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『桜舞う記憶、紡がれる恋』  作者: うさえり
第14章

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20/21

衝撃の暴露

拓斗に、「ちょっと、考えさせてほしい」「少しだけ、時間をくれないかな」と言われてから、数日が過ぎた。


舞桜の心は、ずっと落ち着かないままだった。


(どうしたのかな、拓斗くん……。私の気持ち、伝わらなかったのかな?)


あの時、自分の気持ちを正直に伝えたはずなのに…。


舞桜は、拓斗が告白してきた男子生徒に、「他の誰かを選ぶなら、きっと僕を選ぶから。」と言ってくれた時のことを思い出していた。


あの言葉を信じたい。


でも、拓斗の返事が来ない日々が続き、舞桜の不安は募るばかりだった。


(やっぱり、一度断ってしまったからかな……)


拓斗に告白された時、咄嗟に逃げてしまった自分の弱さが、今になって悔やまれる。


もし、あの時、素直に「好き」と伝えていたら、こんなにも不安な気持ちを抱えることはなかったのだろうか。


舞桜は、ため息をつきながら、放課後の教室で委員会の資料を整理していた。


そんな時だった。


予期せぬ人物が教室に入ってきたのは。


藤原陽真が、いつもと違い、真剣な表情で舞桜の前に立っていた。


「小林先輩、少し、お話いいですか?」


陽真の言葉に、舞桜は資料から顔を上げた。


陽真は、舞桜の机の前に立つと、まっすぐに舞桜の瞳を見つめた。


「俺、小林先輩のことが好きです。付き合ってください。」


陽真の突然の告白に、舞桜は驚きに目を見開いた。


陽真の優しさと、あの幼い日の言葉に似たアプローチに心を揺さぶられたこともあったが、今は拓斗への想いで胸がいっぱいだった。


「ごめんなさい、陽真くん……。私には、他に好きな人が……」


舞桜が言葉を選ぶと、陽真はふっと寂しそうに微笑んだ。


「やっぱり、そうですよね……。先輩がずっと、初恋の男の子を想ってるってこと、知ってますよ。」


陽真の言葉に、舞桜はドキリとした。


なぜ陽真くんがそんなことを知っているのだろう。


舞桜が戸惑っていると、陽真はさらに信じられない言葉を続けた。


「実は、その初恋の男の子………俺ですよ。」


陽真の瞳は、舞桜の動揺を見透かすようにキラキラと輝いている。


舞桜は混乱した。


陽真の言葉と、あの日の言葉が重なり、再び心が揺らぎそうになる。


しかし、陽真の次の言葉は、舞桜の心を凍りつかせた。


「あの時、桜の木の下で、先輩に『素敵なお名前ですね』って言ったのは、俺です。先輩の名前が〈舞う桜〉って書いて〈舞桜〉だって、教えてくれたのも、俺です。それに……、舞桜先輩を先に好きになったのは、俺です。初めて会った時、一目惚れしたんですから。」


それは、あまりにも真に迫った言葉だった。


舞桜は、彼の言葉が偽りである可能性を、咄嗟に否定することができなかった。


陽真の瞳の奥には、どこか冷たい光が宿っているように見えた。


「それで……俺、たまたま聞いちゃったんです。松下先輩と、野々村先輩の会話……」


拓斗くんと咲希の会話?


陽真の言葉に、舞桜は息を呑んだ。


「松下先輩って、幼い頃に記憶喪失になってるんですよ。それで、桜の木の下で会った男の子は、記憶がない自分じゃなくて、絶対俺だって。だけど、それを舞桜先輩に知られたら嫌われちゃうから、隠しておこうって松下先輩と野々村先輩が話してるのを、俺、聞いちゃったんです。」


陽真の言葉は、舞桜の心を粉々に打ち砕いた。


ー記憶喪失ー


その単語が、舞桜の脳裏で何度も繰り返される。


拓斗くんには、幼い頃の記憶がない?

そして、あの初恋の相手は、拓斗くんではない?

しかも、その秘密を咲希が知っていて、拓斗くんと一緒に隠していた?


舞桜の瞳からは、大粒の涙が溢れ出した。


混乱と、裏切られたような感覚、そして何よりも、拓斗が初恋の相手ではないという事実が、舞桜の心を激しく揺さぶった。


陽真は、泣き崩れる舞桜の様子を、どこか満足げに見つめていた。

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― 新着の感想 ―
複雑に絡み合ってきましたね〜! (*ノ・ω・)ノ♫ 俄然面白くなってきましたよ! ヾ(・ω・*)ノ
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