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第二話 秘密の面接攻略特訓

 そんなことがあってから3日後の金曜日。俺はいつものように旧校舎の階段で昼食を取りながら、ぼんやりと校庭を見ていた。

 心地よい静けさに浸っていると、不意にスマホが震える。LINEの通知音が響いた。


「至急!旧校舎階段集合!」


 旧校舎階段……ってここじゃねえか。どんな急用だよ、と思った矢先、階段下から慌ただしい足音が聞こえてきた。


颯太そうたー!いたー!」

 由乃ゆのは階段を駆け上がり、俺の目の前で急停止した。やたら元気で、息を切らしている様子もない。


「どうしたんだよ、そんなに慌てて。」

「どうしたもこうしたも、重大発表があるの!聞いて、颯太!」


 由乃は一気に言い切ると、自信満々の笑顔を浮かべて胸を張った。


「明日、面接だよ!」

「……面接って、何の話だよ。」

「決まってるでしょ!ヴァープロのVTuberオーディション!」

「ちょっと待て、お前。いつの間にそんな話に進んだんだ。」


 俺が困惑する間もなく、由乃は勢いよく続ける。


「私、申し込むって言ったでしょ?あれ、本当に応募したんだよ!で、書類審査通っちゃった!」

「お前が、か……。」

「それでね!なんと颯太も一緒に通ってたの!」

「俺は応募してないぞ。」

「代わりに応募しといたから!」


 悪びれた様子もなく言い切る由乃に、俺は呆れるしかない。


「お前さ……それって普通、事前に確認するだろ。」

「だって颯太、迷ってる間に応募締め切っちゃうでしょ?だから、私が先手を打ったの!」


 彼女なりの気遣いなのだろうが、正直ありがた迷惑だ。


「で、面接はどこでやるんだ。」

「駅前の貸会議室だって!午後1時集合だからね!遅れないように!」

「貸会議室って……そんな本格的な感じなのかよ。」


 不安が募る俺をよそに、由乃はウキウキと次の話題に移る。


「服装は自由だって書いてあったけど、私は可愛いリボンつけようかな!颯太も何かおしゃれしてよ!」

「俺が持ってるのは制服くらいだ。」

「じゃあ清潔感を重視して、ちゃんとアイロンかけてね!」


 彼女の話にツッコミを入れる気力もなく、俺は軽く溜息をついた。


「で、面接ってどんなことを聞かれるんだ?」

「それならバッチリ!昨日徹夜して質問リスト作ったの!」

「徹夜って……。」


 由乃は嬉しそうにプリントを取り出して見せる。そこには「VTuber面接対策!」と手書きで書かれていた。


「ね、これ読んでおいて!練習もしよう!」

「今?」

「もちろん!時間を無駄にしないのが成功への近道だよ!」


 彼女の熱意に押される形で、俺は渋々質問練習に付き合うことになった。


「じゃあ最初の質問ね!『なぜVTuberになりたいんですか?』」

「……特に理由はない。」

「不採用!」


 即答する由乃に、俺は思わず苦笑した。


「真面目にやってよー!」

「お前のその軽いノリが真面目に見えないんだが。」


 昼休みが終わるまで、俺は由乃のペースに振り回されっぱなしだった。翌日の面接がどうなるか、想像するだけで胃が痛い……。

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