初恋よりも
舞桜が拓斗への想いを自覚し始めた矢先、またしても舞桜は同級生の男子生徒から告白されていた。
「小林さん、俺、ずっと好きでした。付き合ってください。」
その告白に舞桜はいつものように「ごめんなさい……私……」と、また口ごもってしまった。
そんな舞桜の姿を、少し離れた場所から拓斗が見ていた。
舞桜が困っていると、彼は決意したように舞桜の元へと歩み寄った。
そして、告白してきた男子生徒に毅然とした態度でこう告げた。
「彼女は今、誰とも付き合うつもりはないよ。それに、他の誰かを選ぶなら、きっと僕を選ぶから。」
拓斗の突然の言葉に、舞桜も告白してきた男子生徒も、呆然とした。
男子生徒が去っていくのを見届けると、拓斗は舞桜に向き直った。
彼の瞳は、強い光を宿していた。
「小林さん……いや、舞桜……。君の気持ちが、まだ揺れているのは分かっている。あと、君がずっと想ってる初恋の男の子のことも。でも……」
拓斗は一歩、舞桜に近づいた。
「初恋よりも、僕を見て欲しい。」
真っ直ぐな、そしてどこか切ない拓斗の告白に、舞桜は言葉を失った。
胸が苦しいほどに締め付けられ、同時に、温かい感情が溢れてくる。
それが、今、舞桜の心を支配する本当の気持ちだった。




