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第51話 埋蔵金? その二

 俺は二時間ほどかけて結城市内のディスカウントスーパーの駐車場へ出向いた。

 東京じゃあまり見かけないディスカウントスーパーなんだが、関東一円に店舗を持っている会社のようだ。


 都内にも一応あるんだが、どちらかというと都心部には無い。

 郊外型と云うのか、幹線道路に面した場所で比較的広い駐車場を持つ店舗のようだ。


 食料品だけでなく食品・家電・衣料・洗剤・DIY用品・OA・AV用品・カー用品・文具・ペット用品・ベビー用品・化粧品・時計・園芸用品等何でも置いている便利店舗だな。

 四十住(あいずみ)雅彦(まさひこ)さんが何の目的でこのディスカウントスーパーに現れたのかは定かではない。


 彼が結城市に来た本来の目的はおそらくただ一つ。

 結城氏の財宝探しにあるはずで、その最も可能性の高い結城城址から直線距離で2.4㎞、車で道路を走ると3㎞を超える場所のすスーパーに何故立ち寄ったかだよね。


 DIY用品も置いているようだから或いは発掘に必要な道具とかを探しに来たのか?

 でも、エレック君に頼んで防犯カメラの記録を確認してもらったら、彼氏はこの店には入っていないんだ。


 で、エレック君が見つけた他の防犯カメラの映像と街路樹の霊から得た情報で辿り着いたのが、ディスカウントスーパーから百メートルほど北にある小さな古墳だった。

 古墳と言えば前方後円墳のような形が有名なんだが、古墳にもいろいろな形がある、


 そこにあったのは方墳だ。

 東西約20m、南北約25m、高さが5~6m程の小山に過ぎない。


 この古墳どうも南側の一部が切り崩されていて少し小さくなっているらしい。

 一応、道路から見える位置に看板が立っていて、古墳の名前が分かったが、それが重要ではない。


 ここにコンちゃんが反応したのだった。


『ふむ、近づいて初めてわかったが、ここには影の空間があるな。』


 いきなりそんなことを言われても、初めて聞く名称なので俺にはわからない。


『影の空間?

 なんだ?それ?』


『普通の者には、目に見えぬから認識できないし、触れることもできない空間なのじゃが、ある意味で隠れた(ほこら)じゃな。

 かつては物の怪と呼ばれるものが、隠れ住んで居ったのじゃが・・・。

 現代(いま)では、それも少のうなった。

 霊の存在も、物の怪の存在も知らぬ者がやたらとあちらこちらを掘り返すでな。

 祠の方陣が崩れて、奴らの居場所がなくなったのよ。

 ここもそうじゃろうな。

 墳丘の南側の一部が削られて、影の空間に異常が生じておる。

 そうしてまた、かつては、特定の陰陽術師かもしくは物の怪でなければ開かぬはずの秘密の入り口が半ば開いておるでな。

 これでは稀に普通の者が入ってしまうこともあるじゃろうな。』


『おいおい、ここは一応史跡になっているから、県又は市が管理しているはずだ。

 それなりに学術調査も入っているはずだし、調査中にそんなものが分かれば放置はせんだろう。』


『ふむ、おぬしも逢う魔が時(おうまがとき)を知っておろう。

 日没時の暗がりになる少し手前の時期を言うのじゃが、学術調査などというモノはどうせ学者がする者じゃろうから、日暮れ前には仕事を終えておろう。

 従って、彼らが影の空間に入り込むことはないじゃろうの。』


『それにしても、影の空間に入り込んでもすぐ出て来れそうなものではないのか?』


『いやいや、普通の者が影の空間に入り込めばそこから出ることは難しいじゃろうのぉ。

 そもそもが物の怪が隠れ住んでいた場所じゃぞ。

 入るにも出るにも、本来はかなりの霊力が必要じゃ。

 それが墳丘の一部が崩れたことにより、入り口のみが一部解放されたに過ぎない。

 おぬしのような特異体質の者ならばいざ知らず、普通の人間ならば出てはこれぬ落とし穴のようなものじゃぞ。

 中に入ればまず出ては来れぬし、水・食糧が無ければ生きては行けぬ。』


『中に生気は?』


『ないのう。

 ここに落ち込んだとすれば、まず、生きてはいまい。

 確認するか?』


『おう、できれば頼む。』


 コンちゃんが影の空間に入って調べてくれた。

 中には遺体がいくつかあったそうだ。


 一つは四十住雅彦であることが確認された。

 他に白骨の死体が四つほど。


 白骨死体は、死後少なくとも十年近くは立っているだろうとのことだった。

 重要なことがもう一つ、この影の空間につながる自然の洞窟があり、そこに竿金(さおがね)多数が収められている木箱があるそうだ。


 竿金というのは、戦国時代から江戸時代にかけて、銀や金の塊を竿状(棒状)にして保管して置き、必要な折に切って使う代物だ。

 或いはこいつが結城氏の財宝なのかもしれない。


 さてどうするかだが・・・。

 四十住雅彦氏の遺体を回収するとなれば、どうしても影の空間に入り込まなければならないし、そこから、どこに、どうやって出すんだ?


 下手をすれば俺が四十住氏殺害の犯人にされかねないよな。

 これが殺人ならば犯人しか知り得ない死体のあり場所を知っているんだから・・・。


 たとえ死因が餓死だとしても、俺が閉じ込めていたんだろうと疑われればきりがない。

 警察は疑うのが商売だからな。


 とは言いつつも、渋谷署の大山さんや警視庁の神山さんに面倒をかけるのもなぁ。

 東京都内ならばなんとかなっても、茨木県は遠いし、組織が違う。


 それなりに伝手はあるだろうけれど、そもそも何と言って彼らに説明する?

 俺としては俺の能力を外部に知られるのが一番困るんだ。


 本来は探偵業にもかかわらず、下手をすると、霊媒としての能力を頼りにされる恐れが高い。

 霊媒ってのは(てい)のいい通信機代わりに使われるからな。


 だから亡くなった方とお話できますなどと云う怪しげな交霊会の詐欺も多い。

 全てが詐欺とは言わないけれど、死人の霊なんぞはそうそうこの世に残っているわけじゃないし、特定の霊をあの世から呼び出せるわけでもないことは俺も知っている。


 よくわからんが、あの世があって大抵の人は向こうに行ったきりになるんだ。

 例外的に居残ったものが幽霊になったり、残留思念の怨霊になったりする。


 従って、頼まれても霊界通信なんぞはできないだろうから、正直言って霊媒なんぞにはなりたくはない。

 それぐらいなら探偵辞めて引きこもるぞ。


 色々考えて、市役所に発掘届を出すことにした。

 一般の人は、影の空間にはおいそれとは行けないが、実は財宝がある洞には行けそうなんだ。

 

 そうしてその洞窟からならば影の空間の機能が壊れていてつながっているから、遺体も収容できる。

 この方法なら特段の霊能力は不要なんだ。


 無論俺の霊能力で影の空間に入り込めるし、そこから四十住氏の遺体だけを持ち帰ることもできるが、理屈の通った周囲に説明ができない以上この方法は諦めるしかない。

 一方で、結城氏の財宝発掘調査については、過去に何度もある話であるために市役所でも毎度のこととして意外と簡単な手続きで済むらしい(ダイモンのコメント)。


 勿論、発掘をしたら復旧をしなければならないのは言うまでもない。

 場所は、例の方墳の西側を通っている幹線道路の歩道なんだ。


 この歩道が実に広い。

 もしかすると将来道路を拡幅するために広くとっているのかもしれないが、歩道部分が植え込みなどを入れて6m以上もあるんだ。


 で、コンちゃんやダイモンに調べてもらったら、例の洞窟は、地下3.5mほどにあって、歩道の下には水道管やらがあるけれど、上手く掘ればそれに触れずに洞窟まで達することができるようだ。

 但しここで重要になるのが、そこに財宝が眠っているとする根拠だな。


 市役所もあちらこちらをむやみやたらと掘り返されてはたまらんから、それなりの根拠を示さないと発掘許可が降りん。

 まして、史跡である方墳の極々近傍だ。


 史跡を壊すような申請ならば当然許可は出ないだろう。

 幸いにして、6m幅の歩道部分の2m四方程度を掘るだけなので、人の通行にも影響を与えない。


 それなりの根拠が有れば発掘調査の許可は出るはずと踏んで、俺は奥の手を使うことにした。

 まぁ、簡単に言えば私文書偽造だな。


 神代文字の一つ阿比留草文字(あひるくさもじ)で古文書を偽造したよ。

 この偽造にはコンちゃんが統括して陰陽師の居候などが色々手伝ってくれた。


 こいつは少なくとも頼朝以降(12世紀末)から戦国末期(17世紀初め)ぐらいの時代に合わせなければならないから、美濃紙を作るところから始めたんだぜ。

 手漉きの和紙を作って、そいつに神代文字で場所を特定する文章を書き、今でも残る史跡や山からの方位で位置を特定させた。


 特にすぐそばの方墳は良い目印になるよな。

 結城晴朝(結城家17代当主)の花押印を偽造してあれば、市役所も信じざるを得まい。


 こういう文字の偽造に長けた居候も居るんだ。

 そうして、更に、こいつを俺の居候の一人にお願いして経年劣化をさせた。


 一応400年程も経年劣化させたわけだが、これで何とかごまかせるかな?

 この古文書(?)は結城市内の骨とう品店で購入した仏像の中から出てきたことにしたよ。


 そのために、わざわざ結城市内を探して江戸時代中期頃の木製仏像を買った。

 そのうえで、わざと落として壊したんだ。


 この木製仏像結構な値段だったんだが、背に腹は代えられん。

 一応、結城市内の某古刹(こさつ)にあった仏像という触れ込みなんだが、コンちゃん曰く本物らしい。


 内部が空洞とわかっていたから、そこから出てきた古文書と偽装したわけだ。

 無論その際の証拠写真なんかも日付を変えて一応撮ってある。


 その上で発掘調査の申請を市役所に出したんだが、これが見事に通ったね。

 色々と制約はついたんだが、歩道の掘削調査はできることになった。


 俺一人でもできないことはないんだが、どうしても証人は要るからね。

 土木会社に掘削の依頼をし、警備保障会社に作業中の常駐警備をお願いした。


 勿論俺も立ち会う。

 そうして、俺が四十住沙也加さんから依頼を受けてから二か月余り、発掘申請から二週間後には、地下の洞窟を発見した。


 無論その際に内部の安全を確認してから、作業員らとともに中に入って、埋蔵金(?)を確認したよ。

 ついでに遺体と白骨死体もね。


 だから当然に警察が出張ってきたわけだが、出口のない密室だからな

 警察さんはなんでこんなところに遺体やら白骨があるのかと不思議がっていた。


 多分、いくら考えても答えは出ない。



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