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SF作家のアキバ事件簿238 ミユリのブログ 妄想と偏見

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第238話「ミユリのブログ 妄想と偏見」。さて、今回もミレニアムな頃の秋葉原が舞台です。ヒロインのキスに隠された謎解きの鍵w


腐女子のスーパーヒロイン化が止まらない秋葉原で、キスがきっかけでフラッシュバックを起こすヒロインが続出。ヒロイン化の謎を解く鍵も記憶の中に?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ワープする意識


御屋敷(メイドバー)のバックヤード。メイド服を脱ぐ女子に着る女子。同じ女子なら脱がなきゃ…えっと閑話休題。とにかくミユリさんは下着姿でブログを描いてる。


"…10月9日。今、私の心の中で不思議な感覚が芽生えてる。カラダの中から変身して逝く感じ。一般人(パンピー)のママでいたいと思う反面、身も心もスーパーヒロインとして"覚醒"したいと逝う気持ちが、自分で驚くほど強くなっている。逝く先には危険が待っているとわかっているのに、どうやら抵抗出来そうにないわ…"


シャワールームの扉が開いて、蒸気と一緒に半裸の女子がバスタオルを巻きながら現れる。ソコヘ…


「美味しそうなイチゴょ!」

「え?」

「あ、イヤン!」


突然振り向いたミユリさんとぶつかって、ボール一杯に入ったイチゴを床にバラ蒔いてしまうスピア。


因みに2人共ランジェリー姿。


「ミユリ姉様!何をぼーっとしてるの?」

「え。別に…ごめんなさい」

「一緒に拾って。デザート用ナンだから」←


ボール片手に床に転がるイチゴを拾い始めるスピアだが、ふとイタズラっ子ポイ笑顔を浮かべ指差す。


「姉様。お待ちかねの御主人様ょ」


御帰宅したのは…僕だ。僕は、御屋敷のヲーナーなのでバックヤードと言えども出入りが自由なのだ。


「テリィたん。このイチゴ、あげる。甘いわよ」


僕にイチゴを1粒渡して歩き去るスピア。イチゴを拾うミユリさんに視線を合わせて、僕もしゃがむ。


「ミユリさん、おはよー。イチゴをコボしたのは僕のせいかな?」

「いいえ。でも、どうしてそう思うの?」

「別に。ただ驚かせたし」


2人で床に散らばるイチゴを拾う。


「テリィ様。こんなのいつものコトですから。キレイなイチゴを補充してこなくちゃ」

「あ。ミユリさん、コッチの角にも1つあったょ」

「ありがとうございます」


水洗いをしにキッチンに入るミユリさん。肩越しに振り返り、僕へ挑発スルように熱い視線をトバす。


「何か御用ですか?」

「実は…"覚醒"したばかりのスーパーヒロインに聞きたいコトがあるんだ」

「何を聞きたいの?」


明らかに何かを期待してる表情。


「僕のコト、怒ってる?」

「いいえ。全然」

「良かった」


余裕で答えるミユリさん。


「でも、テリィ様。なぜソンなコトを聞くの?」

「"時空コンベンション"の夜、僕は酔っ払ってバカなコトをしたからさ。アレは…」

「酔っている時は、誰でもバカなコトをスルものだし…熱烈なキスとか」


探るような目つきで僕を見る。


「これからも今まで通り"推し"でいてくれる?」

「もちろん。テリィ様こそズッとTO(トップヲタク)でいてくださいますか?」

「そりゃモチロン…」


次の瞬間、ミユリさんの唇が僕の唇に推しつけられ僕は僕でミユリさんをカウチに推し倒す。濡れた両手をバンザイさせたママ僕の唇を貪るミユリさんw


「いけません、テリィ様。そんな…」


身をクネらせ喘ぐミユリさん。僕がパニエに手をかけた瞬間…彼女の意識は銀河の真ん中へとワープw


星々が生まれ、砕け散るスターメーカーの世界…


第2章 スターメーカーの彼方


「姉様。さっきキッチンからトンでもナイ声が…」

「スピア!スゴいコトが起きたの。自分でもあんな声をあげちゃうなんて…生まれて初めて」

「テリィたんって、そんなスゴかったっけ?」


首を傾げるスピア。彼女は僕の元カノだw


「違うのよ。テクの話じゃなくて」

「誰もテリィたんのテクの話ナンかしてない。そうじゃなくて何なの?」

「だから…私、イッちゃったの」


そりゃバカテクだw


「ちょい待って。姉様、ソレってキスよりもスゴいコトしたってワケ?」

「何ょカマトトぶって…でも、違うったら」

「そうょね。たった5分だったし」


あのな。今度、秒でイカせてやる(無理だけど)!


「スピアったら何を考えてるの?あのね。とても不思議なモノが見えたの。スピアは、マリレと百合した時に何かが見えたコトは?」

「その不思議なモノって何なの?」

「スターメーカー」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"マチガイダ・サンドウィッチズ"でエアリとマリレのメイド2人組。休憩中だ。


「姉様、テリィたんとキスしたら銀河の中心が見えたンだって。スターバックスが」

「何ソレ?でも、あの2人だったらアリ得るカモ」

「あのね。スターメーカーだから。でも、ソレじゃキスよりスゴいコトしたらどうなっちゃうの?世界が爆発?」

「やらなければ欲求不満で世界が爆発とか」


ケラケラ笑い転げる2人。


「ねぇマリレ。今まで貴女がスピアと百合して何か見えたコトある?」

「えっへん。ヲタクが経験スルほどのコトなら全て経験済みょ。でも、いつも私ばっかり経験豊富だと思われるのが嫌だから黙ってただけ」

「マリレ。貴女ってマジ負けず嫌いなのね」


お見通しって顔のエアリ。


「あら。何で?妖精の勘?」

「いいえ。単にマリレが私に隠しゴトなんか出来るハズがナイでしょ?」

「ソレもそーね」


互いに指差し合って笑う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夕刻。トラベラーズビクス(僕がヲーナーの御屋敷)開店。メイド長のミユリさんはカウンターの中だ。僕は背後から近づく。


「…ミユリさん。水素、酸素、炭素。この3大元素はビックバンの直後に誕生したンだ。この3大元素により全ての生命体が形成されてる。未だその原因は解明されてナイ。でも、そのように考えられてるのさ。コレは個人的な考えだけど、もし仮に異なる時空に生命が存在スルとして、その生命体は、僕達ヲタクと大して違いの無いカラダをしてルンじゃナイかな。この広漠無辺な時空の何処かに、ヲタクとそっくりの生命体が存在する。ソレはアキバと逝う孤独な時空に住むヲタクの希望的観測に過ぎない…」


…なんて話をしながら、僕は落とし物を拾うフリしてミユリさんに…触ってる。目を瞑るミユリさん。


「…やん」


ミユリさんは大きくのけ反り突然大きな声を出す。メイド達が振り返る。ミユリさんの目はトロンだ。


「メイド長!大丈夫ですか?」

「…ってかテリィたん!姉様に何したの?」

「スピア。誤解だ。話せばワカル」


ワカラナイ。スピアに見つかりオズオズ立ち上がるや御屋敷全メイドの非難視線の十字砲火を浴びる。


「ミユリさん。後でバックヤードで」


耳元でささやく。ガクガクうなずくミユリさんw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あぁマリレ…マリレ!」


ココでも大きくのけ反るメイドがいる。スピアだ。マチガイダ・サンドウィッチズの…レストルーム(トイレ)


「ねぇスピア…聞いた?」

「…姉様とテリィたんがキスしたら何か見えたらしいのょ。同じスーパーヒロインとして、貴女、どう思う?…うっ」

「あの2人は、新境地を切り開いたのかもね。ああっ…ウソのような話だわ」


激しく(むさぼ)り合う2人のメイド。


「あり得ないわ!何であの2人だけ…いやん」


何故か慌てて熱いキスw


「素敵ょマリレ。大好きよ」

「あぁ快感(ハイボルテージキープアウト)だわ」

「イヤだわ…ちょっと」


荒い息をしながらマリレを推し返すマリレ。


「何?どーしたの?」

「…し、信じられナイけど」

「何か見えたの?」


意気込むマリレ。


「見えたわ。えっと、たくさんの星が宇宙を漂ってた!土星の輪の向こうに太陽が沈んだわ。貴女は?何か見えた?」

「モ、モチロン見えたわ。幼女の貴女が一生懸命、赤いスニーカーの紐を結ぼうとして」

「えっ。マジ?赤いスニーカー?」


パッと顔を輝かすスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


誰だ?ミユリさん?幼女だった頃のミユリさん?ママの目を盗んで化粧、お洒落な帽子を被りポーズ…


「いけません。見ないで…」


僕のキスを真正面から受け止め、激しく喘ぎながら懇願するミユリさん。その言葉を塞ぐようにキスw


「な、何か見えました…か?」

「別に」←

「抱きしめて!もっと強く」


次の瞬間、全ては白日の下に(さら)されて…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「何?その"ヒロピンセンター"って?」

「先月、地下アイドル通りに出来たコンカフェだと思うけど…確かAV系だけど?」

「そこのトイレでミユリ姉様とテリィたんが?」


えっと話すと長いけど万世橋(アキバポリス)に連行された僕とミユリさんを引き取りに来たエアリ&マリレの会話だw


「ラギィ警部!どーゆーコトなの?ミユリ姉様とテリィたんが、その、あの、そのトイレに2人で入ったから私達を呼んだワケ?」

「あのね、エアリ。テリィたん達は、そのトイレで、その、あの、ちょっとした性的な冒険に及んだとの通報があったの。警察としては通報を無視出来ズ…とにかく2人に直接話を聞いてみましょ」

「マジ?」


うなだれた僕とミユリさんが、その、あの、連行されてくる。すみません。ホント、出来心ナンです…


「さぁお2人さん。申し開きの準備は出来た?」

「YES。ラギィ警部、貴官は誤解している」

「そーだったの。で、誤解とは?」


ウンザリ顔のラギィ。実は、彼女は僕の新橋時代の元カノだ。あの頃、彼女は"新橋鮫"と呼ばれて…


「とにかく、僕とミユリさんは確かに一緒に入ったが、ソレは欧米じゃよくアルことナンだ…」

「海外ドラマの見過ぎ!で、テリィたん達の入った"個室"からは、海外ドラマをマネた韓流ドラマも真っ青のずいぶん妙な喘ぎ声が聞こえてきたと言うンだけど、ずいぶん派手に何かをやってたみたいね」

「ラギィ警部。もう結構ょ」


エアリが割って入る。


「エアリ。まさか私達を信じてくれないの?」

「じゃミユリ姉様達は何をしてたの?」

「だから!全て誤解なのょ」


会話になってないw


「あのね。ミユリ姉様もテリィたんも(順序が逆w)優秀なヲタクです。今回は多めに見るわ。きっと何か大事な理由があったのね。そうでしょ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の前。


「エアリにマリレ。身元引き受けthank you。とにかく、大騒ぎするようなコトじゃナイから安心してくれ」

「よく言うわ。全く不安ょ。で、実際のトコロはどーなの?あ、テリィたんじゃなくて姉様に聞いてルンだけど」

「ちょっち…キスしただけよ」


ハナから信じないメイド達。


「姉様。あのね、ただキスしただけなら、こんな呼び出しなんか受けナイでしょ?」

「だから!ソレは警察が誤解してるだけなんだってば。今宵アフターでゆっくり話し合いましょ?」

「…何をやらかしたよくワカンナイけど、信じられないような何かが起きてるのね」


その通りだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マチガイダ・サンドウィッチズはアキバ最凶のホットドッグを食べさせる店だ。お薦めはチリドッグ。


「うまっ。自由な身になって食べるチリドッグ超うまっ。タバスコかけちゃお」

「え。味覚5才児のテリィたんがタバスコを…ってか、姉様との不思議なキス体験の話だけど」

「キスすると脳内風景が相手に伝わルンだょ多分。科学的にとても興味深い現象と逝えるけど、他にも色々と条件がアルみたいだ。絆とか愛とか」


チリドッグを頬張り中に話しかけられて迷惑だが、命の恩人エアリとあっては相手をせざるを得ない。


「やっぱし?でね、テリィたん。実は提案ナンだけど、もしテリィたんがソレを試したいなら、私、実験台になってあげても良いと思ってルンだけど」

「え。ミユリさんと試したからもう十分だろ」

「そ、そーょね?ソレは良かったわ。えっと、その、あの提案してみただけだから。ソレよりチリドッグはどう?」


口の周りのケチャップを拭いてくれる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。銀河中心の画像に見惚れるミユリさん。


「あら、ミユリ姉様。ようやく科学に興味を抱いてくれたみたいね。何か質問があるなら遠慮せずにどうぞ?」

「OK。この銀河に赤色巨星はアル?ほら、赤色巨星って時空線(ライフサイクル)の最終段階にいる星のコトでしょ?」

「その通り。赤色巨星は光が弱くて天体望遠鏡でも捉えることが出来ズ…でも、ナゼ赤色巨星?」


小首を傾げるエアリ。僕が部屋に入って来る。


「時空の深淵さにやっと気づいたの」

「ソレは素晴らしいコトね」

「コホンコホン」


僕は戸口で咳払い。


「どうやら、姉様の共犯者もやっと来たようね。ミユリ姉様は、ゼヒその関心をテリィたんではなく、時空の深淵に向けて欲しいわ。じゃね」

「…エアリと何を話してたの?」

「宇宙と時空についてです。ソンなコトよりテリィ様、スゴいコトがわかったの。ソレは…」


ミユリさんのお喋りな口をキスで塞ぐ。


「うっ…私が妄想した時空の深淵は、単なる妄想の産物じゃなかった。実在するモノだったのよ。つまり、時空線です。ソレと今日の午後、私が妄想したのは多分タイムマシンから見えた景色だわ」


顔を見合わせる僕達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷の2Fはメイド長の個室だ。今、その扉がノックされ、ミユリさんが振り返るとエアリがいる。


「ミユリ姉様。テリィたんに特別な感情持ってるみたいね。今カノという以上の、もっと肉体的な…」

「…元カノばかりのアキバで、その話はNGょ」

「話したくなければ話さなくてOK。その代わり、私の話を聞いてください」


ツカツカと部屋に入って来る。


「私は、未だ姉様とテリィたんにセックスは早いと思うの。未だプラトニックでいて欲しい。もう手遅れカモしれないけど」

「エアリ。私、テリィ様とは未だセックスしてないわ。貴女達と違ってねw」

「なら良いけど。でも、お願い。私達には、マジ何でも話して。私達は、姉様の味方。姉様の最後の切り札ナンだから。OK?」


全くOKでない。ミユリさんは…セックスしたいw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"時間ナヂス"と距離をおくコトにしたマリレが見つけて来た新居は神田リバー沿いの安アパートだ。


「ミユリさんが見たのは、時空線をジャンプする時にタイムマシンから見えた画像だったらしい」

「マジ?その時、タイムマシンに乗ってたのは姉様だけなのかしら?私達は乗ってなかったの?」

「超古代進とか乗ってなかった?ねぇペーパーホルダーは何処?」


引っ越しをイソイソ手伝うスピア。新婚気取り?


「ペーパーホルダー?何ソレ?美味しいの?」

「キャー冷蔵庫の中、カビだらけだわ。コレ、重曹でも落ちないわょ多分」

「とにかく!ココは私のお城なの。文句言うなら出てって。で、テリィたんはどう思うの?」


珍しくマリレから意見を求められるw


「僕は、ミユリさんの記憶を見たのカモしれない」

「姉様の記憶って?」

「ソレは…逝えないな」


瞬間湯沸し器が沸騰w


「何ソレ?私達とテリィたんの間には秘密はナシって約束だったでしょ?違うの?!」

「ジューサーは何処かしら?私達の中にはスーパーヒロイン化してない私も入るのょね?」

「話の邪魔しないで!」


紙袋からレモンを取り出しながらスピアは溜め息。


「待ってくれ。だってコレはミユリさんのプライバシーに関わるコトなんだ」

「ダメょ逃さない。だって、ソレがテリィたんの妄想じゃないと、どうしてワカルの?」

「マリレ。じゃ姉様に直接聞いたら?」


能天気に口を挟むスピア。僕の元カノの中では最も楽天家なのだ。ソンな彼女が好きだったのだが…


マリレのまとめ。


「とにかく!姉様の記憶にあったコトが現実にあったコトだとすれば、私達スーパーヒロインの由来が確認出来るカモ。テリィたんは、姉様の記憶がマジかどうかを突き止めて。私とスピアは、実験を続けるわ。スピア、来て」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


濃厚なキスシーンだ。マリレとスピアの。


「あぁマリレ!もうスゴく楽しいわ。素敵な気分。

この前は時空線が見えたとか言ってたけど、実は何も見えたワケじゃないの」


唇を離すマリレ。


「え。じゃ何が見えたの?」

「何も見えなかったわ。口から出任せを言ったの」

「何なの?」


カラダを離し数歩下がるマリレ。


「ナンでウソなんかついたの?」

「ナンでって…マリレと仲良くなりたかったからょ。今よりもっともっと」

「仲良くなりたかった?何ソレ?逆効果ょ!」


マリレはプイと横を向き、スピアは大慌てだ。


「ねぇ何とか言ってよ」

「私に何を言えって言うの?」

「どうして話し合おうとしてくれないの?」


スピアはすがりつく。


「別にしゃべるコトなんかナイのに、しゃべれるハズがナイじゃナイ」

「そうやってマリレが心に(AT)フィールド全開にしてるから私には見えないのょ早くゲシュタルト崩壊しちゃって」

「な、何?何語をしゃべってるの?」


ヲヴァンゲリヲン語だ。


「だって!マリレには私がちっちゃい頃に履いてた赤いスニーカーが見えたんでしょ?」

「実は何も見えなかったわ。赤いスニーカーの話も全部作り話なの」

「そんな…でも、私は赤いスニーカーをホントに持ってたわ」


みるみる目に涙が溜まるスピア。


「そんなの誰だって持ってるわ。普通の幼女なら」


大声で泣き出すスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(トラベラーズビクス)のバックヤード。メイド服に着替えながらスピアとミユリさんの女子トーク。


「スピア…貴女、何でそんなウソをついたの?」

「姉様まで私を責める?とにかく!コレで少しマリレをうぬぼれさせちゃったカモ」

「え?どーゆーコト?」


心から悔やしそうなスピア。


「あぁ何でウソついてたコトを正直に言っちゃったんだろ。私がマリレの気を引こうとしてたのがバレバレじゃナイ…あら?ちょっと激マズ」

「嘘バレが?」

「じゃなくて姉様の首筋…」


反射的に首根っこを抑えるミユリさん。


「ダメ。ちょっと見せて…姉様、鏡で自分で見て」

「何?何なの?」

「メイド長!シフト交代ですけど…」


シフト入りを促すメイドの声。大声で叫ぶスピア。


「直ぐ逝くわ!」

「私、先に行くわ。姉様、鏡を見て」

「ええ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スピアがホールへ駆け出して逝き、バックヤードに1人残ったミユリさんは姿見を見ようとすると…


「テリィ様?」

「…ミユリさん?」

「何でココに?」


ヲーナー特権でバックヤードに踏み込んだ僕を見てナゼかパッと顔を輝かせるミユリさん。何でだ?


「…いや、ちょっち確かめたくてさ」

「何を、ですか?」

「リアルなのかどうかをね」


ミユリさんは、何かを期待して探るような顔。


「だ・ か・ら。何がリアルなのですか?」

「僕達がキスをした時に、ミユリさんがタイムマシンからの景色を見たように、実は…僕にも見えたんだ。その、あの、実はミユリさんがシャワーを浴びてるトコロが…」

「私が、ココで、シャワーを、浴びるトコロ、見たの、ですか?」


一言一言区切る割に怒ってない。逆に何か期待?


「僕が見たのがリアルなミユリさんの記憶なのか、それとも、僕の勝手な妄想なのか、ソレを確かめたかったんだ」


間違いナイようコチラもユックリ語る。だが、ミユリさんはズッと明後日の方を見ている。話を続行。


「さすがにヲーナーでも女子のシャワー室ナンて入るの初めてだし…でも、コレでワカッタ。ココは、僕達がキスをした時に見たのと、まるっきり同じ光景だ。やっぱり僕の妄想じゃなかった」

「…嫌だ。テリィ様、何か恥ずかしい」

「恥ずかしい?」


僕は、率直にウレしいけどね。


「だって、何でもテリィ様に筒抜けだなんて」

「待って、聞いてよ。違うんだ。ウレしかったのは、ミユリさんが僕のコトを妄想したり、考えてくれたコトがわかったってコトなんだ。誰かにあんな風に思ってもらえるなんて、今まで考えたコトもなかった」

「ホント…ですか?」


恥ずかしがって俯いていたミユリさんだが、フト顔を上げるや、挑発スルような上目遣いで僕を見る。


「メイド長!」


業を煮やしたメイドがバックヤードに入って来る。僕をシャワー室に連れ込んで、息をヒソめるミユリさん。優等生がワルぶる的な萌えるシーンだw


「メイド長!何処なの?」


足音が遠去かる。ニッコリ微笑むミユリさん。


「テリィ様。もう大丈夫…」

「ミユリさん!ソ、ソレは?」

「え。何ですか?」


僕は、ミユリさんの手をとって立ち上がる。


「キスマーク?…僕がつけた奴か?」

「えっ」

「光ってる」


鏡を見て息を飲むミユリさん。光るキスマークを慌てて隠す。その瞬間、フラッシュバックが起きる!


194X年、帝都上空を覆う戦略爆撃機B-39。神田リバーの水面を割り、白い噴射炎を引いて大空へ駆け上がるロケット要撃機Me162.5"秋氷"…コレは"第2.5次太平洋戦争"だ!


振り向く僕。見上げるミユリさん。


「テリィ様。また違う絵が見えました」


第3章 ウソとセックスと光るキスマーク


「姉様の脳内に眠っている記憶が、テリィたんとのキスで引き出されてるってコト?」


マリレは"新居"で"壁打ち卓球"をしている。傍らで、小さな窓から路地裏を見下ろしてるエアリ。


「ソレか…私が異なる時空からのメッセージを無意識の内に受信して、ソレをテリィ様が見たのカモ」

「"トラベラー"とか?」

「…とにかく!テリィ様は、時空線を移動するタイムマシンからの景色や"第2.5次世界大戦"の光景を見たの」


フト思いつくマリレ。ピンポン玉が背後に飛ぶ。


「ねぇ私達って、ヲタクと交流するコトで、何かがワカルようになってるのカモ」

「交流?結びつく?交配?」

「誰も交配ナンて言ってナイwうーん性的な関係を持つって意味?」


溜め息をつくマリレ。このタイミングで僕が登場。一同を見回してから咳払いをして厳かに宣言スル。


「間も無く、この部屋にミユリさんが降臨スル」

「ROG!じゃ私達は消えるわね!さ、エアリも…」

「え。別にいてくれても良いけど…」


珍しくポニーテールのエアリが立ち上がって、帰る準備を始める。もったいない。折角のポニテが…


「スーパーヒロイン出生の秘密を探るためょ。しっかりセックスして新しい情報を引き出してね」

「おいおいおい。そんなんじゃないぜ」

「この後に及んで何を言ってるの?まぁ周りが頼むまでもなくヤリたいだろうし、ミユリ姉様もシタイと思ってルンだから」


やり手ババァみたいに売り込むエアリ。


「僕は、ミユリさんを道具のように扱うのが嫌なんだ。利用スルみたいで」

「利用スルの!姉様も利用されたいンだから」

「ナンてコトを逝うんだ。ミユリさんに謝れ!」


割って入るマリレ。


「2人とも落ち着いて。ムダ弾を撃つのはヤメて。特にテリィたんは」

「ねぇテリィたん。もっと賢くなって。スーパーヒロインのルーツを知るために絶対必要なコトなの。私に出来るならとっくにヤッてるわ。とにかく!全てはテリィたんにかかってる。ヤッて」


僕を指差し部屋を出るエアリ&マリレ。マリレが照明を落とす。ムーディなキャンドルが一斉に点灯。


「す、素晴らしいな」

「でしょ?100均を侮らないで…あ、姉様」

「あら、みんな。いたの?」


ドヤ顔で部屋を出るエアリ達と入れ違いにイソイソ部屋に滑り込むミユリさん。メッチャ派手メイクw


「ミユリさん。どんな気分?」

「はい。テリィ様、なんか変な感じ」

「でしょうね。じゃ姉様、私達は消えるから。テリィたん!BGMに山田省吾の"今宵こそ"を選んどいた。話が詰まったら直ぐかけて。ソレから…」


話すマリレの鼻先でドアを閉めるエアリ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


キャンドルが揺れる部屋。見つめ合う僕とミユリさん。ミユリさんの顔にゆっくりと微笑が広がる。


「テリィ様。私達のコトを話したのね?」

「YES」

「ソレで、あの子達は私のコトを急に応援してくれるようになったワケ?」


私のコト?私"達"のコトだけどw


「別にそんなんじゃないさ…いや。実は全くそうなんだ。あの2人は、僕達が先に進むコトを期待してる。だけど、僕は…」

「テリィ様。私もコレの意味を知りたいの」

「コレ?」


首筋のキスマークを見せるミユリさん。既に光を失い黒ずんでイル。が、僕が指でナゾると…消える。


「痣が消えたな」

「ありがとうございます…うっ」

「好きだょ」


ミユリさんの唇を塞ぐ。背中に回した手の動きに沿ってミユリさんのカラダが…光る。何が起きてる?


「テリィ様。私のカラダ、光ってます。どうして光るのかわかりますか?」

「わからないよ」

「シャツを脱いで」


ヤタラ器用に僕のシャツを脱がせるミユリさん。生っちろい僕の胸。その裸の胸を撫でるミユリさん。


「…ダメだわ。光らない。私には出来ないみたいです。ごめんなさい、テリィ様」


え。ソンな実験をしてたのか。


「いや、出来てるょ。カラダの内側から僕も光ってる。つまりハートそのものが熱くなってる」

「素敵です。でも、これ以上はダメです」

「わかってるさ」


が、身を引こうとスルとミユリさんが離さないw


「テリィ様。これ以上何かしたら私どうなるの?」

「わからないよ。自分のコトは何も」

「でも、テリィ様が触れたら、あの光るキスマークが消えたわ。逆にあのキスマークが光ったり、痣になったりしたのは、何かのメッセージなのかしら。あ…」


真正面からキスを受けるミユリさん。


「僕は、今すぐミユリさんを抱きたいけど、抱けば僕はミユリさんを傷つけてしまうカモ」

「わかってます。でも…」

「何をしたら良いのか、自分でももうワカラナイ」


ミユリさんの唇をむさぼる。


「私もそうなの!この前シャワー室で私が妄想してたコトを、テリィ様は見てしまったのでしょ?今、こんなコトもサレてるし、誰かに見られたら私、死んじゃうわ。いいえ。その前に私が壊れちゃう!」

「どうかな?試してみよう」

「ヤメて…バカ、ヤメないで!」


喘ぐミユリさんにのしかかる。ミユリさんは、僕の首に腕を絡ませ薄い胸の谷間へと僕を抱き寄せる。


hallelujah!その時…


「ちょっと待って!何なのコレ?」


ドアが開き、黒い下着のスピアが立っている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「姉様!2人で何やってたのよ」

「そーゆースピアは?何で黒ブラに黒パン?」

「ソレは…マリレが好きだから…」


ピンクのキューベルワーゲンが昭和通りを疾駆。運転はスピア。黒い下着…の上にメイド服を着てる。


今は←


「マリレは私に合鍵をくれたの。いつでも遊びにおいでって…だから行ったの。姉様は?」

「あのね、スピア。私にお説教するつもり?」

「私は、姉様が心配なのよ」


意外なコトを逝う。


「心配?どうして?」

「だって、こんなの姉様らしくないモノ。頼むから突っ走らないで」

「だけど!私はそうしたいんだモノ」


悲しい女の性だ。罪な男だぜヲレ。


「姉様、正気?"覚醒"したスーパーヒロインとヲタクがソンなコトしたら、どうなるかわからないのよ」

「あら。腐女子は良いの?マリレに黒ブラ黒パンで迫ってたのは誰?」

「あのね。私達は百合。所詮はキスするだけょ」


ミユリさんは、思いっきり怪訝な顔。


「わかった。確かにソレ以上のコトもしたけど、私には何も見えなかったし、キスマークが光るコトもなかったわ。そもそも、スーパーヒロインの本心ナンて、ヲタクや腐女子にはワカラナイ。あのね。この時空では、メスのカマキリは交尾した後でヲスを食べるのよ。知ってた?テリィたんも、姉様と交尾して情報を聞き出したら、姉様に襲いかかって…こうょ!」


スピアは首をかき切る仕草。吹き出すミユリさん。


「セックスの後でテリィ様が私を頭から食べちゃうってコト?ってか、今の話は、セックスの後でメスがオスを食べルンでしょ?」

「そんなコトじゃなくて!姉様がテリィたんに利用されてるだけカモって言ってるの!」

「…ソレはナイわ。ねぇスピア。きっとコレで良いのよ。安心して。私、感じるの。セックスの相手をこんなに信じたコトって他にナイわ」


推し黙るスピア。プイと横を向く。


「そりゃ私だって…マリレとシたいけどさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


いくつかの雑居ビルの屋上伝いにメイド長個室のベランダに辿り着いて窓から部屋に入るミユリさん。


「ラギィ警部?」


何とラギィがイスに座ってるw


「こんな時間まで、何処に行ってたの?」

「警部。コレって不法侵入って奴かしら。心配だから警察に相談しようかしら」

「忠告に来たの。テリィたんの元カノとして」


ラギィと僕は、彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれていた頃からのつきあいだ。ミユリさんより古い。


「忠告?」

「お願いだから、もっと私に何でも話して…あら?嫌だわ。貴女、熱があるじゃない」

「大丈夫よ」


ソレは…コトを成した余韻って奴だw


「ダメよ。カラダが火照ってる」

「大丈夫だって逝ってるでしょ。腐女子扱いしないで。私のカラダょ警察の不当な干渉は拒否します。帰って」

「ミユリ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。階下の御屋敷(トラベラーズビクス)。カウンターに頭を載せてボンヤリしてるマリレ。


「マリレ」


振り向くと似たメイド服を着たスピア。


「ねぇさっき貴女のアパートに行ったらミユリ姉様とテリィたんがいたンだけど」

「だろうね。で、未だいるの?」

「ちょうど今、姉様を送ってきたトコロ。途中で降ろしちゃったけど」


マリレは大きくノビをスル。


「(途中で?何で?)じゃもう帰っても良さそうね」


第4章 時空ビーコン


ミユリさんはメイド長個室(ベッドメイドオフィス)のベランダでブログを描いてる。


「ミユリさん」


路上から呼ぶ声は僕だ。パッと顔を輝かせ、周囲を見回し、眼下の裏通りを見下ろす。僕は手を振る。


「テリィ様!」

「ミユリさん。何だか眠れなくて」

「私もです。気が合いますね」


ミユリさんはウレしそうだ。女子って、こんなコトでもウレしいのか。理解不能だけど、先へ進もう。


「実は、先日のキスだけど…」

「テリィ様!さっきまた気になる画像が見えたの。とても大事な何かが埋められてる。コレのソバに」

「ドナウ型の送電鉄塔?275kV級だ」


ミユリさんが見せてくれたスケッチブックには戦前に作られた帝都導入超高圧送電鉄塔が描かれてる。


「確か裏アキバの"万貫森"にこんな鉄塔が立っていたな。最近、謎の発光現象が多発してる界隈だ」

「テリィ様。間違いなく何かが埋まってる。逝くなら早い方が良いカモ。今宵はどーですか?今から行きましょう」

「2人っきりで?」


驚く僕。ミユリさんは微笑む。


「私とじゃ…イヤ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ケッテンクラートを芳林パークに停めて万貫森に分け入る。とっくにパークの街灯は消え、全てを闇が包み込む。両手を伸ばすと指先が見えないのだ。


「どこから探せば良いんだ。せめて、森の何処なのか大体の場所がわかればソコを掘るのに」

「テリィ様」

「え。」


いつの間にか僕の肩に頭を乗せてるミユリさん。


「どうしますか、テリィ様?」

「え。どうしよう、ミユリさん」

「私達は、次に何をすべきか、よーく考えて決めなくてはなりません」


挑むような目で僕を見上げる。


「ROG。とりあえず、野生の勘に任せて闇雲に掘ってみよう!」

「(えっ?テリィ様は自分に野生の勘がアルとでも思ってるのかしら?)えへん。ソレより次の手がかりを探す方が効率的だと思いますが」

「え。」


学級委員みたいな仕草、物言い。そして、目を瞑りキス待ち顔をして赤い唇を差し出すミユリさん。 


「わぁぁぁ自分を抑えられないー」

「あん…待って。今回は横になりましょう」

「そ、そうだね?」


用意周到にも地面にシーツを広げるミユリさん。


「私、不思議なほど怖くないわ。だって、テリィ様に全てお任せスルと決めたのですから」


…とか逝ってシッカリ僕の首に手を回し喘ぐミユリさん。やれやれ。どーやら百戦錬磨の女戦士だょw


「…はぁはぁ。何か見えた?」

「いいえ。でも、微かに何かが聞こえるのです」

「…ぜぇぜぇ。何か聞こえる?」


突然ミユリさんは細い目を大きく見開く。


「あの音ょ!聞いて。何かの発信音だわ」

「え。何?ファッションション(意味不明)?」

「しっ!静かに…あっちだわ。逝きまーす!」


突然ガバっと立ち上がり、発信音?のスル方向へ猛ダッシュするミユリさん。しかし女ってスゲェな。男には無理。変なトコロがムダに突っ張ってるしw


「ココょ!テリィ様、掘って!ココ掘れ!」

「わんわん!」

「ムダに吠えてないで早く!」


持参のスコップで掘って掘って掘りまくれ!あ、僕自身はどちらかと逝えば民主党寄りだ。念のため。


次の瞬間!


「わ!」

「まぶしい!」

「何なの?」


土壌の中から1条の真白き光がほとばしり、闇夜を切り裂き天空へと伸びて消える…瞬時に闇が戻る。


「見て、テリィ様。私達が掘った穴の底に何かアルわ。何かの小道具(ガジェット)?」

「このガジェットが、さっきの光を発したのかな」

「表面に"スターメーカー"の象形文字だ」


ミユリさんが手にしてるのは…スマホ大の基盤?に何やら歯車や微細な配線が精密に施されたモノだ。


「テリィ様。さっきの光は"リアルの裂け目"でしょうか?今、時空に断層が出来たのですか?」

「ワカラナイ。ワカラナイけど"リアルの裂け目"と逝うより…このガジェットは"裂け目"を呼び寄せるビーコン的なモノかも」

「なるほど。そうかもしれませんね。とりあえず、キスを続けましょう」


またまた唇を差し出すミユリさん。僕は、どちらかと逝えば、キスよりもミユリさんの胸を触りたいのだけども、ソコは鉄壁、なかなかガードが固いw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼けに染まる万貫森。風に髪がそよぎ目を覚ますミユリさん。傍らに僕の間抜けな寝顔を見て微笑。


「テリィ様。おはようございます」

「…え。あ、ミユリさん。良い朝だね」

「ドバギュルルルン!」


突然スゴい爆音が轟いて飛び起きる僕達。振り向くと翠髪に白衣の女医?が変な筒を僕達に向けてるw


「アンタ達。ココは私有地ょ。勝手に入ってもらっちゃ困るわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ノック。マリレがドアを開けるとメイド服のスピアだ。溜め息をつくマリレ。お構いナシのスピア。


「ミユリ姉様とテリィたんが消えたわ。また、キスをしにいったンだと思ふ!」

「そうね。だから?」

「頼むから、そんな冷たい態度を取るのはヤメて。もうちょっと普通に話してくれたって良いでしょ?」


マリレは深呼吸。カウチの上の洗濯物を片付ける。


「入って」

「ありがとう。この間の続きを話しても良い?」

「どうぞ」


洗濯物を畳んでは放り投げるマリレ。


「マリレが心を閉ざしているから、私には何も見えないって言ったけど、ホントはそうじゃないってわかってる。私がマリレと上手くイかないのは、貴女のせいじゃない。私なの」

「…そーなの?ジャスミン茶、飲む?」

「私が怖がってるせい。いつだって私は臆病で周りに合わせたフリをしてる。あのね。こんなコトを正直に打ち明けたのは、初めてナンだからね!」


コレは…ツンデレなのか?


「…そう。せっかく打ち明けてくれたのに悪いンだけど、必ずしもスピアのせいとも言えナイのょ」


マリレはスピアの隣に着席し、AIにミュージックをスタートさせる。懐メロ"さらば恋人"が流れる。


悪いのは僕の方さ。君じゃない…


「え。どーゆーコト?」

「私達がキスしても何も見えない原因は、私が心にバリアを張ってたからょ。"(AT)フィールド全開"って奴?」

「何でワカルの?」


マリレは、真正面からスピアを直視w


「私、見たの。赤いスニーカーには可愛いカエルのアップリケにがついていた。なぜだか知らないけど、幼女だったスピアは泣いていて、隣にいたダルメシアンが貴女の涙を舐めてたわ」


スピアの顔がパッと輝く。


「他にも色々と見えたけど…」

「ヤメて、恥ずかしー!その犬は、私が7才の時に死んだわ。パパが家を出て行った直後よ」

「…知ってる」


ヤレヤレ。だが、スピアは満足げ。


「あのね!私はキスして絵なんか見えなくても良いの。だって、私はマリレとキスをしたかっただけだから!」


マリレは、スピアの肩に手を回し、おでこにキスをスル。されるがママのスピアはウットリ目を瞑る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署。


「ラギィ警部。アラサーをとっくに過ぎた2人がコスプレしたママ、キスしたりセックスしたりしたからって何の罪にもならないわ。ココは秋葉原ょ?」

「あのね。エアリ、ソンなコトはどーでも良いの。あの2人は私有地に無断で押し入った。挙句、怒れる地主に未だテスト中の"音波バズーカ"で撃たれた。お陰で1km四方の窓ガラスが全部割れて、その損害賠償が…」

「確かに!しばらく、あの2人にはキス禁止令を出すべきね。でも、言い訳ぐらいは聞いてあげたら?ヲタ友でしょ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。僕とミユリさんは万世橋(アキバポリスじゃなくてリアルに橋の方だ!)の上でキスの最中だ。


「…ミユリさん。何か見えたか?…うぐっ」

「全然です。テリィ様は?」

「…な、何も見えなかった。ふぅぅぅ」


僕は肩で息をしてるが、ミユリさんは…(以下略)


「テリィ様。私達2人がこんなにキス衝動に駆られるのは、この不思議なガジェットを見つけろって逝う天の思し召しなのかしら。このガジェット、何なのか皆目ワカラナイけど」

「今はね。でも、多分このガジェットは…」

「どうして、テリィ様と私がこのガジェットを見つけたのかな。ねぇ正直に答えて。テリィ様は、このガジェットを見つけるために私を利用したの?」


そりゃ逆だろ?


「ソレはナイな。利用するなら他の腐女子でも良かった。このアキバには、僕とキスをしたがってる元カノはタクサンいるからね…あのさ。僕の本心はミユリさんが1番良く知ってる。だって、キスした時に…」

「STOP!では、テリィ様も私の本心を良く御存知ですょね?私が…テリィ様が喜ぶコスプレでどんなコトをしようとしてるカモ…きゃ!いけません。恥ずかしい!」

「…(ホントにしてくれるのかなアンなコトw)とにかく!今は目の前の難関を切り抜けよう。逝くぞ、ミユリさん」


ミユリさんと手をつないで歩く。馴染みの万世橋警察署員がオドけた仕草で扉を開けてくれる。

署内には両手を腰に当てて難しい顔をしたラギィ。肩をスボめて天を仰ぐエアリが待っている。


新しい1日が始まる。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"キスでフラッシュバック"がテーマの作品です。メカ系SF作家を目指す上で、ハッキリ言って苦手ジャンルである"セクシャル描写"に敢えて挑戦…したトコロ、案外楽しく描けてしまいました笑、という困った?作品です。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり必ずしも裕福とは限らない、普通の家族の海外旅行先として定着した感のある秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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