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第10話:暴力

「あ~邪魔くせ~」

和磨は廃病院の中で暴れていた。かつてこの病院に入院していた患者や働いていた医者などがライスヒューマンになって襲っていた。和磨はライスヒューマンを殴り倒していくが数が多すぎてキリがない。体力に自信がある和磨も流石に息が切れてきた。和磨だけでなく亮太やこうちゃんもだ。

「三人だと逆に不利だ。ばらけよう」

亮太がそう言うと和磨とこうちゃんは軽く返事をし、ライスヒューマンを掻き分けて進んでいった。

「後で屋上で」

亮太が大声で叫ぶと三人は完全にバラバラになった。

「どらぁ~」

和磨はライスヒューマンから逃げ切り、手術室に逃げ込んでいた。

「よし何もない」

そう言った矢先、前方からメスが飛んできた。横に飛び回避したが右頬にかすり傷を負った。

「ふざけやがって」

和磨は視線を前に向けると全身にメスが刺さったライスヒューマンが立っていた。しかも次の攻撃の準備をしている。

「あまり俺様をなめるんじゃねぇ」

一瞬でライスヒューマンの懐に詰め寄る。

「おい、世界で一番強い力を教えてやる。それは暴力なんだよ」

和磨は右腕を振り上げた。

「スクリューオタブロー」

ひねりが加えられたパンチはライスヒューマンの頭を粉々にした。

「きもいんだよこの米粒野郎」

和磨は手の汚れを払った。

そのころ亮太は別の手術室の前に立っていた。ライスヒューマンも、もうじき追いついてくるだろう。

覚悟を決めた亮太は扉を開け中に入っていった。中は薄暗く奥の方はよく見えなかった。床には無数のカルテが散らばっている。特に何も考えずに亮太は数枚のカルテを手に取った。ほとんどのカルテは中国表記だったが一枚だけ日本語表記のものがあり疑問を持った。ここは中国の病院だろ。その答えはカルテを読めばすぐに分かった。

「星野…太希」

そこには星野の顔写真と情報が詳しく書き記されていた。もしかして、星野はここで・・・・

その時、初めて奥の椅子に誰かがいることに気がついた。

「誰だ」

返事は無い。だが足音は近づいてくる。足音が大きくなったとき顔がはっきりと見えた。

「お前が星野を改造したのか」

怒りで声が震えていた。前に立っているのはサングラスをかけた男だった。サングラスの男は静かに口を開いた。

「普通のライスヒューマンじゃ物足りないと思ってね。何か気に障ったかな」

この男、淡々と言いやがって。亮太の中で怒りがこみ上げてくる。

「ふざけやがって」

亮太は腰にかけてあるベレッタM92を構えた。

「おおっと怖い、怖い。私はここで死ぬわけにはいかないんでね。代わりにこいつが相手をするよ」

サングラスの男が指をならすと扉の奥から一体のライスヒューマンが現れた。両手には血のついた鎖鎌を持っている。

「さぁ殺れ」

男の命令によりライスヒューマンは機械のように亮太に向っていく。四方八方から鎖鎌が亮太を襲う。亮太はなんとか全ての鎌をかわしていた。

「よし、ここから反撃…」

反撃しようとしたが亮太はいつの間にか部屋の隅に追い込まれていた。

「やっべ…」

そんなことはお構いなしに鎖鎌は飛んでくる。亮太は壁を蹴ってライスヒューマンを飛び越え、空中で拳銃を二丁取り出し、ライスヒューマンの背中に撃った。

「やはり、効かねぇか」

ライスヒューマンはこちらを向いてきた。

「お前達が強くなっているようにライスヒューマンも強くなっているのだよ。さっさと殺されてしまえ」

男の笑い声と鎖の金属音が部屋全体に響き渡る。

「もう充分楽しんだか」

ライスヒューマンの動きが止まった時、亮太が男に尋ねた。

「ハッ、何を言っているんだ殺戮ショーはこれからだろ」

亮太は新たに銃弾を装填し、発砲した。男の次の言葉をかき消すように一発の銃弾が部屋にこだまし、銃弾はライスヒューマンの腹部に直撃した。

「フリーズショット」

「おいおい、一体どこを狙っているんだ。梅干を狙わなければいけないことを忘れたのか。もういい、さっさと殺してしまえ」

男が命令してもライスヒューマンは動かない。

「おい、何をしているさっさと殺してしまえ」

それでもライスヒューマンはピクリとも動かない。

「亮太、貴様何を撃った」

「フリーズショットは銃弾の先端に液体窒素が詰まっている。当たれば一瞬で氷漬けさ。さぁ、次はお前だ」

亮太は銃口を男に向ける。

「さっきも言っただろ。死ぬわけにはいかないって」

男は懐から何かを取り出し、床に叩きつけた。その直後部屋中に白い煙が充満した。

「くそっ、煙幕か」

扉が開く音が聞こえる。

「逃がすか」

素早く銃を構え、足音が聞こえる方向に向って引き金を引いたが銃弾は何かに当たった。煙幕が消え視界が晴れる頃には男の足音も聞こえなくなっていた。

「あれは何だ?」

男の居た場所に白いケースが落ちている。煙幕を出すときに落としたな。慎重にケースを開けると液体が入った細長いビンが四本入っている。これはもしかして・・・

「もしかして、抗ウイルス剤か」

亮太はケースごとリュックに詰め込んだ。

「早く屋上に行かなきゃ」

部屋の真ん中で倒れているライスヒューマンには目もくれずに、亮太は手術室を抜け出した。

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