3.扉を開くと
私の家は大聖堂のある中央区画から少し北にある。
王都パラディは王城と大聖堂がある中央区画を中心に平民区画と貴族区画で大きく2つに分断されている。
北は貴族たちの住まう区画で、南は私たち平民が住まう区画。
2つに分ける境目にはとても高い壁が設けられており、門番はもちろんのこと、壁沿いに一定間隔で衛兵が警備についているのだ。
私たちは平民区画の右端の方に住んでいるため、中央区画までは歩いて1時間ほどかかってしまうので結構大変。
平民区画の商店が並ぶ大通り以外は舗装などされていないので、馬車や人の往来のせいで常に土埃が舞っている。
せっかくお風呂に入ったのに大聖堂に行くまででまた汚れちゃうよ〜!
両親と他愛もない話をしながら歩いていると、あっという間に中央区画前の門にたどり着いた。
門番に洗礼の儀のために大聖堂は行くと伝える、事前に送られてきている大聖堂からの手紙を渡すと、全員住所と名前を言うよう指示された。
父さんが代表して住所を伝え、各々名前を伝える。
門番が一度奥に下り、数分後通行許可がおりた。
門を抜ける直前、門番が小さく「おめでとう」と私に祝福の言葉を贈ってくれた。
「ありがとうございます」と返答し、私は胸を張って中央区画に足を踏み入れる。
「父さん、母さんあのね、今門番さんがおめでとうってお祝いしてくれたの!ここの門番さんはとてもいい人だね!」
「そうか。アスティランの国民は皆洗礼の儀がいかに大切かを知っているからな。そういう人も多いのかもしれないな」
「うん!はー、今日は本当にとてもいい門出になりそうだな〜!」
「アルマ、張り切りすぎて儀式中に粗相がないようになさいね」
「もー!母さんったら心配しすぎ!私だってそのくらいわかってるよー!」
和気藹々と話していたその時、大聖堂から鐘の音が鳴り響き始めた。
「いけない!もうすぐ儀式が始まる合図の鐘だ!父さん母さん、私先に行くね!」
「ああ。父さんたちは儀式中大聖堂に入らないから外で待ってるからな。きちんと大司教様のお話を聞いて、しっかり洗礼をこなしてきなさい」
「うん!じゃあまたあとで!」
軽い別れの挨拶をし、私は大急ぎで大聖堂へ向かう。
寝坊なんかしなければもっと余裕を持って到着できたのにー!なんて後悔をしても今更だ。
星の暦はまだ涼しいが走れば多少は汗が滲んでくる。
息を切らしながら、大聖堂の前の衛兵に今日の洗礼の儀の参加者だと告げ、参加者の証の手紙を見せる。
「ギリギリ間に合ってよかったな。さあ、入りなさい」
「はい。失礼します。」
衛兵からの許可を得て、静かに大聖堂の扉を開く。
ギィ…という扉の軋む音が大聖堂内に響くと同時に私の目に入ってきたのは、今までに見たことのないような光景だったーーー
今回もお読みいただきありがとうございます!
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