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第四話 魔王様の趣味


 黒々と聳える魔王城。その城の主は魔王。魔族一の伊達男と呼ばれた魔王は私室で紙の束に目を遠し、満足そうにうむうむ、と頷く。そしてニヤリと笑う。そこに魔王の片腕、魔族の宰相が現れる。


「魔王様、ニマニマしてますがどうしました?」


「うむ、久しぶりにマンガを描いてみたのだ」


「マンガ、でございますか?」


「こう見えて昔、描いていたことがあってな」


「知っております。今でも魔王城の広報などで魔王様のイラストを使わせてもらっておりますから。魔王様の描かれたマスコットの、まおくんが可愛いと評判です」


「あれは、まおー、まおー、と鳴くだけのピンクの丸い生き物なのだが」


「もとネタがエロゲの〇悪司と知ってる者は少ないようですな」


「それを言い出したらもとネタは星〇カ〇ビィではないか?」


「あれもまた魔王みたいなものでしょうか? それはともかく魔王様のマンガとは?」


「うむ、コレだ」


「コレはッ!!」



【百日後に死ぬDI〇】



「魔王様! タイトルだけで面白そうです! わたくし気になります!」


「千反〇える、か?」


「もう、興味ビンビン物語でございます!」


「80年代ドラマか?」


「DI〇様が時を止められたついでに息の根も止められたのは知ってますが、これはそこに至るまでのDI〇様主役のストーリーですかな?」


「うむ、これまでと異なる視点で悪役の魅力を考察する。宰相にもらった資料を見ながら考えていると、ふとネタが湧いてきてな」


「魔王様、見てもよろしいですか?」


「うむ、読んでみろ宰相」


「では読ませていただきます」


……

……


(宰相ならばこのネタはわかるだろう。むう、しかし自分の描いたものをこうして目の前で読まれるのは、いささか恥ずかしいものがあるな)


「……、」


(まてよ? 上司が部下に自分の描いたマンガを読ませるというのはどうなんだ? 部下が気を使ってつまらないものを面白いとお世辞を言い出したりなどしないか? いやいや、俺と宰相の間でそれは無いだろう。宰相は相手が俺でも言いたいことは言う筈だ。そんな魔族だからこそ宰相を任せているのだから)


「……、」


(しかし、このシーンとした間は落ち着かんな。読んでいる最中に自分の描いたネタを解説するなど無粋の極みでしかないし。宰相が読み終えるまで俺はどうすればいいのか)


「……、」


(意外とこういう間というのも大事なのかもしれん。思い返せば芸人がグルメレポーターをするとき、食べ物を口に入れてすぐ、美味い! と叫んだりする。今のは味わってる時間あったのか? と思うほど速くに。まあ芸人というものは空白の間、沈黙の時間があればトークで埋めようとするのが職業病かもしれんが。やはり、あぁいうのは味わうという動作があり、表情で間を埋めて、溜めに溜めてからセリフを言うのが効果的なのではないだろうか? 味な王様のように)


「……ぷふっ」


(お? 宰相が吹いたぞ。どこだ? どのネタだ?)


「く、くく、万年ビキニパンツがユニフォーム……」


(ヴァニ〇ア〇スのことか。うむ、いくらエジプトが暑いとはいえ、あのビキニパンツは太ももがセクシー過ぎるだろう。ここが宰相の笑いのツボか?)


「……♪俺だけビキニがユニフォーム、くくく、アスト〇球団ですか? くくくくく」



◇◇◇◇◇



「魔王様、このマンガ、面白いですぞ」


「うむ、原作を知っているなら楽しめるだろう。熱心なファンにはちょっと怒られそうだが」


「奇妙な冒険、イチゴ味という感じですな」


「あぁいうのを商業でするのも、どうなのだろうな?」


「あまり煩く言うよりは、銀〇や、ついでにと〇ち〇か〇のようなものがたまに出てきて、好き勝手するのを見るのも楽しゅうございます」


「最近ではブラ〇クジャ〇クや八神〇が異世界転移したりもするようだし」


「すこし遅いような気がしますな。大手出版社というのは、ブームが過ぎてから流行りの後追いをしたりするものですが」


「独自の路線を突き進んでいた頃の、雑誌のアフタヌ〇ンであった大合作は衝撃的だったなあ」


「昔はおおらかでしたな。やりたい放題してたものです。パタリ〇に風の谷の〇ウシカが出てきたりとか」


「宰相、あれは一応、風の谷のハナシカだ。一席始めようと、毎度バカバカしい、と言い出したところで殴られて退場していたが」


「しかし、エ〇ヤ婆がDI〇様のファッションセンスに突っ込みを入れるとは」


「あれな、ハートマークがあちこちにある不思議な服で、あの服はいったい誰が作ったのだろうな?」


「DI〇様の手縫いかもしれません」


「自前でデザイン、自前でミシンがけしたのか、あの服」


「DI〇様は不死身の吸血鬼、故に長生きしてるわけですが、それでエ〇ヤ婆がDI〇様に、『年寄りが若者にウケようとイキったファッションをしている』などと暴言を吐くとは」


「そのあと慌ててフォローしているだろう?」


「えぇ、ですがそこにシビれる、憧れる、と、取り合えず言っとけばいい、みたいな空気になってきているのがどうかと思いますぞ」


「繰り返すうちにシチュエーションコメディのように変わってしまう、というのはありがちだろう。優秀なのに魔法科的には劣等生のように」


「あぁ、アレですな。あー、はいはい、さすおに、さすおにー、というヤツですな」


「これで言うと餓えた狼の弾痕の『嘲笑った』に勝てるものは無いが」


「あれは恐ろしい本ですからな。栞が無ければどこまで読んだかわからなくなる。繰り返すパターンで脳が混乱する。読んでいるうちにトリップしてだんだんと気持ちよくなってくる、という本の形をした麻薬ですから」


「まさしく奇書と呼ぶに相応しい。あれがループ物の真髄かもしれん」


「しかし、DI〇様も影でこのように苦労していたとは」


「あれほど個性的でアクの強い配下ばかりの組織の長なのだから、まとめるには表には見せない苦労も多かったことだろう」


「資金捻出のためにコンビニとコラボ商品を出すのは意外でした」


「いち組織の運営とは何かと物入りになるものだ」


「それで出てきたのが『俺は人間をやめるぞパン』ですか」


「メロンパンの表面の凸凹具合は〇仮面に似ていないか? それで〇仮面の形に焼き上げたメロンパンがコンビニに並べば、人気はあるのではないだろうか」


「子供が食べ物で遊びそうですな」


「俺は人間をやめるぞー、と楽しく遊んだあとは美味しく食べられるぞ」


「しかし、わたくしが用意した資料がもとで魔王様がマンガを描くとは思いませんでした。このマンガ、わたくし1人だけで楽しむのはもったいのうございます。魔王様、他の者に見せてもよろしいでしょうか?」


「うむ、かまわんぞ」


「は、では失礼します」


「む? 宰相? 何をそんなに急ぐことが? あぁ、もう行ってしまった。いきなり駆け出して行くなど、魚をくわえたドラ猫でもいたか?」


「みなさーん! 魔王様の描いたマンガがメッチャおもしろいですぞー!」


「さ、宰相!? 見せる前にそういうハードルの上げかたはどうかと思うぞ! ちょっと待て、宰相!? 宰相ーッ!!」



【魔王様が死ぬまであと95日】


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― 新着の感想 ―
[一言] マンガに3日費やしちゃってる……。 悪役の研究、どうなった? ( ̄д ̄;)
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