表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第四話 俺の自由時間が減るのは、幼なじみのせい

 面接から一週間経った土曜日の午前、のんびりとリビングでゲームをしていると、スマホの通知音が鳴り響いた。

「え、これって…」


 画面を見てみると、件名は「面接結果」。送り主は「VA-PROオーディション事務局」だった。


 胸が高鳴る中メールを開くと、確かに「おめでとうございます。オーディション合格です。」と書かれている。


「まじかよ……」

 驚きと同時に、なんとなく不安も湧いてくる。軽い気持ちで由乃に流されて始めたことが、こうして現実になってしまったのだ。


 その時、スマホが震え、画面には「鈴咲由乃」の名前が表示された。

「そうたーーー!!!」

 出た瞬間、通話ごしに元気な声が響き渡る。


「ヴァープロの合格通知が来てるよ!見た?」

「ああ、見た」

「結果はどうだった?」


 あまりにも直球すぎる質問に、少し間を置いてから答える。


「そりゃもちろん受か―――」

「え!落ちてたの?大丈夫だよ落ち込まな――」

「落ちてねえよ!受かってたわ」


 話が逸れすぎて、思わずツッコミを入れてしまう。


「え!?受かってたの?だるそうな声してたからてっきり落ちたかと。」


 俺ってそんなにだるそうな声なのか?と内心ツッコミながらも、めんどくさくて反論はしない。


「でもこれで2人でVTuberデビューだね!早速準備しよっか!」

「準備っていっても何すればいいんだよ?」


 正直、そこが全然見えない。デビューしても自分がVTuberとしてどんな配信をするか、イメージが湧かない。


「まずはー機材から用意するんだけどね、ヴァープロから送られてきた段ボールってない?」

 由乃が指で箱の形を作る。

「えーああ、あれか。」


 俺が指差すリビングの隅には、おそらく機材が入っている段ボールが

、数個山積みになっている。


「で、これをどうするんだ?」

「配信部屋ってどこ?」

 配信部屋か、全く決めとらんかった。とりあえずは―――


「俺の部屋、だな」

「そっか!それじゃ、れっつごー!」

 由乃が変な笑みを浮かべる。こういう時は大体悪いことをたくらんでいる。


―――やはり当たってしまった……


「おい、何してるんだ?」

 と言ったものの聞かなくてもわかる。これは完全に侵略だ。

「幼なじみの部屋だよ?普通来たら探索するでしょ!」

 これが普通なのか?今は気にしないでおこう


「それで、準備はしないのかよ」

「あっ!すっかり忘れてた」

 おい、忘れんな。

 由乃はテヘッとウインクをする。


「さっきダンボールを開けたら説明書見たいなの入ってたよー」


 由乃から説明書をとると、中身は機材内容についてだったり組み立て方についてだ。


「パソコンに、マイク、パソコン内にソフトも入れないとだし…え俺これ一人でやんの?」

「私もいるよおー!!」

 由乃はぷくぅっと頬を膨らませる。

 その様子に思わずため息が出る。手伝うといってもどうせ途中で飽きるのが目に見えてる。だが言わないのが良策だ。

「じゃあまずは机の上から片付けるか」

「イエッサー!」


 そういって由乃は机に勢い良く向かい、上にあった本や雑貨を抱え込む。だが次の瞬間バランスを崩し、全てを床に落としてしまう。


「大丈夫か?あんま無理すんなよ」

「ごめんごめん、でも机の上は綺麗になったよ!」

「床…」

 なんもいわないでやるか。


 ようやく机の周辺が綺麗になり、段ボールの中身をだす作業へと移った。

「これがカメラで、これがマイクで、え、これどっちが上?」

 由乃は手にしたカメラをもってぐるぐる回す。その姿を見て不安になるのは当然だ。


「それ落とすなよ」

「落とさないってば!信じて!」

 信用ならない言葉に不安が増すが、俺は説明書を読んで作業を進める。


 何とか全ての機材を準備し終えた頃には、もう夕方だった。

「やったーこれで配信準備かんりょー!」

「じゃ、もう暗くなるから早く帰れよ」

「はいはーい」

 隣の家へと帰っていく由乃を見送り家に入る。


「今日は一日中ゲームする予定だったのに…せめて、せめて夜だけは!」

 そんな願いも届かず、スマホの着信音が鳴った。

 出たくはないが、しょうがなく出ると、

「ぞーだぁー」

 数分前まで自分の家にいた女の声が聞こえてきた。


「まだ私準備してながったー」

「別に明日でいいじゃねえか」

「何言ってんの!明後日が私の初配信、その次は颯太だよ!」

 は?いや初耳なんだが、てか急にケロッとした声で言われても怖ぇわ

「だから明日配信の素材準備しないとなの!つまり…」

「つまり?…」

「今から機材の準備手伝って」

「うん。やだ」

「おねがーい!颯太しか希望がないんだよ!さっき手伝ってあげたじゃん!」

 頼んだつもりは一切ないがな。

 このまま粘っても結局は強制的に連行されるから、行ってやるか。

「しゃーねぇな行くから待ってろ」

「やたー!」


 この日の夜、結局颯太は由乃のせいでゲームが出来なかったという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ