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第八話 宰相の願い事 前編


【魔王様が死ぬまであと30日】


「……早いものだ。俺が死ぬまで、もうあとひと月か」


「スケジュールを詰め込み過ぎましたか? 魔王様、お疲れでございますか?」


「うむ、少し疲れたがこの疲れが心地よくもある。皆のおかげで充実した終活の日々となった。楽しい時間とは速く過ぎ去るものだ。時間の流れは相対的、と言ったのはアインシュタインだったか?」


「確か、恋人とイチャイチャしてるときは時間がやたらと速く進む、とか言ってましたな」


「恋人とイチャイチャして光速不変の原理を発見したのか? あの科学者は? リア充なのか?」


「光陰矢の如し、とも言いますな」


「過ぎてみれば早く感じるものかもな」


「いろいろとやれるだけやってみましたので、慌ただしくなってしまいましたか」


「まさか、俺の描いたマンガが一冊の本になり、書店に並ぶことになるとは」


「マンガ『百日後に死ぬ者たち』の単行本の発売を記念し、ついに作者が魔王様であると明かしましたからな。覆面作家の正体発表サイン会に来たものは、皆、驚いておりました」


「うむ、ドッキリ大成功であった。あれほど俺のマンガのファンが来るとは思わず、俺がドッキリさせられもしたが」


「残念ながらマンガのアニメ化とはなりませんでしたが」


「いや、あの内容でアニメにするのはちょっとどうかと思うぞ。それにマニア受けはしたが、大ヒットというものでは無いだろう?」


「いえ、わたくしは諦めておりません。ヤングボコボコ編集部とも共同で、アニメ化企画を進めております」


「いいのか? あのマンガ、いろんなところから怒られそうなんだが」


「ご安心を魔王様。ハイ〇コアガールのように、後からゲーム会社から怒られるようなボケた編集の二の舞はいたしません」


「アレ、続きがちゃんと出てホッとしたなあ」


「アニメ化は魔王様の死後となってしまいますが」


「それは好きにしてくれればいい」


「ですが、アニメ化したときの為に主題歌は『四天王with闇星ロケット』に歌ってもらい、録音しておきましょう。野外ライブも盛り上がりましたし」


「うむ、楽しいライブであった。晴れて良かった。できればもう少し練習時間が欲しかったが」


「何事も完璧を求めると足りないものばかりですな」


「俺はこれまで魔族に演説することはあったが、俺が四天王と野外ライブで歌うことになるとは思わなかった」


「歌って踊れる実力派魔王様と人気は高まりました。魔王様の新たな魅力の初披露、見事に成功しましたな。新曲も売れております」


「歌とダンスの練習中は、コレほんとうにウケるのか?と不安になっていたものだが」


「おや? 舞台上の魔王様は自信に満ちて見えましたが?」


「あれほど観客がいる前で不安な様など見せられるか。舞台に出た以上は客を楽しませなければならんだろう」


「意外に熱い芸人魂をお持ちですな魔王様。そしてあの野外ライブを見たゲーム会社からは『アイドル魔王』のゲーム化企画案が届いております」


「それどうにもキワモノ臭のするタイトルなんだが。俺がゲームって、『聖〇魔II 悪魔の逆襲!』みたいなゲームになるのか?」


「魔王様、懐かしいですが古すぎます。今はファミコンの時代ではありません」


「今どきのゲームはあまり詳しく無い。俺は3Dで激しく動くものはポリゴン酔いしてしまうのだ。『影牢 ~刻命館 〇章~』あたりが限界だろうか」


「魔王様、今ならばせめて『アイ〇ルマスター』くらいのものには、なるのではないかと」


「ちょっと想像が追い付かないのだが、俺がシンデ〇ラガールズ? いや、ボーイズ?」


「企画案では『アイドル魔王☆デンジャラスボゥイ』といったタイトルが出ております」


「なんだかアイドルと言いながら宇宙で戦いそうだな。ボルテッ〇とか射つのか」


「アイ〇ルマスターも巨大ロボで戦ったりしてましたので、問題無いでしょう」


「問題あるだろう? アレ、原作ファンから黒歴史とか言われてるぞ。おもしろかったが」


「このゲーム化と魔王様原作マンガのアニメ化が成功すれば、魔王様の人気は更に高まること間違いありません」


「そちらの方は俺が手を出さなくとも良いのか?」


「はい、魔王様はこれから疲れを癒し、勇者とのラストバトルに向けてコンディションを調整していただきます。これまで忙しい日々でしたから」


「そうか。少し骨休めとするか。駆け抜ける嵐のような日々だったからな。ところで、勇者は予定通りに動くのか? 明日にも魔王城に来ることは無いのか?」


「そこはわたくしが一計を案じ噂をバラ蒔きました。魔王様は満月の夜の時にこそ力は高まり本領を発揮すると」


「俺は狼男では無いのだが、なぜそんな嘘をつく?」


「そして満月の夜に魔王様を倒すとシークレットアイテムがドロップする、との噂も合わせて流しました。勇者がアイテムコンプリートを狙うならば、勇者が来るのは次の満月の日となり、それがちょうど百日目となります」


「なるほど。勇者が欲望に忠実であれば全てスケジュール通りになるということか」


「勇者の飛行船は四天王の翼王配下に見張らせております。動向は掴んでおりますので、動きがあればすぐに報告が入ります」


「奴は今、どこで何をしている?」


「隠しダンジョン、死者の宮殿に挑戦しております。手こずっているようであります」


「あれか。地下百階もあるからなあ」


「なので勇者が来るのが早まることはありますまい。魔王様の予定はあとひとつだけ」


「うむ、明日の演説会か。俺の最後の演説か」


「はい。魔王様の最後の演説が終われば、この城の非戦闘要員は全員、魔界へと疎開します」


「うむ、予定通りにな。城下町は?」


「既に住民の避難は完了しております」


「抜かり無し、か。流石は宰相、俺の信頼する魔族の賢者よ」


「恐れ入ります」


「宰相、改めて感謝する。お前の尽力のおかげだ。これで思い残すことも無い」


「は、もったいなきお言葉。魔王様のお役に立てたことがこのわたくしの喜びであります」


「宰相にはどのように報いたなら良いのか。宰相は何か望むものはないか?」


「は?」


「俺の為に働いてくれた者には勲章や報酬を与えてきたが、身近で俺を支えてくれた宰相と四天王には死ぬ前に何か礼をせねば、と思っていたのだ。まあ、四天王は仕事はキッチリするが、言いたいことは言い、プライベートでは俺を引っ張り回してくれたりするのだが」


「翼王は『カラオケいこー』と誘いますし、冥王は新作ゲーム買う度に魔王様を呼びますし、龍王は夜中の1時に『ラーメン食いに行こーぜ』とか言い出しますし、獣王は早朝から『新装開店だ、スロット打ちに行こうぜー』と誘ってきますからな」


「獣王に連れられてスロットに行くうちに、俺も大花火のビタ押しリプレイ外しができるようになった」


「まったく獣王は……、魔王様、ギャンブルはほどほどになさいませ」


「うむ。そんな感じで四天王は俺に遠慮無くものを言うが、宰相が欲しいものとはなんだ? 俺が生きているうちに礼をしておきたいのだ」


「いえ、私が魔王様に望む事など、」


「宰相、遠慮するな。俺が死んでしまえばこうして面と向かって話すことも無くなるのだ」


「いえ、私は魔王様を復活させます。たとえ何があろうとも」


「それは期待している。が、成功する可能性は低いのだろう? 人気があれば続編で復活できるかもしれないということだが、この話のブクマの数もそれほどでは無いし」


「魔王様、この世には完結ブーストなるものがございます。まだまだいけるであります」


「いけるか? 完結ブーストとやらは都市伝説ではないのか? まあいい、俺の復活が上手くいったならその礼はそのときだ。今はこれまでの宰相の働きに俺が報いたいのだ」


「いきなり言われましても」


「宰相は自分個人のことで俺に要求することは無かったからな」


「それは四天王が傍若無人すぎるのです」


「なので一度くらいは宰相が俺にして欲しいことでも言ってみるがいい」


「して欲しいこと、でありますか?」


「うむ、俺にできそうなことなら何でも」


「……魔王様に言いたいこと、がひとつあります、が……」


「そうか、それはなんだ?」


「ですがこれは、口にせず秘めておこうと」


「宰相、今、言わねば俺はあと30日で死んでしまうのだ。生きているうちで無ければ俺が聞くこともできまい」


「……そう、ですか。それならば、」


「む? 深刻な顔で深呼吸? そこまで思い詰めるようなことを今まで溜め込んでいたのか? そんなに覚悟がいるようなことなのか?」


「はい、これは気を入れねば口にできません。もうしばらくお待ち下さい。すー、はー、すー、はー」


「むう。俺はもしかして、宰相にストレスを溜め込ませるような嫌な上司だったのか? 何を言われるのかちょっと怖くなってきた」


「魔王様」


「う、うむ。これは茶化さずにしっかりと聞かねばならん感じだ。なんだ? 宰相?」


「魔王様のことが好きです。愛しております」


「そうか、」


「はい……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「?ふぁああっ!?」


【後編に続く】


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[一言] えっ、ソッチにも踏み込むの!? ( ̄Д ̄;ノ)ノ
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