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弐血定(にちじょう)  作者: 金剛一
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1日の終わり

退屈な授業はもう終わった。

「ねぇ今日一緒に帰ろ」

「ごめん、今日部活の集まりあるんだ」

「なぁ、あそこ行こうぜ」

「昨日も言っただろ。他のとこにしよう」


今日の授業の終わりのチャイムと共に各々が一斉に口を開きクラスに活気が戻る。

そんな中私は、静かに帰り支度を始めた。

友達がいないわけではない。

会話をする相手もいないわけでもない。

じゃ普段はしゃべっているかと言われるとそうでもない。


由香里ゆかりどうしたの、今日はやけに急いで準備してるね?」


優里ゆり今日は何の日か忘れたの?」


「何だっけ?誰かの誕生日かなんか」


「今日は私の推しがついに実装される日よ」


「あーあ。あの青髪ツインテールの」


「そう。遂に、遂にキタの。2周年目にしてようやく実装されたの。この日を私はどれほど待ちわびたことか。そして、私の推しはなんと星1で実装!この意味がわかる?出やすいってことよ。課金なんてしなくても簡単かつ大量に手に入るのよ。素晴らしい、素晴らしすぎる。だから早く帰ってお出迎えしなければならないの…失礼、取り乱したわ」


「たまになるよね。でもいいと思うよ、好きなことがあるって。私は、イマイチバチっとハマるものが見つからないんだよね」


「あなたは、器用貧乏だものね。でも、続けてるんでしょ。私と同じゲーム」


「まーね。正直由香里ほど楽しめてはないけど」


「それでも、その生真面目さ私は好きよ」


「もー由香里ったら」


「おーい席につけLR始めるぞ」


「由香里また後でね」


担任の声と共に優里は一言残して自分の席へと戻っていった。

それからは、特に変わったこともなくLRは終わった。

いや、終わるはずだった。


「あ、そうだ。中村後で職員室まで来てくれるか」


私は小さく頷いた。

こうして、他の生徒が帰路や予定外の部活に向かう中、私は荷物を持って職員室へと向かった。

教室を出る時、一瞬クラスを見渡したが優里の姿は既に無っかった。


ーーー


モヤモヤした気持ちで職員室に着くと多くの生徒と教師が廊下と部屋を行き来していた。

教室ほどではないがそれなりに騒がしかった。

私もその騒がしさに混ざるように開いている扉をノックした。


「失礼します。2年4組の中村です。東出ひがしで先生はお見えですか?」


「おー中村ちょっと廊下で待ってろ。今そっちに行くから」


何やら書類を見ながら返事をした先生の言葉に従い一旦扉からは距離をとり廊下の隅で待つことにした。

私が退くとすぐに別の生徒が他の先生を呼びに私のいた位置にきた。

程なくして先生が一枚の紙を持って来た。


「すまんな。ちょっと探すのに時間がかかってしまった」


「大丈夫です」


「そうか。早速だが、先日出してもらった書類なんだがちょっと不備があってだな。明日までに修正して持って来てもらいたいんだ。いいか」


「わかりました」


私はどうしても、早く帰りたかったので、その紙が何の書類でいつものか確認することなく受け取った。


「すまんな、頼んだぞ。それじゃ、気をつけて帰れよ」


「はい、さようなら」


書類をファイルに入れカバンに丁寧に仕まいながら、下駄箱へと向かった。


ーーー


気がつけばいつもより遅い時間に学校を後にしていた。


「次の、電車なら、はぁ、間に合うかな」


「多分。でも、ちょっときついかも」


あの後、下駄箱に着くと優里が待っていた。

そして、走れば次の電車に間に合うかもしれないと結論に至った私たしは学校から駅まで走っていた。


「てか、なんで、下駄箱で待って、たの。てっきり一人で先に、帰ったかと」


「そんなわけ、ないでしょ。また後でって、言ったじゃん」


「有言、実行」


「そゆこと」


息を切らし会話を挟みながら走り続けているとようやく駅が見えてきた。


「後少しだよ」


「そう、だね。でも、正直、キツい」


現在進行形で運動部の優里に比べ帰宅部かつ運動嫌いの私の体力は限界に近かった。

周りの風景がぼやけて認識できないほどだが私は走り続けた。

推しが出るアニメ第13話で主人公が長期療養明け最初レースで『絶対はボクだ』と言った時のように私も足を前と出し続けた。


「勝負だー」


「いきなりどうし、え?」


私が叫んだ瞬間急に駅が近くなった。

しかし、改札口は遠くなった。


(あれ、おかしいな。何で私…飛んでるんだ)


全てがスローモーション再生されるよにゆっくりと流れて見えた。

走る車、歩く学生、もう少しで駅に着きそうな電車その全てがゆっくり動いていた。

ゆっくりと動く世界で私の頭は気がつくと空を見上げていた。それと同時に背中に急に激痛が走った。


(っ!?)


声にならない痛みとはこういうのことを言うのだろう。

そして私の中で痛み以外いにもう一つ感情が溢れてきた。


「あ、キレイ」


それは紅色に染まった現状何よりも近くに感じるモノ。

だが、このスローの世界は私の一言最後に終わりを告げた。

真っ赤な世界は一瞬にして真っ黒な世界へと変わった。


予想の出来ない日常

不定期に訪れる

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