第11話:疑問
「くそっ、面倒だな」
この時、こうちゃんはライスヒューマンを掻き分け屋上へ向う途中だった。両手には特殊警棒が二本握られている。
「こっから行った方が近いな」
こうちゃんは錆び付いている扉を蹴り破り、部屋の中に入った。
「ああ、ついていないな」
部屋の中にはライスヒューマンが一体待ち構えていた。かなり大きい大きさだ。
「時間がかかりそうだな」
すぐに警棒を構え、相手の出方を見る。ライスヒューマンは単調に突進してくる。だが、スピードはあまり速くない。こうちゃんは突進を避け、反撃の為警棒を振り上げた。その時、ライスヒューマンの腕が伸びてきた。こうちゃんは渾身の力を込めて、警棒で腕を叩きつけた。その時、こうちゃんに戦慄が走る。
「こいつ、どんだけ力が強いんだよ」
ライスヒューマンの腕は叩きつけられなかった。そして、ライスヒューマンはさらにスピードを上げて迫ってきた。
「やばい、やられる」
とっさに後ろに飛び、体勢を立て直す。相手は次の攻撃の準備に入っている。
「これだけは星野を殺す時までとっておきたかったんだよな」
こうちゃんは警棒についているボタンを押した。すると、電流が警棒に流れ始めた。火花が散っている。
「今度はこっちから行くぞ!」
一瞬でライスヒューマンの間合いに入った。
「フルコンボ」
ライスヒューマンに反撃の隙を与えないほどのハイスピードで全身を殴打した。巨体が黒焦げになり、床に倒れこむ。
「死にはしない。お前は死ぬ価値すら持っていない」
こうちゃんはそう呟き、すぐに屋上に向かって行った。あの階段を登ればすぐ屋上だ。
「うわっ」
屋上には軍用のヘリコプターがあった。プロペラが回っているせいか、すごい風だ。
「一体誰が乗っているんだ」
その答えはすぐにわかった。ヘリから和磨と亮太が降りてきた。
「二人とも無事だったか」
「なんとかね。それより追っ手がくるから早く乗ってくれ」
和磨がそう言うと、こうちゃんはヘリに乗り込んだ。
「和磨、ヘリ操縦できんのか?」
「ハワイで親父に習った」
ヘリが離陸した直後、病院内のライスヒューマンが屋上に集まってきた。
「危ないところだった」
亮太は屋上に集まるライスヒューマンを見てあることを思い出した。
「そういえば、抗ウイルス剤らしき物が手に入ったんだよ」
「まじで」
和磨が驚きの声を発する。こうちゃんは既に亮太のリュックを調べていた。
「いつ手に入れたんだ」
和磨はヘリを操縦しながら軽く亮太に問い掛けた。
「サングラスの男が落としていったんだよ」
「あ、本当に入っている」
こうちゃんは白いケースから取り出している。
この時、亮太は変な違和感を覚えていた。いや、正確にはサングラスの男と病院で会ったあの時から。一体何故あの男に違和感を覚えたんだ。
そういえば、サングラスの男はあの時、
「亮太、貴様一体何を撃った」
「亮太、貴様…」
「亮太…」
そうだ、なんでだ。
「なんで俺の名前を知っているんだ」
「亮太何か言った?」
和磨の声を聞き、亮太は考えるのをやめた。
「別に何でもないよ」
「そうか」
和磨は再び操縦に集中し始めた。