新たな始まり
あれから、あっという間に時は経ち、舞桜は高校生になっていた。
あの桜の木の下での出会いが、幼い日の淡い記憶として残るだけでなく、彼女の人生の選択にまで影響を与えていた。
初恋の男の子とまた会えるかもしれない……。
そのかすかな希望を胸に、舞桜は彼と出会った公園のある隣町の高校を選ぶことにしたのだ。
満開の桜が咲き誇る、入学式の日。
真新しい制服に身を包んだ舞桜は、期待と少しの緊張を胸に、通学路の途中にあるあの公園へと足を向けた。
公園には、あの時と同じように、いや、もしかしたらあの時よりもずっと、沢山の桜の木が力強く花を咲かせていた。
ふわりと舞い上がる桜の花びらが、春の光を受けてきらきらと輝く。
舞桜は、ひっそりと佇む小さな桜の木を見つけ、そっとその根元に立った。
(ここで会ったんだよね、私と、あの男の子……)
風に舞う桜を追いかけ、迷子になった先で出会った、あの笑顔。
自分の名前を「素敵な名前だね!」と言ってくれた優しい声。
彼の名前すら知ることはできなかったけれど、その出会いは、舞桜の心の中で色褪せることなく輝き続けていた。
「また会えるかな。今度は、名前、聞けるかな。」
舞桜は心の中でそっと呟いた。
もしかしたら、この新しい高校生活で、彼と再会できるかもしれない。
そんな淡い期待が、彼女の胸いっぱいに広がっていく。
今日から始まる高校生活は、きっと素敵な出会いに満ちているはずだ。
そして、その出会いの中に、ずっと探し求めてきた【運命の彼】がいることを、舞桜は心の底から願っていた。
舞桜は公園を後にし、高校へと向かう道を歩き出した。
綺麗な桜並木が続くその道は、新しい物語の始まりを予感させるように、希望に満ちていた。




