第13話「アリア奪還━━白面との激突」
塔の最上階へ続く螺旋階段。
魔力の衝突音が響き渡る。
リオ「……しつこいですね。
アリアさんはもう……渡しません」
白い仮面のリオは無表情のまま、
三方向へ同時に影の刃を放つ。
リリア「くっ! 速い……!
同時に三発なんておかしいでしょ!」
グラン「多重詠唱か……!
だが、止まれない!!」
俺は青い光をまとい、
影の刃をギリギリで避けながら、階段を駆け上がる。
俺「アリアは……俺の大事な仲間だ!!
返してもらう!!」
リオ「……仲間?
あの子は……あなたなんかより、私を求めていますよ」
俺「嘘だ!!」
リオの動きが一瞬止まった。
リオ「……嘘ではありません。
アリアさんは今、泣きながら私の名前を呼んでいます」
胸がえぐれるような痛みが走る。
俺「……アリア……」
リリア「だまされるな!
リオの言葉は全部“洗脳のための誘導”よ!」
グラン「スライム、行け!! お前が行かなきゃ意味がない!」
俺「……!!」
スライムの体が青く光り、体積がわずかに増す。
リオはその変化を見て、初めてわずかな興味を示した。
リオ「……ふーん。
あなたも……壊れかけているんですね?」
俺「違う……!
俺は……守りたいんだ!!」
リオ「では見せてください。
“守る力”とやらを」
影の刃が十本、空中に浮かんだ。
リリア「多すぎる……! 避けきれない!!」
俺「いいや……避けるんじゃない……!」
俺は一気に体を膨張させる。
リオ「……!?
膨張魔法……? いえ……これは……身体拡張……」
俺「全部……受け止める!!」
十本の影刃が全方向から迫る。
リリア「無茶だよ!!」
グラン「やめろスライム!!」
俺「アリアが……泣いてるんだ……!!
守れるなら……どうなってもいい!!」
ドガァァァァァァンッ!!
影の刃が、スライムの体に突き刺さる――
しかし。
俺は、崩れない。
リオ「……なに……?
スライムのくせに……魔法耐性が……高すぎる……?」
俺「アリアを守る気持ちが……
俺の“スキル”なんだよ!!」
リオ「……スキル……?」
俺「【共鳴防壁】!!
仲間への想いを強さに変えるスキルだ!!」
リオの仮面がわずかに揺れた。
リオ「……そんな、感情系スキル……普通、スライムが……」
俺「普通じゃないんだよ、俺は!!
アリアを助けるために転生したんだ!!」
リオが後退する。
リオ「……まさか……あなた……
“器”になりかけている……?」
俺「関係ない!
どけ!! リオ!!」
青い光に包まれた俺は、階段を一気に駆け上がる。
リリア「スライム!! 最上階はすぐそこ!」
グラン「アリアの魔力反応が上から聞こえる!!」
俺「アリア!!!
今行く!!!」
白い扉が目の前に迫る。
俺は最後の力を込めて、扉に体当たりした。
ドォォォォン!!!
扉が砕け散り――
光が差し込む部屋の中。
その中央に――
アリア「……スライム……?」
涙で濡れた瞳のアリアが、俺を見つめていた。
俺「アリア……!!」
次の瞬間。
リオの冷たい声が背後から響いた。
リオ「――アリアさん。
逃げちゃダメですよ?」
アリア「っ……!!」
救出戦クライマックスは、ここから始まる。
(第13話・終)
【エピローグ⑨】
扉が砕けたあと。
光の中に立つアリアは、ただ震えていた。
その目には――
恐怖とも、安堵ともつかない混じった揺らぎ。
アリア「す、スライム……?」
俺「アリア……迎えに来たよ」
ゆっくり近づこうとした瞬間、
アリアの肩がびくん、と跳ねる。
アリア「ち、近づかないで……!」
俺「っ……!」
心臓を掴まれたような痛みが走る。
背後で、白面リオが静かに微笑んだ。
リオ「ほら……言ったでしょう。
アリアさんは、もうあなたを“怖がって”いるんです」
アリア「わ、わからない……
なんで胸が……苦しくて……」
リオはアリアの耳元で囁く。
リオ「大丈夫……苦しむ理由は全部、あのスライムですよ。
あなたを暴走させたのも……泣かせたのも……」
アリア「やめて……そんな言い方……」
アリアは両手で頭を抱える。
俺はただ、彼女の前で動けなかった。
俺
「アリア……俺は、君を傷つけたくて来たんじゃない……
助けたいだけだったんだ……!」
アリア「……っ……わかる……でも……
リオちゃんの声が……頭に響いて……」
リオはアリアの肩を優しく抱く。
リオ「怖いでしょう?
ほら、私だけを見ればいいんですよ」
アリアの瞳が、ゆっくりと白く濁る。
リオの洗脳が深く染み込んでいく。
俺「やめろ、リオ!!」
スライムの体が光り、青炎のような魔力が溢れる。
リオの動きが一瞬止まった。
リオ「……その力……
アリアさんではなく“あなた”が覚醒している……?」
俺「アリアを傷つけるやつは……絶対に許さない……!」
リオ「ふふ……面白くなってきましたね。
でも――」
リオがアリアを抱き寄せ、白い結界を展開する。
リオ「アリアさんは、まだ返しません」
アリア「……スライム……やだ……
助けてって言いたいのに……声が……出ない……」
アリアの頬を一筋の涙が伝う。
俺「アリア……!」
アリア「ごめんね……
わたし……動けない……」
その瞬間。
塔全体が、低く、軋むような音を立てた。
リオ「……来ましたね。
影法師の“本隊”が、あなたたちを迎えに」
俺「……!」
リオ「これで、救出なんて……もう不可能ですよ?」
アリアは涙を流しながら、かすかに俺へ手を伸ばす。
アリア「……スライム……」
その手は――
リオの結界によって遮られ、届かなかった。
白い光がアリアを包み、
リオ「次に会うとき、アリアさんは――
“完全な器”になっていますよ」
消えた。
アリアも、リオも。
塔の奥へ、白い光の中へ。
俺「……アリア……!!!」
届きそうで届かない手。
仲間を失う痛み。
力がまだ足りない現実。
俺(心の声)
「助けたい……守りたい……
でも……俺は……まだ弱いんだ……!」
胸の奥で、青いコアが脈打つ。
その鼓動は――
これまでよりずっと強く、熱く、鋭かった。
(第13話エピローグ・完)




