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第15話「無詠唱のスライム」

塔の最上階。

白い光が渦巻き、アリアが“器化”されていく。


アリア「……っ……ス、ライム……来ないで……!」


リオ「動揺しても無駄ですよ。

 もうあなたは“白”になるだけです」


その瞬間――

階段を破壊しながら、青い光の塊が飛び込んできた。


スライム「アリアァァァァ!!」


蒼い尾を引くスライムが床に滑り込み、衝撃波を起こす。


アリア「……来た……!」


リオ「……随分と派手に来ましたね」


俺「アリア、すぐ助ける!!」


アリア「来ないで……!

 リオちゃんの結界が……私を……!」


リオは仮面を指でなぞる。


リオ「スライムさん。

 あなたの“青核”をいただきに来ただけです。

 抵抗は……あまり意味がありませんよ?」


俺「じゃあ見せてやるよ。

 意味があるってことを!!」


蒼光が俺の全身から溢れる。


バチッ――!!


塔の空気が震えた。


リオの瞳が、初めてわずかに驚く。


リオ「……その魔力……何をしたんです?」


俺「何って――」


俺の身体が変形し、青核が露出する。


核が脈打つ。


青い魔法陣が空中に“勝手に”生まれた。


俺「詠唱しなくても魔法が出るようになっただけだ!!」


リオ「無詠唱……!?

 スライムが……そんな……!」


俺「《蒼閃槍そうせんそう》!!!」


青い槍の雨が、詠唱なしで一気に降り注ぐ。


影兵たち「――ッ!!?」


影兵は複数まとめて光に貫かれ、霧のように消えた。


リオ「……詠唱も魔力集中も、一切なし……

 馬鹿げていますね。

 あなた、魔族でも人でも……“ただのスライム”でもない」


俺「俺は俺だよ!!

 アリアを守る――ただそれだけの存在だ!!」


アリアの結界が光り、アリアが叫ぶ。


アリア「スライム……もう無理……逃げて……

 私……もう……!」


俺「逃げない!!

 何度でも言う!助けに来た!」


リオは結界の奥で、アリアの顎に手を添えた。


リオ「アリアさん。

 彼はもうあなたの敵ですよ。

 魔法をぶつければ、きっと優しい彼は壊れてくれます」


アリア「……やめて……」


リオ「ほら、“言えばいい”。

 あなたが彼を拒めば……彼は心を失う」


アリアの瞳が、白に濁り始める。


アリア「スライム……お願い……

 来ないで……傷つかないで……

 これ以上……私を困らせないで……!」


俺の胸が締め付けられる。


俺「……!」


リオ「ほら。

 “拒絶”されましたよ?」


俺「違う!アリアの本心じゃない!!」


核が激しく脈動する。


俺「アリアの心は……白になんか染まってない!!」


蒼火が俺の体を包む。


リオの表情がついに歪む。


リオ「……何ですその光は……!」


俺「俺の新しい力――

 “心に応える魔法”だよ!」


蒼い光が部屋を満たす。


アリア「……あ……青い……光……」


青い光がアリアの胸の奥に届いた瞬間――

白い結界がピシリと亀裂を入れた。


リオ「……馬鹿な……!?

 外部から心に干渉している!?

 そんな魔法は存在しない!!」


俺「――詠唱しなきゃ存在しない“はず”だっただけだろ?」


無詠唱の魔法陣が三つ重なり、塔を揺らすほどの蒼光が弾ける。


「《蒼心解放アリア・リレイズ》!!!!」


結界が――砕けた。


アリアが床に崩れ落ち、呼吸が戻る。


アリア「……スライム……来てくれて……ありがとう……」


俺「アリア!」


アリアが手を伸ばし、俺をそっと抱き寄せる。


リオはその光景を見て、震える声で呟いた。


リオ「……どうして……

 どうして、壊れないんですか……

 器にならないんですか……アリアさん……」


仮面の下で、リオの手が震えていた。


リオ「あなたたち……どうしてそんなに“自由”なんです……!」


青い光と白い光が交錯する中、

アリアはゆっくりとスライムを抱きしめた。


アリア「……スライム。私……戻ってくるから……

 絶対に……置いていかないで……」


その瞬間、リオの瞳が真っ白に染まり――


リオ「なら……壊すしかありませんね」


塔全体が白光に包まれた。


(第15話・終)

【エピローグ⑪】

白光が収まったあと、塔の最上階は

まるで世界が一瞬止まったかのように静まり返っていた。


アリアは床に膝をつき、肩で息をしていた。


アリア「……スライム……大丈夫……?」


スライム「ああ……アリアこそ、痛くない?」


アリアは胸元に手を当て、小さく震える声で言う。


アリア「……まだ少し苦しいけど……

 あなたの声、ちゃんと聞こえたよ……」


俺「……よかった」


二人の間に、ほのかな蒼い光が揺れる。


その光が――

白面の少女リオの足元にも落ちた。


リオはまだ仮面をつけたまま、

ただ一点を見つめるように立ち尽くしていた。


アリア「リオ……ちゃん……?」


リオはアリアを見る。

その瞳は――怒りでも憎しみでもなく、


“理解できない”

そんな色をしていた。


リオ「……アリアさん。

 どうして……壊れなかったのですか?」


アリア「え……?」


リオ「器は……空っぽでなければ完成しない。

 なのにあなた……」


リオの手が震える。


リオ「“心”なんて……ただのノイズなのに……

 どうしてあなたは……消さなかったんです……?」


アリアは苦しげに目を伏せる。


アリア「……わからない……

 でも……

 スライムが来てくれるって……

 信じてたから……」


その言葉を聞いた瞬間。


リオの表情が、ひび割れるように変わった。


リオ「信じて……?

 そんなもの……

 弱さの象徴でしかないのに……!」


俺が一歩進むと、リオは怯えるように一歩下がった。


俺「リオ……お前、ほんとはさ……

 アリアのこと……ただの器だと思ってないだろ」


リオ「……っ!」


仮面の下がぴくりと動いた。


俺「アリアが泣いたとき、迷ったよな。

 壊すって言いながら……手が震えてた」


アリア「リオちゃん……あなた……」


リオは両手で仮面をぎゅっと掴む。


リオ「……うるさい……

 わたしは……器を作るだけ……

 だから……」


声が弱々しく震えた。


リオ「心なんて……

 あってはいけないのに……」


アリアは結界の破片の中、そっと手を伸ばそうとする。


アリア「リオちゃん。

 あなたも苦しいんだね……?」


リオ「来ないで!」


アリア「でも……」


リオ「来ないで……来ないで……来ないで!!」


その瞬間――

塔の床に白い魔法陣が轟音とともに出現した。


蒼い光と白い光が交差する。


リオは一瞬だけ、アリアを見た。


その瞳は――悲しみを宿した子どものようだった。


リオ「……アリアさん。

 どうして“あなた”でいられるんですか……」


アリア「え……?」


リオ「……その答え、いつか……教えてください」


次の瞬間、

リオの足元の魔法陣が強烈に光り、

身体が虚空に吸い込まれるように消えた。


アリア「リオちゃん!!」


手は届かない。

白光だけが残された。


スライム

「……逃げられたか」


アリアはしばらく沈黙した後、

ぽつりと呟いた。


アリア「……リオちゃん……悲しそうだった」


俺「……ああ」


アリアは胸に手を当てる。


アリア「私……助けたい……

 あの子、きっと……本当は……」


蒼光がアリアと俺を包んだ。


その光はもう、誰にも奪えない。


俺(心の声)

「リオ……次はちゃんと向き合う。

 アリアと一緒に……お前も救う」


塔の外で風が吹き、

長い夜が静かに終わりを告げた。


(第15話エピローグ・完)

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