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エスカリエ  作者: 愛凜
2/2

2、飛行船シルバーウィンド号

二話同時更新です。先に一話をお読み下さい。



 麻亜奈が目を覚ますと真っ先に茶色の木の板が目に入ってきた。



「ここは一体!?」



がばっと体を起こすとそこは倉庫のような場所だった。木の箱や麻の袋が狭い部屋にところせましと置かれている。麻亜奈はその沢山の荷物の中にわずかにあった空間に倒れていた。



(え〜と、確か博物館で変な空間触ったら突然吸い込まれて、それで、それで…)



必死で今自分がおかれている状況を理解しようとするが頭がパニックしていて全く理解不能。



数分後、やっと気持ちが落ち着いてきた。だけど、やっぱりどうして自分がこんな所にいるのか分からない。



でも、その時さっきはパニクっていて気づかなかったことに気付いた。



「な、何かこの場所動いてない…」



心なしかエンジンのような機械音もかすかに聞こえてくる。



急いで側にあった窓に飛びつき外を見て…



「え〜、一面雲、雲、雲!ってことはここ空の上ぇ!?」



──────愕然とした。


(空の上ってことはここは飛行機の中?え、で、でも飛行機ってこんなに古くさかったっけ!?)



再びバニックに陥ろうとした時、誰かがこっちに来る足音が聞こえた。



(誰かが来る…)



麻亜奈は身体を固くした。そして、ドアを見つめる。


数秒後、大きな音をたててドアは開かれ、そこにくたびれたシャツとズボンを身につけた、図体のデカイ男が2人現れた。



「それでな、タグラスの奴がな、俺の…って貴様は誰だ!?」



部屋に入ってきた男が麻亜奈を見つけて叫ぶ。麻亜奈は固まったまま、身動きができないでいた。



「おい!お前は乗客の誰かか?」



「それとも、どこかのスパイか!?」



大男が英語で一気に麻亜奈をまくしたてる。奇跡的に帰国子女であった麻亜奈は男達が言っている言葉の意味は分かった。だが、話が唐突すぎて訳が分からなかった。



「ええっと…そのぉ…私は…」



ともかく、何か言わないと!そう思い、ぼそぼそと出した声も途中で大男にぶったぎられる。



「おい、やっぱりこいつ怪しいぞ!やっぱりどこかのスパイだ!!」



「ああ!引っ捕らえて船長の所に連れていこうぜ。そうすりゃ、褒美が貰えるぞ!」



「おお!臨時ボーナスゲットだ!」



(は、はい〜!?)



あれよあれよという間に、ロープでぐるぐる巻きにされた麻亜奈はそのまま大男達に担がれどこかに連れていかれた。



「ちょ、ちょっと〜!!離せ〜!」



抵抗虚しく、大男は麻亜奈を運んで行く。



だけどその時、麻亜奈は気づいた。



(──この造り、この壁、この梯子。ここは飛行機の中なんかじゃない。飛行船の中だ!!)











◇◆◇◆◇◆◇



 「船長〜!怪しい奴を見つけました。」



「どこかのスパイかも知れません!」



【船長室】と書かれた部屋についた男は大声をあげながら部屋に飛び込み、そのまま床に麻亜奈を放り投げた。



「いたたたた…」



痛みに顔をしかめると、部屋の隅の書き物机で何かを書いていた老人が側にやって来て麻亜奈の顔を覗きこんだ。どうやらこの老人がこの飛行船の船長のようだ。



「ふむ…。」



しばらく船長は麻亜奈の顔を覗きこんでいたが、ふとにっこり笑った。そして、さっきの大男に向き直る。


「このような若い娘がスパイなわけなかろ。だが、どうやら乗客の1人でもなさそうじゃ。これは、詳しく話を聞く必要がありそうだのう。ともかく、すぐに縄をほどいてやらんか。」



(助かった…。)



どうやら殺されることはなさそうだ。



 やがて、大男は麻亜奈のロープをほどくと部屋を出ていき、部屋には麻亜奈と船長だけになった。



「おかけなさい。」



老人が書き物机の前の椅子を手で示す。麻亜奈は言われた通りに椅子に座った。老人も反対側の椅子に座り麻亜奈と向き直る。



「さて、まず初めに自己紹介といこう。私はマーク・エデン。飛行船シルバーウィンド号の船長じゃ。」



(飛行船シルバーウィンド号!!)



麻亜奈はここが飛行船の中だということに気づいた時以上に驚いた。飛行船シルバーウィンド号といえば、博物館にあった飛行船の模型の名前だ。確か1900年代に活躍した。その本物に今自分が乗っているというのか。



「あの、つかぬことをお聞きしますが今日は西暦何年何月何日ですか?」



「今日は1990年6月30日だが?」



(うわ、やっぱり…)



麻亜奈はため息をついた。


「ふむ。やはり、何かあるようだな。良かったら私にそれを話してみないか。何か力になれるかもしれぬ。」



(今はそうするしかないな…)



麻亜奈はもう一度ため息をついて話始めた。



「私は山越麻亜奈といいます。」



「ヤマコシ マアナ…。この名前からして君は日本人なのかい?」



「はい。そうです。」



「そうか。だが、どうして君のような日本人がこの飛行船の中にいたんだい?」


「それが…私にも分からないのです。それに、船長さんは信じられないと思いますが私は今から100年後の世界からその…タイムスリップしてきてしまったようなのです。」



麻亜は一息でそう言ってから黙って船長の顔色をうかがった。



(あーあ、こんなこといっても信じてもらえないよな…私だって信じられないし。船長さんは驚くかな。それとも、怒るかな…)



内心びくびくしながら船長の様子を見ていたが、なぜか船長は驚きも怒りもしなかった。



「あの、驚かないんですか?」



「いや…。もう少しその事を詳しく話してくれんか。」


「は、はい。」



船長が驚かないのを不思議に思いつつ、麻亜奈は今までのことを洗いざらい話した。夜中日本の博物館に展示されていたシルバーウィンド号の模型の側の空間が揺れていたこと。そこに触ったら突然どこかにぶっ飛ばされたこと。目が覚めたらこの飛行船にいたこと。

一通り話終わると船長は、しばらく船長は何かを考えこみ、それから再び麻亜奈を見た。



「今君から聞いた話、私は全て信じる。」



「本当ですか!」



「それに、君が元の世界に帰るための手がかりを私は持っている。」



「それ教えて下さい!!」



麻亜奈は体を少し乗りだしながら船長に詰め寄った。だが、船長は悲しそうに首を振った。



「いや、あくまでも手がかりは手がかり。直接的な帰り方はわからない。」



「そんな…」



嬉しい気持ちも一変、麻亜奈はまた落ち込んだ。



「だがな、マアナ。もしかしたらこのままここにいればいつかは帰り方が分かるかもしれない。実は私達は君のタイムスリップの原因かもしれないあるグループを調べているんだ。本来なら飛行船にいた不審者は警察に引き渡さないといけない。だが、もし君にその気があれば新しい従業員としてこの飛行船においてやってもいい。どうだ?私達と一緒にそのグループを調べながら君の世界への帰り方見つけようじゃないか。」



迷っている暇はない。警察なんてイヤだし、警察の人が私のことを信じてくれるわけがない。



「はい!!よろしくお願いします!」



返信はほぼ即答だった。



「いい返事だ。」



船長はそう言って笑った。










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