第1話:タイ、バンコクにて
三年三組が韓国に到達する二週間前、星野はバンコクで食い逃げを繰り返していた。米だけを頼み、食べ終われば逃亡する生活を繰り返していた。
「おい、おにぎり頭がいたぞ」
今日も警察に追われていた。
「くそ、行き止まりか」
足の遅い星野は見つかってから一分で路地裏の行き止まりに追い込まれた。
「あきらめな、おにぎり頭」
警察が三人近づいてくる。もう、逃げることはできない。
「ああ~どいつもこいつも」
星野は逆ギレをして、近づいてくる警察に襲い掛かった。
「どいつもこいつも」
星野は素手で警察を一人殴りつける。殴られた警察はすぐにその場に倒れた。残った二人が星野を取り押さえようと警棒を取り出した。星野は警棒を持っている手に蹴りを一発入れた。警棒は警察の手から放れ、宙を舞う。蹴られた警察は警棒を持っていた手を押さえ、うめき声をあげている。
「や、野郎ー」
もう一人の警察は警棒を振り上げた。星野は間髪入れずに警察の腹に肘撃ちをした。警察はその場に倒れた。
「もう一人いたな」
星野はそう言って、うめき声をあげながら手を押さえる警察の後頭部を殴った。三人の警察を殺した星野の手には返り血が大量に付いていた。血で染まった自分の手をみて、うっすらと笑みを浮かべた。
「これが今の俺の力か」
この時、星野の体はすこしづつ変化していた。その時、大通りから声が聞こえた。
「久しぶり、星野君」
聞き覚えのある声だ。すぐに星野は大通りへ出た。そこにはスーツ姿の男が一人立っていた。顔にはお面がつけてあり、素顔は見えなかった。間違いない、研究所にいた男だ。
「何しに来た」
星野は荒い口調で言った。
「君の三角頭が見たくなっちゃって」
逆上し興奮している星野は、背後から近づいてくるもう一人の男に気が付かなかった。ゴッと鉄パイプで殴られた星野は気を失ってしまった。二人の研究員はトラックの荷台に星野を載せて、韓国のプサンへトラックを走らせた。