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金賀有杉、有杉君

作者: 葦原とおる

B…ボケ T…ツッコミ


B「金賀有杉(かねがありすぎ)、有杉君! 遂に完成したぞ!」


T「博士、フルネームの方は呼ばないで下さい。有杉だけで結構です」


B「そ、そうか? せっかく良い名前なのにもったいない」


T「博士」


B「わ、わかった。見てくれ、キミが惜しみなく資金援助してくれたおかげで完成したタイムマシンだ!」


T「素晴らしい、遂に完成されたのですね。もう過去には戻ってみましたか?」


B「いや、人間で試すのはこれからだ。私自身が被験体となり最終試験を行う」


T「博士自身がですか。危険なのでは?」


B「ある程度のリスクは承知の上だとも。有杉君、私は研究一筋に生きてきた。妻はそんな私に愛想をつかし、家を出ていった。その後妻の行方は知れず……。私はあの時に戻って妻に謝り、できれば帰ってきてほしいのだ」


T「なぜその時に謝れなかったのです?」


B「いや、私はあの時謝ったのだ。おまえが謝ればよりを戻してやると。だが頭をどつかれただけだった。アレは痛かったなあ……」


T「私の理解がおかしいのかな。それ博士は本当に謝ったんですか?」


B「い、いま思えば謝ってなかったかも」


T「あ~博士。たぶんですけど、その調子で過去に戻られてもまた同じことの繰り返しだと思います」


B「む、タイムループというやつか?」


T「う~ん、微妙に違う気がします。ループはループなんですけど」


B「私はどうすればよいのだろう。妻を愛しているのに、本人を前にすると心にもない言葉が出てしまうのだよ……」


T「こう言ってみてはどうですか。私は未来から来た私だ。おまえとの事は心から反省している。すまなかった。もしやり直せるのなら、未来の私に会いにきてくれないか、と」


B「そ、そんなことを言って信じてもらえるだろうか?」


T「奥さんと真摯に向き合うことです。博士が素直な気持ちを伝えれば、きっと信じてもらえますよ」


B「不思議とキミの言葉は信じる気持ちになれる。これが私の夢のような研究に何百億と資金援助できた金持ちのオーラ、そしてカリスマというやつか。さすが金賀有杉、有杉君」


T「博士~」


B「おほん! ではこれよりマシンの最終テストを行う。君のアドバイス、ありがたく実行させてもらうよ」


T「博士の健闘を祈ります」


B「ありがとう、金賀有杉、有杉君」


T「は~か~せ~」


B「うおっほん! す、すまん。では行ってくる」


T「いってらっしゃい」


《ギュイーーーン! プシュ~ッ》


B「行ってきた。マシンは正常に動いたよ」


T「最終試験は無事に成功ですね、おめでとうございます。しかし行ってくるのが早かったですね」


B「そうか、キミからは一瞬の出来事に見えたんだな。だがしっかりアドバイス通りの言葉を伝えてこれたよ。かなりドキドキしたが、後は結果を待つだけだ」


T「そうですか。良い結果が出るといいですね」


B「では有杉君がマシンを使う番だ。キミにもやり直したい過去があるのだろう?」


T「はい。正確な日付がわかってますから、このメモの通りマシンに入力して下さい」


B「よし、ポチポチと。入力完了だ。ではそちらに立ちたまえ。いいかな、マシンを動かすぞ?」


T「お願いします」


《ギュイーーーン! プシュ~ッ》


B「なるほど、確かにこちらからは一瞬に見えるな。有杉君、目的は果たせたかね?」


T「はい博士……グスッ、感謝します……目的は果たせたました」


B「な、なぜ泣いているのだ有杉君。マシンに不具合でもあったかな?」


T「いえ博士。私は以前、ネコを飼っていたんです。甘えん坊でかわいいやつでした。ですが歳のせいで具合を悪くして、私が会社に行っている間に……。その最期を見てやれなかったのがずっと心残りだったんです」


B「グスッ、ぞッ、ぞうかッ! キミがあれ程の大金を援助してくれたのはそのためだったんだな! 最期は、見てやれたのか?」


T「はい。私のひざの上で、眠るように」


B「くッ、ぞうかッ」


T「これも博士のおかげです。博士も奥さんと仲直りできるといいのですが……」


《ピンポ~ン》


B「おや、誰か客が訪ねてきたようだ。有杉君、少々席を外させてもらうよ」


T「ええ、どうぞ」


B「は~い、どちらかな? あッ!? お、おまえ……来てくれたのかッ!」


T「あれは……博士の奥さんかな。頑張って下さいね、博士」


B「そ、そうか。うんうん、わかっているとも。おまえが謝れば、よりを戻してやろうじゃないか! ま、待て、その手を下ろしなさい! あいたーッ!」


T「博士ってば、懲りてないのか~い! やれやれ、奥様ちょっとお話に失礼しますよ。実はですね、博士は素直じゃないですけどずっと奥様のことを……」





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