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4.洗礼の儀



扉を開けた先には、平民の私じゃもう二度とここ以上に美しい建物を拝めないんだろうな。という感想しか出てこないような、それはそれは美しい内装があり、その壮大な建築に圧倒された。


どこまでも伸びる天井の頂点は色とりどりのステンドグラスで星が描かれており、そこから黄金のシャンデリアがまるで満月のように輝いている。

大聖堂全体が白亜で作られており、それを支える柱全てに精霊の彫刻が施されている。

美しさと清廉さが調和されており、息を呑むしかできなかった。

一際目を引くのが、大聖堂の大広間の最奥にある女神像だ。

まるで女神ステラルが本当にそこにいるかのような精巧さで、大聖堂に来るのが初めてであろう平民の少年少女達はその像に釘付けになっている。

中には涙しているものもいるほどだった。



「洗礼の儀の参加者ですね?さぁ、こちらにお並びなさい」



大聖堂の迫力に呆気にとられて立ち尽くす私を見かねて、中で待機していたシスターが列に並ぶよう促し、私はゆっくりと列に並んだ。どうやら私が最後の参加者だったらしい。

参列者には私たち意外にも大人の貴族数名もいるようだった。おそらく王城からの使者なのだろう。


しばらくすると奥から絢爛豪華な衣装に身を包んだ老人が姿を現した。威厳に満ちた白く長い顎髭が印象的で、その表情はきりりとしており厳しそうな人だなぁとボンヤリと見ていた。



「神星国アスティランの若者に星女神ステラルの星光があらんことを。私はこの大聖堂の大司教ピエール。今日ここに集まった雛たちを立派に巣立たせる大役を任せられた者だ。」



老人もといピエール大司教の話がはじまった。



「神星国アスティランが女神ステラルによって建国されて今年で1000年が経った。君たちはそんな特別な年にこの洗礼の儀を受けられることを誇りに思い給え。」


大司教が参加者の少年少女を見渡し、一呼吸おいて続ける。



「我々の主神である女神ステラルは、今から1000年前、この地に顕現し、当時荒れ狂っていたこの大地を治るべく一対の精霊(トワル)を創りたもうた。その精霊が男女の人間になり、それが後にこのアスティランの国王と輝神教の教皇となった。2人はその後別の精霊を生み出し、彼らを貴族として迎え入れ、荒れたアスティランの大地をお治めくださった。」

「精霊同士では子をなすことができないため、初代国王をはじめとした多くの精霊は精霊を生み出した後、本当の人となり、多くの子をなして国をより豊かにしていった。しかし人になった精霊は元来の神の力が行使できなくなってしまっていた。嘆き悲しんだ元精霊たちを見た女神ステラルは彼らを哀れに思い、精霊を授けることにした。それが洗礼の儀のはじまりである。」

「現在の洗礼の儀とは、この水盤の中に君たちが手をひたし、女神ステラルへ祈りを捧げることで神の奇跡がおこり、小さな宝石でできた卵を賜ることができる。それをひと月の間温め続けることで精霊(トワル)が誕生し、君達を生涯導く永遠の友ができるのだ」


大司教は自身の精霊を手に乗せてこちらに見せながら私たちになお語る。


「精霊はどんな時も君たちの側を離れない。そして彼らには我々人間にはない神の力を使うことができる。君たちが精霊に心を開いたとき、精霊もまた心を開きその力を君たちのために行使してくれるであろう。しかし中にはその力を悪事に使用する者も少なからずいる。そのような者は決して死後女神ステラルの元へは行くことはないのだ。くれぐれも精霊の力を悪用せず、善行を積み、女神ステラルに恥じない人生を送ってほしい。」


そう言葉を締めると彼は次に大きな巻物を用意し、「それではこれより洗礼の儀をはじめる。呼ばれた者は前に出てくるように」と皆の名前を読み上げ始めた。

呼ばれた者は緊張した面持ちで水盤の前に立ち、徐に両手をその中へ浸した。


「星女神ステラルへ祈りを」


大司教に促され、最初の子が祈りをささげると柔らかな光が彼を包む。そして光がおさまるとその他には青い宝石でできた小さな卵が両手の中に出現していた。


卵を手にした少年は大司教へ礼をし、意気揚々と壇上から下がる。そしてまた次の子どもが壇上に呼ばれるという繰り返しになった。


私は自分の番が来るのを今か今かと心待ちにしながら皆の洗礼を見守っていた。

事前に父さんから聞いてきたことだが、私たち平民の卵はみな青色になるそうだ。貴族の子供は赤、王族は紫の卵を賜るらしい。

卵は青よりも赤、赤よりも紫の方が生まれてくる精霊の能力が強いのだそうな。

ま、私は精霊の能力より精霊を賜われること自体が嬉しいからなんだっていいんだけどね!


などと考えていた時


「アルマ・ブラン」


私の名前が呼ばれた。

ついに…!ついにきた!


「はい」


精一杯興奮を抑えながら返答し、壇上に上がった。

小さく深呼吸をし、水盤に手を浸す。水を伝って何か懐かしい力が私に流れてくる。


「祈りなさい」


大司教の声を聞き、目を閉じる。


(星女神ステラル様。アルマ・ブランです。ステラル様のお力を私にお貸しください。)


そう祈った瞬間、今までの優しく淡い光とは全く別の

大聖堂ごと飲み込まれるのではないかと思われるほどの強力な光が私たちを覆う。

その光の奥から声が聞こえた。





【やっと会えるわーーーーーーー】







ハッと気づくと光はおさまっており、周囲も呆然としていた。私も何が何だかわからない…皆一様に立ち尽くしていると



「こっ……これは!!!!」



と大司教が私の手元を見ながら叫んだ。

そう、私の手の中にあったのは青色でも赤色でも紫色でもない







金色の卵だったーーーーーーー










今回もお読みいただきありがとうございます!


女神ステラルは「星女神」が正式名称ですが、便宜上「星」を省くことが多々あります!

ああよういうものなんだな、くらいに思っていただけると幸いです笑


時間もよろしくお願いいたします!

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