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第一話 幼なじみによるVTuber勧誘

 いつもと変わらない昼休み。

 俺は旧校舎の階段で、昼食を取りながらぼんやりと校庭を見ていた。

 学校生活も2ヶ月が経ち、特に何も起こらない日々に少しだけ物足りなさを感じている……なんて事はなく、これでよく、これがよかったのである。今の生活が好きだ。


 昼休みも終わる5分前となり、片付けをしながら教室に戻ろうとしたその時だった。


颯太そうたー!やっぱりここにいたー!」


 軽い足音とともに聞き慣れた声が響く。顔を覗かせたのは鈴咲由乃すずさきゆの。この学校での俺の幼馴染で、唯一と言っていい友人だ。

 制服のリボンが少しだけ曲がっているあたり、相変わらずの由乃ゆのらしい。


「お前がここに来るなんて珍しいな。どうした?」

「どうしたって、颯太そうたがいなくて寂しかったんだもん!」


 そんなことを堂々と言いながら、俺の隣にドスンと腰を下ろす。由乃は笑顔を浮かべながら、やたらとキラキラした目でこちらを見てきた。


「で、何だよ?」

「ふふふ、それがさー、颯太にめっちゃいい話があるんだよ!」


 妙に自信満々なその態度に、嫌な予感しかしない。


「……嫌な予感しかしないんだが。」

「えー!まだ何も言ってないのにー!」


 ぷくっと頬を膨らませる。


「えっとね!颯太!私と一緒にVTuberやらない?」


……予感は的中した。


「…は?」


 言葉の意味を理解できずに固まる俺をよそに、由乃はまるでこちらの反応を予測していたかのように、一気に畳み掛けてきた。


「今ね、VTuberの大手企業『ヴァープロ』が新人VTuberを募集してるんだって!これ、絶対面白いと思わない?だから一緒に応募しよ!」


「いや、俺はやめとくわ。めんどいし。てか、なんで俺なんだよ?他のやつ誘えばいいだろ。」


 当然の疑問をぶつけると、由乃は少しだけ得意げに胸を張った。


「それがね、颯太じゃなきゃダメなんだよ!私、ずーっと見てきたけど、颯太って実は面白いし、絶対伸びると思うの!」


 どこからそんな自信が湧いてくるんだ……。


「……だとしても、俺には無理だ。」


 そう言って、教室に戻ろうと階段を下りる。しかし、由乃の声が背中越しに追いかけてきた。


「じゃあこれならどう?」

「……?」

「『|らん駄目《らんらんだけじゃダメですか?》』の限定特典、つける!」


 その言葉に、思わず足を止める。


「あのラノベの特典か……?」

「あ、食いついた!」


 由乃はニヤリと笑って指を立てる。


「これで私と一緒に応募決定ね!」

「……分かったよ。考えとく。」

「やったー!」


 嬉しそうに手を叩いて飛び跳ねる姿を見ていると、なんだか断るのも悪い気がしてくる。


「じゃあ、もう2人分応募しといたから!」


 ……は?


「おい、それっていつ応募したんだ?」

「昨日だよー!」

「もし俺がやらないって言ったらどうするつもりだったんだよ。」

「その時は……無理やりでも説得するつもりだった!」


 ドヤ顔で言い放つ由乃に、頭を抱える。


「まぁまぁ、結果的に応募したんだからいいじゃん!私、絶対楽しくする自信あるし!」


 キリのいいところで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。


「ほら、授業始まるよ!早く戻ろ!」


 由乃に引っ張られながら教室に向かう。──やっぱり、やめておくべきだったかもしれない……。

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