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台湾事変   作者: 独楽犬
10/11

一〇.鎮圧

 壮絶を極める総統府前の戦闘もようやく終わろうとしていた。幕引きの合図は低いディーゼルエンジンの唸りとキャタピラの回るカタカタという音であった。

「戦車だ!」

 海兵隊の1人が叫んだ。音から戦車が近づいてくるのが分かった。中国もアメリカ海兵隊も戦車はまだ持ち込んでいないから、その持ち主は容易に推定できた。やがて青天白日満地紅旗を掲げた台湾軍のM60A3戦車が姿を現した。台湾軍が斬首戦略の衝撃から回復したのである。

 戦車隊は総統府前に布陣すると、中国軍に主砲を向けた。105ミリ砲弾が中国軍の隠れる放置自動車を粉砕した。指揮官が戦死していた中国軍部隊は戦車の出現によって混乱状態に陥り、次々と逃げ出していった。

それを見届けてから行政院長とアフマド中佐は戦車隊に駆け寄った。指揮官らしき男が先頭戦車の車長用ハッチから姿を現し、這い出てきた。行政院長は戦車隊指揮官に握手を求めた。

「よく来てくれた。本当によく来てくれた」

 行政院長は戦車指揮官の手を力強く握り、涙を流しながら言った。

「当たり前です。アメリカ軍ばかりにいい恰好はさせませんよ」

 戦車隊指揮官は満面の笑みで応えた。

「それで、そちらの軍はどう行動しているのだね?」

 アフマドが戦車隊指揮官に尋ねると、相手は真剣な表情になった。

「台北周辺の軍組織はほぼ回復しました。現在、我が旅団の機械化歩兵部隊が博愛特区の周囲を固める為に動いています。今日中には台北の首都機能は回復できると思います」

「それで渡洋中の部隊の方だが」

 その質問に戦車隊指揮官は首を横に振った。

「まだ台湾を目指して海峡を東進しています。空軍は中間線を越えたら攻撃を仕掛けるつもりです」




 台湾空軍基地からF-16戦闘機が次々と飛び立った。翼の下には対艦ミサイルを装備している。空中で編隊を組むと、F-16飛行隊は台湾海峡を渡っている中国艦隊目指して西へと飛んだ。

 嘉手納基地から発進したアメリカ空軍の早期警戒管制機E-3Cも台湾空軍の編隊を捉えていた。E-3Cは機体の上に巨大なレーダーを載せていて、さらに空中司令部としても機能するアメリカ空軍の中枢ともいうべき航空機であった。

 その優秀なレーダーも当然のように台湾空軍のF-16編隊を捉えていた。そして、それに立ち塞がるように飛行する中国空軍のスホイ27戦闘機の姿も捉えた。

「スワロー中隊、こちらスカイセンサー。ただちに台湾空軍機の援護に向かえ」

 E-3CのオペレーターはF-15戦闘機隊を台湾空軍の護衛に向かわせた。




 中南海では、まだ閣僚達が黙り込んでいた。しかし事態は好転するどころか悪化する一方であった。

「最新の報告です」

 国防部長がたった今、部下が持ってきたメモを読んだ。

「友愛特区の奪還作戦は失敗しました。台湾の叛乱分子が戦車を投入したそうです。奴らの軍隊は“斬首”から回復したようです」

 それは彼らの作戦が失敗した事を意味する。

「現在、奴らの空軍が我が艦隊に向けて飛行しています。攻撃を目論んでいるようです」

「阻止できないのか?」

 閣僚の1人が尋ねた。

「現在、我が軍の戦闘機が阻止に向かっていますが、アメリカも戦闘機隊を派遣しています。このままではアメリカ空軍と交戦状態となります」

 国防部長はますます苦い表情になる閣僚達の顔色を確かめてから、説明を続けた。

「さらに最新の情報によりますと複数のアメリカ空母群が台湾海峡に急行中です。嘉手納など在日米軍の空軍部隊も増強されています。事前集積船も数日中に到着して、本国から陸軍部隊も展開するでしょう。このままではアメリカとの全面戦争に突入するでしょう」

「だが虚仮脅しではないのかね?」

 主席が最後の悪あがきをはじめた。

「彼らだって全面戦争は望んでいない筈だ。だから我々を立ち退かせるために…」

 国防部長は首を横に振った。

「失礼ながら同志、既にアメリカとの戦争は台北で始まっています。アメリカ軍は戦っているのです。次は我々が選択をする番なのです。続けるか、止めるか」

 中国はいよいよ追い詰められたのだ。




 台湾空軍のF-16は中国艦隊を射程圏内に捉えていた。艦隊が台湾海峡中間線を越えれば攻撃を開始する。中国空軍の戦闘機が阻止すべく接近してくるが、アメリカ空軍のF-15隊が間に入っている。台湾空軍のパイロット達は対艦攻撃に神経を集中させることにした。

「FCS起動。目標を捕捉」

 F-16のレーダーが作動し、中国艦隊を捉える。中国艦も対空レーダーをF-16に照射して、対空兵器の照準を合わせている。

 周辺ではアメリカと中国が次々と兵力を集めているから、攻撃を行なえば間違いなく全面戦争になるであろう。勿論、パイロット達はそれを恐れ、躊躇うということはしない。国を守るためには必要なことだからだ。だが全面戦争になれば最終的には誰にとっても喜ばしくない結果になるに違いない。台湾にとっても、中国にとっても、アメリカにとっても、日本にとっても。この戦争に勝者などいない。

「そうだ。それが戦争だ」

 パイロットは呟いた。

 これまで勝者のいた戦争などあったのであろうか。激しい抵抗に遭えば、全面戦争となれば結局は傷つき何の益にもならないのが戦争なのだ。だからこそ抑止力という概念が成り立つ。

 逆に言えば抑止力が破られたのは、相手に対して“激しい抵抗に遭う事はない”“全面戦争にならない”という誤ったメッセージが送られたことを意味する。中国の指導者たちは、アメリカの国境紛争不介入方針を自らの侵略行為への免罪符と受け取ったイラクのフセイン大統領や、アチソン声明をアメリカの韓国切り捨てと受け取った金日成のように、なにかメッセージを誤って解釈したのだ。

 そして、そう受け取れるメッセージを発信した者がいる。東アジアの安全保障を蔑ろにした何者かが、国防を政争の道具にした何者かが。現場の人間の1人に過ぎないパイロットには、それが何者かは分からなかったが、その人物が今回の戦争の引き金を引き、多くの血を流させたのである。

 まもなく中国艦隊が台湾海峡中間線を越える。

「全機、攻撃準備!」

 僚機に命じると、操縦桿の発射ボタンに指をそえた。あとは指に力を込めるだけで大戦争が始まる。

「全機、攻撃…」

 攻撃を命じようとした時、パイロットはあることに気づいた。中国艦隊からのレーダー照射が止まった。

「攻撃待機!」

 発射ボタンから指を離すと同時に中国艦隊を監視していた哨戒機から連絡が入った。

<中国艦隊が針路変更。来た道を戻っていきます>

 パイロットは確信した。ようやく北京に対して正しいメッセージが送られたのだと。

 そして、こちらが噂の日米安保マンガw

http://www.usfj.mil/manga/

 アメリカ本気だw

 いろいろとネタにされてますが、これはアメリカの政府組織が広報に力を入れている証拠みたいなもので、日本ではJAXAiや陸自の広報施設が仕分けされたのと比較すると悲しくなりますね

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