心に隠した想い
拓斗と付き合うことになった舞桜は、陽真に、もう一度しっかりとした告白の返事をするため、会いに行った。
放課後、舞桜は昇降口で陽真を見つけると、少し緊張しながら声をかけた。
「陽真くん……、私ね、拓斗くんと付き合うことになったの。だからごめんなさい!陽真くんの気持ちは嬉しかったけど、やっぱり応えることはできないの。」
舞桜が告げると、陽真は、舞桜の報告を寂しげな表情で聞き、そして、静かに目を伏せた。
「本当に陽真くんが初恋の男の子だったのかもしれない。だけど、それよりも大切なことに気づいたんだ。だから、拓斗くんを選んだの。」
舞桜の言葉に、陽真はゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、諦めと、どこか清々しさが混じっていた。
「……そうですか。やっぱり……俺の負けですね。」
陽真は、自嘲気味に呟いた。そして、深く息を吐くと、意を決したように舞桜の目を見た。
「あの……正直に言います。初恋の男の子が俺っていうのは……実は嘘なんです。」
舞桜は、その真実に驚き、目を見開いた。
「どうしても舞桜先輩が欲しくて、つい、そう言ってしまいました。本当にごめんなさい……。舞桜先輩のことも初恋の思い出も傷つけて……。」
陽真は、心から後悔しているような顔で頭を下げた。
舞桜は、一瞬戸惑ったが、陽真の素直な謝罪に、彼の純粋な部分を感じ取った。
「ちゃんと教えてくれて、ありがとう。言いづらかったはずなのに話してくれて。そういう優しいところ、陽真くんの良いところだよね。」
舞桜が優しく許しの言葉を口にすると、陽真は顔を上げた。
彼の瞳には、安堵の光が宿っていた。
「舞桜先輩、松下先輩と、どうかお幸せになってください。俺、応援していますから。」
陽真は、にこやかに微笑んだ。
舞桜は、陽真の優しい笑顔に、心からの感謝を伝え、その場を去った。
どんどん遠くなる後ろ姿を見ながら、陽真は誰にも聞こえないほどの小さな声で、ぼそっと呟いた。
「本当に初恋の男の子が俺だったら、良かったのにな……」
陽真は頭の中で、もし本当にそうだったとしたら、自分にも違う未来があったのだろうかと、どうしても考えてしまうのだった。




