プロローグ:不審船
連載再開です。
「なんだ、あの船は」
プサン沖をパトロールしている韓国人の海上保安官が二隻の船を発見していた。
「おい、起きろ」
保安官はすぐに寝ている仲間達を起こす。
「なんだよ」
「おい、あの船なんだが」
船を指差して言った。船には日本語で何か文字が書かれていた。
「おかしいな、日本の船はもう無いはずなんだが」
この男の言うとおり今の日本には船どころか、人すら存在していない。ライス・ハザードという首謀者不明の事件により、人がほとんど死んでしまったのだ。なので、日本は地図上から消えたことになっていた。
「とりあえず本部に連絡を入れる」
本部に連絡を入れるために、リーダー格の男は操縦室へ向った。
「あー、こちらパトロール船三十四号、プサン沖にて不審漁船を発見。繰り返し…」
無線を入れ終えると男はすぐに甲板へ戻っていった。
「おい、何か動きはあったか」
「いえ、今のところはまだありません」
「隊長、もしかしたら遭難船ではありませんか」
「それはあるかもしれんな」
他の隊員も頷く。
「よし、ゆっくり接近していくぞ」
隊長はそう言って、船を怪しげな漁船に近づけていった。
「おい、一体どこの船だ」
甲板から声を呼びかけたが返事は返ってこない。
「隊長どうしますか」
「やむをえん、飛び移れ」
最初の隊員が不審船に飛び移ろうとした時、ドンドンと不審船の甲板に誰かが出てきた。まだ夜が明けていない。そのため、相手の人数までは把握できなかった。背丈からして中高生か。
「君達は何者だ」
隊長が問いかけるが返事は返ってこない。再び、隊長が問いかけようとしたとき、その誰かはいきなりこっちの船に飛び移ってきた。
「もう一度聞く。君達は何者だ」
こっちの問いかけなど全然聞いていない。いや、もしかしたら、言葉が通じていないのか。
その時、隊員の一人が殴られた。ぐわぁぁとうめき声を上げる隊員。今のでアバラの二、三本はやられたか。今度は違う方向から銃声が聞こえてきた。次々と隊員が倒れていった。
「くそ、やつら戦い慣れていやがる」
いつのまにか隊長しか立っていなかった。そして、気が付くと目の前に敵が立っている。
「バ~カ」
一人の男が何のためらいも無く銃の引き金を引く。意味はわからなかったが、その言葉は完全にこっちを馬鹿にしていた。隊長は自分を撃った男の顔が確認できずに、甲板に倒れた。
「ふ~終わった」
ちょうど日の出だった。日本を出て二週間、ようやく韓国の近くまで来ることができた。朝日に照らされているのは三年三組のメンバーだった。
「おい、みんな見てみろ」
康太がそう言うと、三年三組のメンバーの目の前に広がるのは、広大な朝鮮半島だった。
「やった~」
みんな歓声の声を上げる。
帰る場所の無い三年三組のメンバーは歴史のあるアジアで新たな伝説を造り上げていく。