア「返してよ!!
スライムは……スライムは、私の……!!」
リオは震える拳を握りしめる。
リオ(……最悪の事態だ。
“蒼核の主”に接触されたら……
スライムはもう、普通には戻れない……)
屍姫の冷たい声が洞窟に響く。
屍姫「蒼核体、離脱完了。
『影王』――目覚めの段階へ移行。」
アリアが振り返って叫ぶ。
アリア「影王って……何!? スライムをどこへ連れて行ったの!?
返しなさいよ!!」
屍姫は一言だけ告げる。
屍姫「――“蒼核の帰巣”。」
アリア
「帰巣……? まさか……!」
屍姫
「お前はまだ気付いていない。
スライムは、出会った時から――“影王の欠片”だった。」
アリアの顔が凍りつく。
リオは剣を構えながら低く呟く。
リオ「アリア……落ち着け。
これからが……地獄の始まりだ。」
⸻
■蒼核界にて
影王が王座に座りながら俺を見つめる。
影王「……戻るのか?
“魔女”のもとへ。」
俺
(アリア……)
影王「あの魔女は、いずれお前を壊す。
スライムの器では、お前の力を耐えきれぬ。」
俺
(それでも……!!)
影王の瞳がわずかに揺れる。
影王「……ならば、証明してみせよ。
“選んだ世界”を。」
蒼い虚空が震え、戦いの気配が満ちる。
蒼く染まった虚無空間――
“蒼核界”に立つ影王と俺。
影王は王座に座りながら、
まるで俺の動きを観察するように沈黙していた。
俺
(戻らなきゃ……アリアのところへ……
でも、どうすれば……?)
影王が低く、空間全体に響く声で言う。
影王「迷いが多い。
スライムの器では当然だが……
本来のお前は、そんな存在ではなかった。」
俺
(“本来の俺”?)
影王が手を上げると、
蒼い空間に一つの“影”が浮かび上がった。
それは――
アリアが泣きながら俺を抱きしめていた“記憶”。
アリア(幻影)『スライム……お願い、戻ってきて……!』
俺
(アリア……!)
影王は、俺の反応を冷静に見つめた。
影王「その魔女へ執着する理由は何だ?」
俺
(執着じゃねえ……!
俺は、アリアを――)
影王が重なるように言葉を放つ。
影王「“守りたい”――か。」
俺
(……!)
影王「だがそれは“弱さ”だ。
お前の蒼核は、魔女の感情に“依存”している。
やがては制御不能になり、暴走し……
魔女ごと世界を壊す。」
俺
(……そんな未来、絶対に認めない!)
影王も静かに立ち上がった。
⸻
■試練開始:蒼核の真価を問う戦い
影王の足元から、蒼い雷が奔り出す。
影王「ならば証明しろ。
“スライム”という不完全な器のまま、
己の意志だけで立ち向かえることを。」
俺
(来る……!)
影王が腕を振ると、
巨大な蒼影の刃が虚空から生成され、
俺へと振り下ろされた。
ズドォォン!!
衝撃が空間全体に走り、
俺の体は弾き飛ばされる。
俺
(ぐっ……! だけど、負けねえ!!)
蒼核が光る。
俺の体から蒼い魔力がほとばしる。
俺:無詠唱魔法!!
スライムの体から高圧の水弾を放つ。
影王は表情一つ変えず、
指一本でその魔法を弾いた。
影王「未熟。」
俺
(くっそ……! なら――無詠唱連射だ!!)
《アクア・スラッシュ》
《アクア・ボルト》
《アクア・バインド》
一気に三つの魔法を展開する。
影王「……同時発動。
スライムの器では破綻して当然の術式だが……
お前は耐えている。奇妙なことだ。」
影王の影がうねり、
俺の全魔法を飲み込み、消し去った。
⸻
■影王の問い
影王が歩み寄り、問いかける。
影王「お前が守りたいのは魔女だけか?」
俺
(!?)
影王
「魔女は弱い。泣き、怯え、揺れ動く。
そんな存在に引きずられて――
お前は“己の核”を失う。」
俺
(そんなこと言ってねぇ!!)
影王
「ならば言え。
お前にとって“アリア”とは何だ。
ただの使命か、恩返しか、依存か。」
俺
(……ちがう!!)
影王の瞳が鋭く光る。
影王「では言葉にしてみせろ。」
俺は蒼核を震わせ、全力で叫ぶように心で叫ぶ。
俺
『アリアは……俺を“スライム”でも受け入れてくれた唯一の存在だ!!
利用しない! 怖がらない!
ただ一緒にいてくれたんだ!!
守りたいのは……“大切だから”だ!!!』
影王がわずかに目を見開く。
影王「……“大切”。
愚かで、脆く、壊れやすい言葉だ。」
俺
(でも――それが俺の全部なんだ!!)
影王の影が大きく揺れ、
空間がまるで震えるように波打つ。
⸻
■蒼核共鳴・第一段階
影王
「……いいだろう。」
影王の胸の蒼核が強烈に光り、
俺の蒼核も同じタイミングで共鳴した。
ドクン……ドクン……ドクン……!!!
俺
(う、うわっ……!?
体が……熱い……!!)
影王が宣告する。
影王「お前に資格があるかどうか──
これから最終段階を始める。」
虚空が砕け、青い雷が嵐のように広がる。
影王「耐えきれれば、お前は“蒼核の担い手”として独立する。
耐えられなければ……アリアの記憶ごと消滅する。」
俺
(絶対に……消えねぇ!!
アリアのもとへ……帰るんだ!!!)
光が爆発する。
【エピローグ】「蒼核、深淵へ」
──静寂。
崩れた闘技場の瓦礫の中心で、俺は一人、青白い光を漏らしながら震えていた。
アリア
「ユウト……?ねぇ、返事して……!」
リオ
「……違う。これは“返事できない”んじゃない。“応えていない”んだ」
アリア
「どういう意味よ……そんなわけ──」
リオ
「蒼核が……深層リンクを始めた。
自律進化の前兆だ」
アリア
「進化なら良いことでしょ!?なんでそんな顔してるの?」
リオ
「ユウトの蒼核は特別だ。
あれは力を求めるほど、“本来の自分”を手放す。
……行き過ぎれば、人格が消える」
アリア
「っ──!?」
アリアは崩れた石を踏みしめ、必死で俺の方へ手を伸ばす。
アリア
「ダメ……そんなの、ダメよ……!
ユウト、やっと戻ってきてくれたのに!
私……また失うなんて、絶対イヤ!!」
しかし──
俺の身体を包む青光は、彼女の手が触れるより先に微弱な衝撃波を放ち、アリアを弾いた。
アリア
「くっ……! ユウト!!」
リオ
「止められるのは……“彼自身”だけだ」
アリア
「……“自分を見失わないで”、ユウト……お願い……」
瓦礫の上、青い光はますます強く脈動し、
その中心で俺の意識は──深い闇へ沈んでいった。
最後に聞こえたのは、アリアの震える声。
アリア
「帰ってきて……ユウト……」
青光、爆ぜる。
蒼核の深淵が、ついに口を開いた。




