表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『桜舞う記憶、紡がれる恋』  作者: うさえり
第13章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/21

伝えたい事実

舞桜からの告白を受けて、拓斗は深い葛藤の中にいた。


舞桜の真剣な想いは確かに伝わった。


だが、その想いが、果たして本当の自分に向けられているのか、それとも幼い頃の初恋の影を追っているのか、拓斗には確信が持てなかった。


そして、その疑問の根源にあるのは、彼自身の記憶喪失という事実だった。


咲希に口止めされているとはいえ、このまま真実を隠したまま舞桜と関係を進めることに、拓斗は強い抵抗を感じていた。


拓斗は、その夜、咲希にメッセージを送った。


〈少し、話したいことがあるんだけど。明日、時間あるかな?〉


翌日の放課後。

拓斗は咲希を呼び出し、人通りの少ない場所へと移動した。


咲希は拓斗のただならぬ雰囲気に、何かを察したように真剣な表情で拓斗を見つめる。


「突然ごめん。もう知っているとは思うけど、この間、舞桜に告白した。それで昨日、舞桜からも告白されたんだ。」


拓斗は静かに切り出した。咲希は小さく頷く。


「なのに……、舞桜からの告白を受けて、改めて考えてしまったんだ。」


拓斗は、言葉を選びながらゆっくりと話し始めた。


「正直、舞桜が俺のことを好きだって言ってくれた気持ちは、本当に嬉しい。だけど、もし、舞桜が俺に抱いてる気持ちが、初恋の男の子の面影を重ねているからだとしたら……」


拓斗の言葉に、咲希の表情が曇った。


舞桜の悩みを間近で見てきた咲希には、拓斗の懸念が痛いほど理解できた。


「俺は、幼い頃の記憶がない。だから、舞桜がずっと想ってるその男の子が、本当に俺なのかどうか、分からない。もし、俺がその男の子じゃなかったとして、それでも舞桜は、今の俺を、そのまま好きでいてくれるだろうか……」


拓斗は、苦しそうに眉間にしわを寄せた。


「だから、記憶喪失のことを、舞桜に伝えたいと思ってる。」


拓斗の言葉に、咲希は息を呑んだ。


あの時、舞桜を傷つけたくなくて、咲希は拓斗に口止めをした。


けれど、拓斗の真剣な眼差しは、その決断がいかに彼を苦しめてきたかを物語っていた。


咲希は、舞桜の幸せを願う一方で、拓斗が真実を伝えようとしていることに、複雑な思いを抱いていた。


「もし、その事実を伝えて、舞桜の気持ちが揺らいでしまうとしても、俺は、嘘をついたまま舞桜と向き合うことはできない。舞桜には、すべてを知った上で、俺を選んでほしいんだ。」


拓斗の言葉は、彼の舞桜への真剣な愛情の深さを物語っていた。


咲希は、葛藤しながらも、拓斗の覚悟を受け止めるしかないと悟った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
う〜ん、舞桜のことを本当に考えるなら、早めに打ち明けた方が良さそうなのに咲希は口止めしてしまったんですよね。後で発覚すると拗れそう……。 (。ŏ﹏ŏ)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ