第12話:亡き友
「おい、和司」
「何?」
和司と健斗は学校の中を探索していた。
「この学校ってさ麁玉中に似ているよね」
ふと健斗が疑問を口に出した。
そう言われてみると教室の配置や雰囲気が麁玉中にそっくりだった。しかし、大きさは三倍近くはあるだろう。
廊下を歩いていると教室から大きな物音が聞こえてきた。
「今の聞こえたか」
「聞こえたよ。ここは理科準備室かな」
二人は武器を構えた。
「どうする?入る?」
和司が健斗に尋ねる。健斗は笑って答えた。
「当たり前」
二人は一緒に教室に入り込んだ。和司は教室に入るのと同時に、言葉では言い表すことができない嫌な空気を肌で感じ取った。新潟の洋館に入ったときと同じ感覚になっていた。だが教室の中には大量の薬品があるだけだった。
「気のせいか」
とりあえず、二人で使えそうな薬品を探し始めた。塩酸、硫酸、水素、硝酸アンモニウムなどが手元に集まった。
ある程度、薬品が集まり教室を出ようとした時、二人の心に直接響くかのように、低く静かに奥の扉が開く音が聞こえた。
「何か来るぞ」
二人はすぐに武器を構えた。奥の扉からライスヒューマンとライスドッグが一体ずつ現れた。ライスドッグは異常に発達した牙を剥き出しにして突っ込んできた。健斗はトンファーで殴りライスドッグの首から上をえぐった。教室の中はライスドッグの血で染まっていた。
健斗はトンファーからぽたぽたと流れ落ちる血を見つめていた。その間にライスヒューマンは攻撃を仕掛けてきた。健斗は反撃の態勢に入ろうとしない。
パンッと一発の銃声が鳴り響くとライスヒューマンは床に崩れ落ちるようにして倒れこんだ。
その直後、二人は言葉を交わさなくても理解していた。奥の教室に何かがいることを。
様々な感情が自分の頭の中で交錯する中で二人は一歩踏み出し、奥の教室へと進んでいった。
「うわっ、暗っ」
教室は光が入ってくるところ全てにカーテンがしてありほぼ何も見えない暗闇の空間だった。二人は明かりを点けるため扉から離れた。すると、ガチャっと扉の鍵が閉まる音が後ろから聞こえてきた。
「ヤバい、はめられた。」
健斗はすぐにリュックからライトを取り出し辺りを照らし始めた。
「おい、扉はまだあるぞ」
健斗が教室の奥のほうにある扉を見つけた。そして、もう一つある物を和司は見つけた。
「ちょっとライトを下げてくれ」
和司にそう言われると健斗は床の辺りを照らした。その時、二人は自分の目を疑った。
「人影か」
ポツリとそう呟く。健斗は影の中心に向ってライトを向けた。そして、本体の足の部分まで照らし出した。その時、二人は自分の目を疑った。
「浮いている」
だがそんなことは起こるはずも無い。和司は目を凝らし足元に注目した。
「健斗、よく見ろ。あれは壁に浮いているんじゃない。壁に張り付けられているんだ」
健斗は和司にそう言われ、足元に注目した。確かに何かによって張り付けられていた。
ライトを少しずつ上げてみていく。そのまま上半身を照らした。上半身は服を着ていない。いや、それよりも腹部にある異常な程の傷跡が気になった。あれは強引に引き裂かれ、強引に縫い閉じたように見えた。
「ここの学校の生徒か」
ついに二人は張り付けられている人の顔をライトで照らした。
「…」
二人は言葉を発することができなかった。顔の皮膚の部分が糸で縫い合わせられツギハギだらけだった。それでも、二人はその顔の人物をはっきり覚えていた。
ついに健斗がゆっくりと口を開いた。
「と…俊弥…」
二人は何が起こっているかわからなくなっていた。
「俊弥はあの時死んだはずだろ?」
健斗のその言葉で和司は目が覚めた。確かに俊弥は死んだが、死体を連れてくることは可能。それができるのはあいつらしかいない。
和司が結論を導きだした時それは起こった。
「うわっ」
二人とも大声を上げてしまった。俊弥の腹部が異様なほど膨らみ始めた。まるで風船が膨らむようにどんどん大きくなっていく。そして腹部の傷跡から腕が一本生えてきた。いや、貫いたほうが正しいか。
そして、腹を強引に引き破り、生物が一匹誕生した。
イーターに似ているがもっと殺意めいたものを感じた。その生物は叫び声を上げる。
叫び声が終わると同時に二人は武器を構えた。